2021年03月17日

煮しめ


「煮しめ」は、

煮染、

と当てる。煮物料理のひとつで、

肉や野菜などを醤油で煮染めた料理、

である(広辞苑)が、古くは、

にじめ、

ともいい、

煮染肴の略、

とある(たべもの語源辞典)。

煮汁が残らないように時間をかけてじっくり煮る調理法を「煮しめる」というが、これが転じてそのように料理されるものを「煮しめ」と称する、

とありhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%85%AE%E3%81%97%E3%82%81

煮締め、
お煮しめ、

などとも言う(仝上)。転じて、

惣菜料理の煮物類、

を指す用語となり(たべもの語源辞典)、

煮染海老、
煮染田楽、
煮染麩、

といった使い方をする(仝上)。室町時代は、

煮染は精進料理、

であったが、近世には、魚貝の煮染もあり、魚菜の煮染を売る店を、

煮染屋、

とよび、多くは屋台であった(仝上)。落語の『七度狐』や『二人旅』に登場するのは、

煮売屋、

で、

煮魚・煮豆・煮染など、すぐに食べられる形に調理した惣菜を販売する商売のこと、

をいい、

菜屋(さいや)、

とも言ったhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%85%AE%E5%A3%B2%E5%B1%8B

重箱に詰めたお煮しめ.jpg

(重箱に詰めたお煮しめ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%85%AE%E3%81%97%E3%82%81より)

正月の重詰の煮染のことを、

おせち、

と呼んだが、今は正月料理を指して「おせち」という。しかし、

「節(せち)」の食べ物は、その季節の野菜をいうので、野菜を煮染めたもの、

が「おせち」であった(たべもの語源辞典)。室町時代に「醤油」http://ppnetwork.seesaa.net/article/471986028.htmlができ、醤油で煮染めたものを、

煮染、

と呼ぶようになり、砂糖やみりん、しょうゆなどで甘辛く煮たものを、

うま煮、

たっぷり汁を含ませたのが、

ふくめ煮、

煮あがりに照りのつかないのが、

煮しめ、

と呼ぶ(たべもの語源辞典)らしいが、

うま煮とふくめ煮の中間にある煮方、

が「煮染」らしい(仝上)。この「にしめ」は、

「煮しめ」のシメは染まることをいう。色がつくことをソメルという。ものを煮ると醤油の色がいたから、ニソメ(煮染)といい、ニソメがニシメになった、

とある(仝上)。

ニソメ(煮染)→ニジメ→ニシメ(煮染)、

といった転訛である。染物にも、

煮染め、

という技法があるが、こちらは、

にぞめ、

と読むことが多いhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%85%AE%E3%81%97%E3%82%81、とあるが、発想は同じのようだ。

ただ、ネットで料理のものを見ていると、

おせち料理の中でも「煮しめ(筑前煮)」は、各家庭の味が色濃く出やすい料理です、

などhttps://gurusuguri.com/special/season/osechi/spcu-osechi_nishime/と、「煮しめ」と「筑前煮」が同義のような使われ方をしている。しかし、筑前煮は、

鶏肉と野菜、こんにゃくなどを油で炒め、甘辛く味付けした煮物で、福岡県の北部・西部の筑前地方の郷土料理です。具材を「油で炒めてから煮る」という作り方が、筑前地方独特のものであったことが、名前の由来だとされています、

とあるhttps://delishkitchen.tv/articles/407ように、

植物油で材料を炒めてから煮る、

のが特色のはずである。「筑前煮」は、

がめ煮、

とも呼ばれ、これは、秀吉が、文禄元年(1592)に、

博多の入江や沢にスッポンが多くいたので、これと野菜を一緒に煮て食べた、

らしいが、スッポンは川龜、またはドロガメというので、

ガメ煮、

といった(たべもの語源辞典)、とある。後には、スッポンの代わりに鶏肉を使い、

人参や牛蒡ヤコンニャクや筍などを甘煮(うま煮)にするようになった、

とある(仝上)。

筑前煮.jpg


あくまで、「煮染」は、

煮汁を残さずに具材に染み込ませていく調理法、

であり、「筑前煮」は、

材料を油で炒めてから煮る、

のであり、「うま煮」は、

旨煮、
もしくは、
甘煮、

から来ており、

具材を煮ることによって引き出される旨味や、砂糖やみりん、しょうゆなどで甘辛く煮たときの甘さを表現したもの、

とあるhttps://delishkitchen.tv/articles/407。「ふくめ(含め)煮」は.

多めの煮汁で、材料に味をしみ込ませるように時間をかけて煮る調理法、

であるhttps://cookpad.com/cooking_basics/6191

なお、「がめ煮」については、

筑前煮同様、鶏肉と野菜などを炒めてから甘辛く煮た福岡県の郷土料理、

ではあるが、

「寄せ集めの」という意味を持つ方言「がめくり込む」から来ているという説、

もあり、一般には、がめ煮は、

骨付きの鶏肉、

使うhttps://delishkitchen.tv/articles/407、ともある。

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:33| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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