2021年04月13日

つみいれ


つみいれ

「つみいれ」は、

摘入れ、
抓入れ、

とあてる(大言海・広辞苑)。約して、

つみれ、

とも言うが、「つみれ」は、

摘入、
抓入、

と当てる(広辞苑)。

魚の擂り身に卵・小麦粉・塩などをすり合わせ、少しずつすくい取り、ゆでたもの、

である(仝上)。鍋の具や汁の実とする。

つみれ.png


少しずつ摘み取りて、汁に入れて煮たるもの、

とある(大言海)、「摘み入れ」から来たものかと思われるが、

つみいれかまぼこの略、

とあり、『江戸料理集』(1674)は、

すり身のつまみ取り方によって、つみいれを7種類にも分けている、

とあるhttps://www.excite.co.jp/dictionary/ency/content/%E3%81%A4%E3%81%BF%E3%81%84%E3%82%8C)。

うどんの抓入れ、

ともあるので、

捏ねたる小麦粉、

を、少しずつ摘み取りて入れたものもあったようである(大言海)。ただ、江戸語大辞典には、

魚肉を擂り潰し、少しずつつまみとって汁に入れて煮たもの、汁は味噌汁が通例、

と、魚肉になっている。高級品は、

スズキ、
キス、

を原料とし、一般には、

サバ、
アジ、
イワシ、

を用いる(たべもの語源辞典)、とある。始めたのは、文化七年(1810)の『飛鳥川』(八十九翁著)に、

筋違外(すじかいそと)の大丸という料理屋、

とある(仝上)。幕末の『守貞謾稿』によると、

「つみいれ」は京阪にはなかった、

らしく、昔は、

「うけいれ」といい、鯛肉すって小梅実の大きさにつくり、冬は味噌汁にこれを入れ、みぞれの吸物といった、

とある(仝上)。江戸では、「はんぺん」http://ppnetwork.seesaa.net/article/479729382.htmlと同じ品の魚肉で、四季ともに味噌汁に用い、粗製の膳に用いた、とある(仝上)。「うけいれ」は、

うけ煎(うけいり)、

ともいい、室町末期成立の『庖丁聞書』に、

タイのすり身を小梅ほどにまるめてゆでるもので、これを入れたみそ汁を冬は〈みぞれの吸物〉といった、

とある(世界大百科事典)。

「つみいれ」と似たものに、「つくね」があり、魚のすり身で作った物を、

つみれ、

鶏や豚などのひき肉で作った物を、

つくね、

と分けることもあるが、元々は調理法が違い、「つくね」は、

手で捏ねて形を整えた状態のもの、

「つみれ」は、

手やスプーンなどでつまみとった状態もの、

をいう(由来・語源辞典)とある。

「つみいれ」の「つむ」は、「摘む」http://ppnetwork.seesaa.net/article/465356690.htmlで触れたように、

集む、
詰む、
摘む、
抓む、
積む、
切む、
齧む、

と当て分けているが、

摘む、

とあてる「つむ」は、

抓む、

とも当てる。

指先または詰め先で挟み取る、
つまみ切る、

意であるが、転じて、

ハサミなどで切り取る、刈り取る、

意でも使うし、

爪先や箸で取る、

意にも使う。更にそれに準えて、

摘要、

の意にも広げる。

「摘」(漢音テキ、タク、呉音チャク)の字は、

「会意兼形声。帝は、三本の線を締めてまとめたさま。締(しめる)の原字。啻は、それに口を加えた字。摘はもと『手+音符啻』で、何本もの指先をひとつにまとめ、ぐいと引き締めてちぎること」

とあり、「指先をまとめてぐっとちぎる、つまむ」意である。

「抓」(漢音ソウ、呉音ショウ)の字は、

「会意兼形声。爪(ソウ)は、指先でつかむさま。抓は『手+音符爪』で、爪の動詞としての意味をあらわす」

で、「つまむ、つかむ」意である。

「つむ」は、

つま(爪)を活用させた語、

である(広辞苑)。

指の先で物を上へ引っ張り上げる意。転じて、植物などを指の先で地面から採取する意、

ともある(岩波古語辞典)。

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:51| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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