2021年04月14日

つくね


「つくね」は、「つみいれ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/480975139.html?1618253464で触れたように、

魚のすり身で作った物を、

つみれ、

鶏や豚などのひき肉で作った物を、

つくね、

と分けることもあるが、元々は調理法が違い、「つくね」は、

手で捏ねて形を整えた状態のもの、

「つみれ」は、

手やスプーンなどでつまみとった状態もの、

をいう(由来・語源辞典)。

つくね.jpg


「つくね」は、

捏ね、

とも当て、

つくぬ(捏ぬ)、

からきている。

手でこねて丸める、

意で、

乱雑に積重ねる、

意もある(岩波古語辞典)が、

たばねる、

意もある(江戸語大辞典)。この口語体が、

つくねる(捏ねる)、

である。「つくねる」の語源は、はっきりしないが、

つか(束)ぬの訛りか、

とする説がある(大言海)。

上方語でツカネル(束ねる)をツクネル、

という(日本語の語源)ともあるので、意味から見ても、

ツカネル(つかぬ)→つくねる(つくぬ)、

と転訛したことになる。「つかねる」は、文語で、

つかぬ、

だが、

ツカ(束・柄)と同根、

とあり、

物を一つにまとめてくくる。ひとつにまとめたばねる、

意である。名義抄には、

束、ツカヌ、

とある。

握(つか)を活用せさする語(大言海)、
つかむ(掴)と同根(小学館古語大辞典)、

と、「つかむ」とつながり、「つかむ」は、

束・柄と同根(岩波古語辞典)、

と「つかぬ」に戻る。「つくぬ」の語源が、

束(つか)ねる、

からきていることを示している。「つかねる」は、

たばねる、

意の他に、

手をつかねる、

と、

手(腕)をこまぬ(ね)く、

と、傍観の意でも使うのが面白いが、「こまぬく」は、

拱く、

と当て、説文に、

拱、斂(おさむる)手也、

とあり、

両手を腹の上にて組み合す(敬礼なり)、

とある(大言海)、中国風の礼からきている。

「つくねる」は、また、

でっちる、

ともいう(大言海)。「捏ち上げる」http://ppnetwork.seesaa.net/article/480825365.html?1617476126で触れたように、「でっちる」は、

捏、

の字を当て、

こねる(こぬ)、

とも訓ませる。

粉や土などに水分を加えて練り混ぜる、

意で、名語記には、

粉を水に和するをこぬと言へり、

とある(岩波古語辞典)。これをメタファに、今日、

理窟をこねる、
ただをこねる、

というように、

筋の通らない理屈などを繰り返ししつこく言う、
とか、
無理なことをあれこれ言って困らせる、
とか、
あれこれと考えてみる、

等々(デジタル大辞泉)の意でも使う。これは、

つくねる、

とは別由来で、

コ(接頭語、小手で)+ネル(練る)(日本語源広辞典)、
粉練るの、口語調に成れる語なるべし、粉成す、粉熟(こな)れる、同趣の語なり(大言海)、

等々、その行為からきているようである。

「捏」(漢音デツ、呉音ネツ・ネチ)は、

会意兼形声。旁(つくり)は「土+音符日」からなる形声文字で、ねばる土のこと。捏はそれを音符とし、手を添えた字で、粘土をこねること、

とあり(漢字源)、「こねる」意で、泥など、柔らかい物を手でこねる意から、「捏造」と使う(漢字源)。その意味では、

こねる、
つくねる、
でっちる、

に当てたのには意味がある。

「捏」 漢字.gif


参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:つくね
posted by Toshi at 04:17| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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