「つくね」は、「つみいれ」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/480975139.html?1618253464)で触れたように、
魚のすり身で作った物を、
つみれ、
鶏や豚などのひき肉で作った物を、
つくね、
と分けることもあるが、元々は調理法が違い、「つくね」は、
手で捏ねて形を整えた状態のもの、
「つみれ」は、
手やスプーンなどでつまみとった状態もの、
をいう(由来・語源辞典)。
「つくね」は、
捏ね、
とも当て、
つくぬ(捏ぬ)、
からきている。
手でこねて丸める、
意で、
乱雑に積重ねる、
意もある(岩波古語辞典)が、
たばねる、
意もある(江戸語大辞典)。この口語体が、
つくねる(捏ねる)、
である。「つくねる」の語源は、はっきりしないが、
つか(束)ぬの訛りか、
とする説がある(大言海)。
上方語でツカネル(束ねる)をツクネル、
という(日本語の語源)ともあるので、意味から見ても、
ツカネル(つかぬ)→つくねる(つくぬ)、
と転訛したことになる。「つかねる」は、文語で、
つかぬ、
だが、
ツカ(束・柄)と同根、
とあり、
物を一つにまとめてくくる。ひとつにまとめたばねる、
意である。名義抄には、
束、ツカヌ、
とある。
握(つか)を活用せさする語(大言海)、
つかむ(掴)と同根(小学館古語大辞典)、
と、「つかむ」とつながり、「つかむ」は、
束・柄と同根(岩波古語辞典)、
と「つかぬ」に戻る。「つくぬ」の語源が、
束(つか)ねる、
からきていることを示している。「つかねる」は、
たばねる、
意の他に、
手をつかねる、
と、
手(腕)をこまぬ(ね)く、
と、傍観の意でも使うのが面白いが、「こまぬく」は、
拱く、
と当て、説文に、
拱、斂(おさむる)手也、
とあり、
両手を腹の上にて組み合す(敬礼なり)、
とある(大言海)、中国風の礼からきている。
「つくねる」は、また、
でっちる、
ともいう(大言海)。「捏ち上げる」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/480825365.html?1617476126)で触れたように、「でっちる」は、
捏、
の字を当て、
こねる(こぬ)、
とも訓ませる。
粉や土などに水分を加えて練り混ぜる、
意で、名語記には、
粉を水に和するをこぬと言へり、
とある(岩波古語辞典)。これをメタファに、今日、
理窟をこねる、
ただをこねる、
というように、
筋の通らない理屈などを繰り返ししつこく言う、
とか、
無理なことをあれこれ言って困らせる、
とか、
あれこれと考えてみる、
等々(デジタル大辞泉)の意でも使う。これは、
つくねる、
とは別由来で、
コ(接頭語、小手で)+ネル(練る)(日本語源広辞典)、
粉練るの、口語調に成れる語なるべし、粉成す、粉熟(こな)れる、同趣の語なり(大言海)、
等々、その行為からきているようである。
「捏」(漢音デツ、呉音ネツ・ネチ)は、
会意兼形声。旁(つくり)は「土+音符日」からなる形声文字で、ねばる土のこと。捏はそれを音符とし、手を添えた字で、粘土をこねること、
とあり(漢字源)、「こねる」意で、泥など、柔らかい物を手でこねる意から、「捏造」と使う(漢字源)。その意味では、
こねる、
つくねる、
でっちる、
に当てたのには意味がある。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
ラベル:つくね