2021年05月09日

ひる


「ひる」は、

昼、

と当てる。

「朝」http://ppnetwork.seesaa.net/article/481387969.html?1620462788や、「夜」http://ppnetwork.seesaa.net/article/442052834.htmlでも触れたが、上代には昼を中心にした言い方と、夜を中心とした時間の言い方とがあり、

昼を中心にした時間の区分、アサ→ヒル→ユフ、
夜を中心にした時間の区分、ユフベ→ヨヒ→ヨナカ→アカツキ→アシタ、

と、呼び方が分けられている(岩波古語辞典)。「ひる」は、

アサ→ヒル→ユフ、

と、昼を中心にした言い方で言う、

「アサ」と「ユウ」の間、

の、

朝夕をのぞいた明るい時間、

をいう(日本語源広辞典)ことになる。つまり、「アサ」の対は、

宵(よひ)・夕(ゆふ)、

であり、「ひる」の対は、

よる(古形は「よ」)、

である(岩波古語辞典)。

「昼」 漢字.gif


日本語では、時間帯について昼という場合、ひとつは、

夜と対立する意味での昼で、太陽が見える時間帯すべてを指す、

場合と、いまひとつは、

(太陽が見える時間帯すべての意の)昼から朝と夕方を区別し、残りの時間を指す場合である。この場合、太陽が見えて以後にある程度以上高く登り、その日の南中高度に近くなった時間を指す。単に“お昼”といえば、正午前後の時間だけを指す場合もあり、昼はその前後、ある程度の幅の時間を指す、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%BCのは、

アサ→ヒル→ユフ、

という古代の感覚が残っている気がする。

「ひる」の語源は、

ヒ(日)と同根、

とあり(仝上)、「ヒ(日)」http://ppnetwork.seesaa.net/article/463232976.html?1618440403は、

太陽というのが原義。太陽の出ている明るい時間、日中。太陽が出て没するまでの経過を時間の単位としてヒトヒ(一日)という。ヒ(日)の複数はヒビというが、二日以上の長い時間を一まとめに把握した場合には、フツカ(二日)・ミカ(三日)のようにカ(日)という、

とある(岩波古語辞典)ので、「ヒ」のみでも、

昼間、

の意味はある。だから、大言海は、「ひ(日)」を、

太陽、

の意と、

昼間、

の意の二項別に立てている。で、「ひる」は、

ヒ(日)+る(助辞)(大言海)、
ヒ(日)+る(接尾語)(日本語源広辞典)、

という説になる。これは、「よる」が、

よ(「よる」の古形)+る(接尾語)(日本語源広辞典)、
よ(「よる」の古形)+る(助辞)(大言海・俚言集覧・国語の語根とその分類=大島正健)、

とされるのと対であると思われる。ただ、「よる」と「よ」とは微妙に差があり、「よる」中心にした時間の区分は、上代、

ユフベ→ヨヒ→ヨナカ→アカツキ→アシタ、

のうち、

ヨヒ→ヨナカ→アカツキ(アカトキ)、

と三分され、

当時の日付変更時点は丑の刻(午前二時頃)と寅の刻(午前四時頃)の間であったが、「よなか」と「あかとき」(明時、「あかつき」の古形)の境はこの時刻変更点と一致している、

とある(日本語源大辞典)が、

「よる」が「ひる」に対し、

暗い時間帯全体を指す、

のに対し、「よ」は、

よひ、
よなか、
よべ(昨夜)、

と三分された、

特定の一部分だけを取り出していう、

ともある(仝上)。ついでながら、「よべ」は、古代、

日付変更点の丑の刻と寅の刻の間(午前三時頃)の、こちら側を「こよひ」、向こう側を「よべ」とよんだ、

とある(仝上)。ちなみに、「ひ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/463232976.html?1618440403で触れたことだが、

明け六つ(午前六時)を一日の初とし、次の明け六つを終とせしを、夜九つ(午前十二時)よりと改むる由、元文五年の暦の端書に見えたり、

とある(大言海)ので、江戸時代の元文四年(1740)に一日を今日の、零時からと替えた。時計の影響かもしれない。

「ひる」に当てた「昼(晝)」(チュウ)の字は、

会意。晝は「筆を手に持つ姿+日を視覚に区切った形」。日の照る時間を、ここからここまでと筆でくぎって書くさまを示す。一日のうち、主となり中心となる時のこと。夜(わきにある時間)に対することば、

とある(漢字源)。「夜」(ヤ)の字は、

会意兼形声。亦(エキ)は、人のからだの両わきにあるわきの下を示し、腋(エキ)の原字。夜は、「月+音符亦の略体」で、昼(日の出る時)を中心にはさんで、その両脇にある時間、つまりよるのことを意味する、

とある(仝上)ので、「昼」の視点から「夜」をみていることかをみていることがわかるし、昼夜は、きっちりと区切られている感覚らしい。和語の、

昼を中心にした時間の区分、アサ→ヒル→ユフ、
夜を中心にした時間の区分、ユフベ→ヨヒ→ヨナカ→アカツキ→アシタ、

というグラデーションの感覚とは違うようだ。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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