「ついに(つひに)」は、
終に、
遂に、
竟に、
等々と当てる(大言海・デジタル大辞泉)。
ついに、完成した、
というように、
長い時間ののちに、最終的にある結果に達するさま、とうとう、しまいに、
という意味と、
ついに、完成しなかった、
というように、
(多く、打消しの語を伴って用いる)ある状態が最後まで続くさま、いまもって、いまだに、とうとう、
という意味がある。「とうとう」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/481488740.html?1620932160)で触れたように、「とうとう」にも、
とうとう完成した、
と、
とうとう完成しなかった、
の二重の使い方があるが、
口頭語としては「とうとう」が多く用いられ、「ついに」は文語的である、
とある(デジタル大辞泉)。
「ついに」は、
つひ(終、竟)+に、
で、「つひ」は、
終の住処、
終の事、
終の道、
等々と使う、
終わり、
の意であり、それをメタファに、
死期、終焉、
の意である。「つい(ひ)」は、
ツイユ(潰・弊・費)、ツヒヤス(潰・弊・費)と同根、次第に痩せ衰える、用いて次第に減る意、
とある(岩波古語辞典・広辞苑)。「ついゆ」(潰・弊・費)は、
生気を失う、
衰える、
という意なので、
長い時間の後、最終的な時点で新しい何かが実現した、またはしなかった、
という含意の原意は、
ものごとが衰え消耗していってゆきつくところ、
の意(岩波古語辞典)で、
次第に消えていく、
というようなニュアンスだったように見える。その意味では、
ツキ(尽)の義(言元梯)、
ツクル(尽)の義(和句解)、
尽きる日の義(国語の語根とその分類=大島正健)、
等々もあり得るが、
つく→つひ、
との音韻変化は、
イカホロ(伊可保呂)→イハホロ(伊波保呂)、
カルカタ(離る方)→ハルカタ・ハルカ(遥)→ハルバル(遥々)、
等々、
カ行音[k]→ハ形音[h]、
の、
カ→ヒ、
と、
発音運動の衰弱化に伴い破裂運動が摩擦運動にかわる、
ということ(日本語の語源)がありえるので、無理筋ではないのだが、しかし、
ツイユ(潰・弊・費)、ツヒヤス(潰・弊・費)と同根、
ということでいいのではあるまいか。
「終」(漢音シュウ、呉音シュ)は、
会意兼形声。冬(トウ)は、冬の貯蔵用の食物をぶらさげたさまを描いた象形文字。のち日印や冫印(氷)を加えて、寒い季節を示した。収穫物をいっぱいたくわえた一年のおわり。中(なかにいっぱい)・蓄(中にいっぱいたくわえる)と同系のことば。終は「糸+音符冬」で、糸巻に糸をはじめからおわりまで、いっぱい巻いて蓄えた糸の玉。最後までいきつくの意を含む、
とある(漢字源)。別に、
「冬」は貯蔵用の食べ物の象形で、それから、それを必要とする「ふゆ」を意味するようになった。冬は年の「おわり」であり、終は糸巻きに最後まで巻き付けるの意(藤堂)、
ともある(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%B5%82)。
(「終」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%B5%82より)
「終」は、
始と対す。始よりをわりまで続く意あり、終日は朝から晩まで、終身は生れてから死するまでなり、
とある(字源)。
(「終」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji432.htmlより)
「遂」(漢音スイ、呉音ズイ)は、
形声。㒸は重いぶたを描いた象形文字。隊(タイ)・墜(スイ)などの音符として用いられる。遂は辶(すすむ)にそれを単なる音符として添えた字。道筋をたどって奥へすすむこと、
とある(漢字源)。別に、
会意兼形声文字です。「立ち止まる足・十字路の象形」(「行く」の意味)と「倒れた人」の象形(「したがう」の意味)から、一定の道すじに従って事が運び「なしとげる」を意味する「遂」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji1692.html)。
(「遂」 金文・西周 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%81%82より)
「遂」は、
事をしとぐる意あり、つひにと訓むときは、因なり、兩事相因而及也と註す。此の因ありて、たゆみなく彼の事をしとぐる義。韓非子「蟻壊一寸而仞有水、乃掘地遂得水」、
とある(字源)。
(「遂」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji1692.htmlより)
「竟」(漢音ケイ 呉音キョウ)は、
会意。「音+人」で、音楽のおわり、楽章の最後を示す、
とある(漢字源)。
(「竟」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%AB%9Fより)
「竟」は、
究竟、または畢竟と熟し、あげくと訳す。史記に「及破驪戒、獲驪姫愛之、竟以乱晉」とある如し、
とある(字源)。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95