2021年06月03日


「籠」は、

かご、

とも訓むが、

こ、

とも、また、

ろう、

とも訓ませる。これは「籠」の漢音である。いずれも、

かご(籠)、

の意の、

竹や籐(とう)・藺(い)・柳・針金などで編んだり、組んだりした器物、

の意がある。

「籠」.jpg

(「竹籠」 デジタル大辞泉より)

ただ、「こ」には、

伏籠・臥籠(ふせご)、

の意、つまり、

伏せておいてその上に衣服をかける籠。中に香炉を置いて香を衣服に移したり、火鉢などを入れて服を乾かしたり暖めたりするのに用いる。竹または金属でできているもの、

の意もある(精選版日本国語大辞典)。あるいは、

富士籠
とも、
匂懸(におひかけ)、

とも言う(広辞苑・仝上)。

伏籠.bmp

(「伏籠」 精選版日本国語大辞典より)

また、「ろう」は、「かご」の意で、

印籠、
蒸籠(せいろう)、
灯籠、
薬籠、

等々の他に、

籠絡、
牢籠、

というように、

中にこめる、とりこむ、

意と、

籠居、
籠城、
参籠、

というように、

中に閉じこもる、

意もある。ただ、この意で使うのは、わが国だけの使い方のようである(字源・漢字源)。

ここでは「こ」と訓む、

籠、

である。これは、

籠(こ)もよ み籠(こ)もち ふくしもよ みぶくし持ち この丘(をか)に 菜摘(なつ)ます児(こ) 家聞かな 名告(の)らさね そらみつ やまとの国は おしなべて 吾(われ)こそをれ しきなべて 吾(われ)こそませ 我こそは 告(の)らめ 家をも名をも(雄略天皇)

にある「こ」である。

「かご」の古形、

とされる。「こ」は、

コム(籠)の義、ケ(笥)に通じるか(大言海)、
ケ(笥)の転音(日本古語大辞典=松岡静雄)、

と、「笥」と関わらせる説がある。「け(笥)」は、

物を盛り、また入れる器、

の意で、特に、新撰字鏡(898~901頃)に、

箪 笥也、円曰箪方曰笥 太加介(タカケ=竹笥)、

とあるように(「簞」は、「簞食(タンシ)」というように、竹で編んだ丸い飯びつや「簞笥(タンス)」のように、はこの意)、

飯を盛る器、

で(精選版日本国語大辞典)、「け(笥)」は、

古形「瓮(カ)」の転、

とある(岩波古語辞典)。「か(瓮)」は、

甕、

とも当て、

平瓮(ひらか)、
斎甕(みか)、

のような複合語だけに見られる(仝上・大言海)。

か(ka 瓮)→け(ke 笥)→こ(ko 籠)、

と、

a→e、
e→o、

と母音交替した可能性はある。この三者の関係から考えると、

カゴ(籠)の義(名言通)、
カゴの上略(和句解)、

と「かご」とつなげる必要はなさそうな気がする。

「かご(籠)」は、

藍、

とも当て(岩波古語辞典・大言海)、

こ(籠)、

とも、

かたま(堅間)、
かため(堅目)、
かつま(かつみ)、

等々とも言う(仝上)が、

構籠(カキコ)の略か、壁(カベ)も、構隔(カキヘ)なるべし(大言海・日本語源広辞典)、
囲むの義(和語私臆鈔・和訓栞・言葉の根しらべの=鈴木潔子・国語の語根とその分類=大島正健・日本語源広辞典)、
カ(囲)+コ(込める)の変化(日本語源広辞典・日本釈名)、

等々、

竹で組んだ入れ物、
竹製の囲んだもの、
囲い込めるもの、

等々、入れ物を意識した語源か、

タカケ(竹笥)の転(言元梯)、
カタメ(堅目)の義(名言通)、

等々「竹」を意識した語源説があるが、「かご」は、

か(ka 瓮)→け(ke 笥)→こ(ko 籠)、

の変化の「か」と関わるとみていい。むしろ、

上代に〈こ〉と呼ばれていたことを考えれば、〈か〉の由来する言葉との合成語であることがわかる。すなわち〈か〉は竹の意とも堅の意ともいわれ、〈こ〉に形容的に冠している、

とする(世界大百科事典)ように、「かご」の「ご」は、

古形「こ」、

で、それに、「たけ」の「た」がついた、というのが妥当なのではあるまいか。鎌倉時代の『名語記』、

こころ流浪の行人のせなかに負たる籠をかこおひとなつけたり、

と、「かご」は「かこ」と清音であったのだから。

また、「タケ(竹)」http://ppnetwork.seesaa.net/article/461199145.htmlで触れたが、「たけ」には、

タは竹の意の朝鮮語(tai)からとする説、

もあり(日本語源大辞典)、「かご」や「こ」が「竹」と関わる以上、「竹」との関連は捨てがたい。もう一つ気になるのは、「竹」は、

篠竹以外、ほとんどが中国由来、

ということだ。「竹」とともに、「タケ」を示す言葉が入ってきたことを想定できるとすると、

中国音tikuがtake音韻変化した語(日本語源広辞典)、

もあり得る。その場合も「た」は「たけ」の「た」である。

「籠」 漢字.gif


「籠」(漢音ロウ、呉音ル)は、

会意兼形声。「竹+音符龍(ロウ 円筒状で長い)」。大蛇のような細長い竹かご、

とある(漢字源)。別の解釈に、

会意兼形声文字です(竹+龍)。「竹」の象形と「龍」の象形(「龍」の意味だが、ここでは、「つめこむ」の意味)から、「土を詰め込む竹かご(もっこ)」を意味する「籠」という漢字が成り立ちました、

という説もあるhttps://okjiten.jp/kanji1369.html

「籠」 成り立ち.gif

(「籠」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji1369.htmlより)

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル: 伏籠 臥籠
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posted by Toshi at 03:33| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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