2021年06月08日
そびえる
「そびえる」は、
聳える、
と当てる。文語は、
聳ゆ、
である。
山などが高くたつ、
つまり、
そそり立つ、
意であるが、それの派生で、
身の丈がすらりとしている、
意でも使う。
「そびゆ」の「ソビ」は、
ソバ(稜)と同根、
とある(岩波古語辞典)。「そばだつ」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/481874947.html?1623004913)で触れたように、「そば」は、
稜、
傍、
側、
等々と当て、
ソハ(岨)と同根、
とあり、「そは」は、
山の切り立った斜面、
を意味し、そのため「そば」は、
原義は斜面の義、また、鋭角をなしているかど、斜めの方向の意。日本人は水平または垂直を好み、斜めは好まなかったので、斜めの位置、尖ったかどの場所の意はやがて、はずれ・すみっこの意に転じ、さらに、すこしばかりのものなどを指すようになった。またはずれ所の意から、物の脇・物の近くの意を生じた。ソバ(蕎麦)、そびゆ(聳)も同根、
とある(仝上)。「そび」を使う言葉には、「聳える」意の、
そび(聳)く、
という動詞があるが、平安末期の『名義抄』には、
聳、ソビク・タナビク、
とあり、
黒くも空にそびきて(今昔物語)、
と、
雲などがたなびく、
意でも使った(仝上)。
その他に、「聳える状に云ふ」
そび(聳)け、
がある。平安後期の『字鏡』に、
聳、曾比介、
と載る(大言海)。また、
肩をそびやかす、
という「そび(聳)やかす」は、
聳えるようにする、
という意だが(広辞苑・大言海)、
背たけなどがすらりと伸びている、
という意の、
そび(聳)やく、
の他動詞形と思われる(岩波古語辞典)。
それを副詞的に使う、
そび(聳)やかに、
という、
聳え、のびやかなる状、
に使う言葉もある(大言海)。
こうみると、「そびえる」は、
「そびく」、「そびやか」と同根(角川古語大辞典)、
とともに、
ソバ(稜)と同根、
と、
そばだつ、
とも、
そば(蕎麦)、
ともつながる。
「聳」(漢音ショウ、呉音シュ・シュウ)は、
会意兼形声。從(ショウ・ジュウ)は、縦に細長いこと。聳は、「耳+音符從」で、頭にくっついた耳たぶをたてに細長くたてること、
とあり(漢字源)、「聳立(ショウリツ)」と、そばだてる意だが、「聳耳」というように、耳を聳つの意でも使うのが、おもしろい。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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