2021年06月19日

やれやれ


「やれやれ」は、意味に幅がある。もともとは、

感動詞「やれ」重ねて強調した語、

であり、「やれ」は、

呼びかける時、相手の注意を引く時、ふと心づいた時、困った時、他に同情する時などに発する声、

とあるが、

やんれの音便(大言海)、

あるいは逆に、「やんれ」が、

やれの転(岩波古語辞典)、

ともあり、もともとは、

やよ、

と同じく、

呼びかける声であり、「やよ」が、

やよ時雨物思ふ袖のなかりせば木の葉ののちに何を染めまし(新古今)、

と、

やあ、
とか、
やい、
とか、
もしもし、

と、呼びかける声であったように、また「やよ」が、

げにもさあり、やよ、げにもさうよのと(狂言記)、

のように、

囃子の声、
あるいは、
掛け声、

である以上、「やれ」もまた、

やれ、どうよく者、やるまいぞ(狂言記)、

やれ、ほんさに凪ぎるやら、

と、

掛け声、

の意がある。ただ、「やれ」には、

やんれ、

やよ、

にはない、

やれ、人にてありけりとて、河に投げ入れてけり(雑談集)、
やれ、一息つこうか、
やれ、困った、

というように、

おや、
とか、
あれっ、

といった、

ふと気づいた時や驚いた時などに発する声、

の意がある。

人に向けた発声、
が、
自分自身に向けた発声、

つまり、

つぶやき、

に近い、

思わず漏らす言葉、

に転じた、とみることができる。

だから、「やれ」を重ねた、

やれやれ、

にも、

やれやれ小僧ども、あの道無殿のお供の人に、よく酒をすすめよ(室町末期「人鏡論(ジンキョウロン)」)、

と呼びかける声の意の他に、

いやはや、

といった含意のつぶやきで、

ヤレヤレメデタイ(日葡辞書)、
やれやれありがたい、

のような、

安心したり深く感じたりしたときに、思わずこぼす言葉であったり、

やれやれ、ここで一服、
やれやれ、困ったものだ、

と、

疲労した時、あるいはあきれ果てた時にもらす言葉としても使う。これは、「やれ」と同じく、

人に向けていた声掛け、

を、

自分自身に向けた声掛け、

に転じたものとことができる。

宮 熱田神事.jpg

(「宮 熱田神事」 歌川広重・東海道五拾三次 https://www.adachi-hanga.com/ukiyo-e/items/hiroshige054/より)

人に向けた声掛けとしては、

やれかれ、
やれこれ、
やれそれ、

等々の類義語がある(江戸語大辞典)。

やれ、
も、
かれ、
も、
これ、
も、
それ、
も、

共に、促したり、はやしたりする言葉である。

ただ、「やれやれ」には、今日、金融・証券用語に、

高値つかみで損をし、売りたくても売れなかったのが、相場がまた上がってきて安心する、

意で使う。そういう人を、

ヤレヤレ筋、

ヤレヤレ筋が売って手仕舞うことを、

ヤレヤレ筋の売り、

というhttps://www.daiwa.jp/glossary/YST1781.html、とある。「やれやれ」の漏れた吐息に近い言葉で「やれやれ」の意味の外延に入っている。

因みに、「やれやれ」の「やれ」については、

やよ、

やんれ、

といった感動詞由来ではなく、

やる(遣る)の命令形、

という説(日本語源広辞典)がある。「やれ」の元を辿れば、

命じてやらせる、

意がなくはないかもしれないが、命令形の含意と、掛け声の「促す」含意とは少し差がある気がする。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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