「伊達巻」は、
といた卵に白身魚のすり身を加えて甘みと塩で味付けした卵焼き器で厚焼きにしてから巻き簀(す)で渦巻状に巻いたもの、
で(たべもの語源辞典)、
伊達巻玉子、
とも呼ぶ(仝上)。正月料理や祝い事には欠かせない料理となっている。
この「伊達巻」には、
水分が多くジューシーなタイプ、
と、
水分が少なめでカステラのような食感のもの、
と二つのタイプがあり(https://www.kamaboko.com/column/2208/)、
主に江戸時代に長崎に伝来した「カステラ蒲鉾」という料理が伊達巻の始まり、
との説もある(仝上)のは、
スポンジケーキ状に焼くにはオーブン(天火)の存在が不可欠であることから、ポルトガルのロールケーキである「トルタ・デ・ラランジャ」の技法が応用された、
と考えられている(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E9%81%94%E5%B7%BB)からである。
「伊達巻」には、
女性が和服の着くずれを防ぐために締める幅の狭い帯。博多織などのしっかりした布で作り、端をはさみ込んでとめる、
の意もある。これは、
だてじめ、
ともいう(広辞苑)が、正確には、
伊達巻の両端を結ぶことができるようにしたもの、
が、
伊達締め
になる(デジタル大辞泉)。結ぶ部分以外に芯を入れるものが多い。伊達締めは、
紐の一種、
だが、伊達巻きは、
幅の狭い単帯(ひとえおび)、
になる(https://oiwai-kimono.com/kihon/datejime.html#datejime_datemaki)。とはいえ、「伊達巻」も「伊達締め」も、着物の表に出して見せるものではない。「伊達締め」は、
長襦袢の胸元をととのえるためと長着のお端折(はしより)を始末するために用い、二巻きして端をはさみこむ。正絹で中央が堅く織られている博多織がかさばらずに使いよい。伊達巻は倍ほどの長さでぐるぐる巻きつけて体型の補整も兼ね、花嫁衣装の着付などに用いる、
ともある(世界大百科事典)。
食べ物の「伊達巻」を、
女性用の和服に使われる伊達巻きに似ていることからこう呼ぶようになった、
とする説がある。
着物の伊達巻と料理の伊達巻の形が似ていること、また着物の伊達巻の巻く時の動作と、伊達巻を巻く時の動作が似ている、
ことかららしい(https://www.kamaboko.com/column/2208/)。
しかし、他に、「いなせ」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/414618915.html)で触れた、
伊達者、
というような、
ことさら侠気を示そうとすること、
あるいは、
人目を引くように派手にふるまうこと、
という意(広辞苑)とともに、
あか抜けていきであること、
とか
さばけていること、
という含意もある、
伊達、
からつけられたとする、
伊達巻も鮮やかな黄色をしていて、食べ物の中でも人目をひく色合いであることから「派手な卵焼き」として伊達巻と名付けられたと言われています。 また、当時のおしゃれな若者である「伊達者」が着用していた着物の柄と形と似ていたことから、伊達巻という名前がついたとされています、
という説もある(仝上)。他に、伊達政宗が好物だったというのもあるが、これは付会にすぎるようだ。
伊達者の含意と着物の「伊達巻」を重ねて、
伊達は人目を引く派手なこと、粋であること、外見を飾ることといった意味を持っている。伊達巻は料理としてこの伊達の要素を兼ね備えている。しかも、厚焼玉子をうず巻状に巻くこの動作は、婦人が用いる伊達巻という幅の狭い帯を締めることにも似ている。これで伊達巻という名がついた、
という説明がいい(たべもの語源辞典)。
伊達(外見、見栄え)+巻き、
で、見栄えの派手さと伊達巻を巻くイメージの二重重ねということでよさそうである。
参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
ラベル:伊達巻