2021年06月21日

伊達



「伊達」は、当て字である。「いなせ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/414618915.htmlで触れたように、

伊達者、

というような、

ことさら侠気を示そうとすること、
あるいは、
人目を引くように派手にふるまうこと、

という意(広辞苑)とともに、

あか抜けていきであること、
とか
さばけていること、

という含意もある、「だて」は、

タテ(立)の転、接尾語ダテの名詞化(岩波古語辞典・日本語源広辞典)、
「立つ」から、人目につくような形を表す(広辞苑)、

と、

タテダテシキの上下略しして濁る、男を立てる意。即ち男立、腕立、心中立などより移る。世には伊達政宗の部兵の服装華美なりしに起こると云へど、此語政宗の自体よりは古くありしが如し、且つ慶長の頃までは、伊達氏、イダテと唱へたり(大言海)、

の二説が有力である。

因みに、「伊達」を「イダテ」と訓むについては、伊達政宗が慶長一八年(1613)に、遣欧使節として派遣した支倉常長が元和六年(1620)に帰国した際持ち帰った、ラテン語で書かれた「ローマ市公民権証書」に、確かに、

IDATE MASAMVNE

とあるhttps://www.city.sendai.jp/museum/kidscorner/kids-10-3.html

伊達少将政宗.jpg

(月岡芳年作「魁題百撰相 伊達少将政宗」 https://www.touken-world-ukiyoe.jp/mushae/art0006460/より)

「だて」は、

タツ(立)の転、名詞・形容詞語幹などに付いて、そのさまをことさらとりたてて示す意、

であり、

いきがる、

意の、

男立、
心中立、

等々の他、

その意味を強め、またはそのことを取り立てて示そうとする場合、

洗い立て、
心安立て、
忠義立て、

等々とも使う。その「わざとらしさ」「誇らしげ」という意味では、「男立」と重なる。

「たてだてし」は、

立て立てし、

と当て、

心を立てとほす意、

とし、

世を逃れ身を捨てたれども、こころはなほ昔に変わらず、たてだてしかりけるなり(著聞集)、

と、

意気地を張ること強し、

とするが(大言海)、しかし、

たてたてし、

と訓み、

山伏はたてたてしきものをあさましき事なり(沙石集)、

と、

気性が激しい、

意とするものがある(岩波古語辞典)。意味から見れば、「たてだてし」は、

いきがる、

よりは、

はげしい気性、

の意の方がまさる気がする。

「だて」には、

伊達眼鏡、
伊達の薄着、

のように、

それが本来的な目的で着用されているのではないことを示す、

こともあり(実用日本語表現辞典)、やはり、

むやみにそうする意を表す接尾語「立て」が単独で用いられるようになったものだと考えられる。接尾語「立て」は、はっきりさせる意で用いられた動詞「立てる」の連用形に由来する、

というところだと思われる(仝上)。こうした、

いかにも~らしい様子を見せる、
ことさらにそのような様子をする、

という使い方の接尾語「だて」は、

室町末期に、名詞または形容詞として独立した、

とみられる(日本語源大辞典)。

東洲斎写楽「三世市川門之助の伊達の与作」.jpg

(東洲斎写楽「三世市川門之助の伊達の与作」 https://www.adachi-hanga.com/ukiyo-e/items/sharaku024/より)

「だてら」http://ppnetwork.seesaa.net/article/461527184.htmlで触れたが、「だてら」は、

女だてらに、

などといった使い方をするが、

接尾語「だて」+状態を表す接尾語「ら」、

で(デジタル大辞泉)、この「だて」は、

伊達、

と当てる「だて」で、「たつ」は、「縦」http://ppnetwork.seesaa.net/article/453257596.htmlにつながる。
そこで触れたように、「よこ」には、

横流し、
横取り、
よことま、

等々、正しからざる意味を含んでいるが、「立つ」は、

自然界の現象や静止している事物の、上方・前方に向かう動きが、はっきりと目に見える意。転じて、物が確実に位置を占めて存在する意、

と(岩波古語辞典)、「目立つ」という含意がある。この含意は、

立役者、
立女形、

の「立」に含意を残している気がする。

「立」 甲骨.png

(「立」(甲骨文字・殷) https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%AB%8Bより)

「立」(慣用リツ、呉音・漢音リュウ)は、

会意。「大(ひと)+―線(地面)」で、人が両足を地につけて立ったさまを示す。両手や両足を添えて炉安定する意を含む、

とある(漢字源)。別に、

「立」 成り立ち.gif

(「立」成り立ち https://okjiten.jp/kanji181.htmlより)

指事文字です。「1線の上に立つ人」の象形から「たつ」を意味する「立」という漢字が成り立ちました、

とする解釈もあるhttps://okjiten.jp/kanji181.html

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:伊達
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