与太


与太者、
与太話、
与太郎、

等々と使われる、

与(與)太、

は、

与太婆アさまには困るよう(滑稽・旧観帖)、

と、

知恵の足りない者、
役に立たない者、
おろかもの、

の意か、

でたらめを言う、

意で、

与太を飛ばす、

というように、

でたらめ、
ふざけた、くだらないことば、

の意で使う(広辞苑)、とある。

ヨタ(知恵のたりないもの)をとばす、

と絵解きするものもある(日本語源広辞典)。

さらに、「よた」には、

Yota(ヨタ)ニ ツキアウナ(1886年「改正増補和英語林集成」)、

という用例もあり、

素行不良の者、ならず者、

と、ほぼ、

よた者、

の意でも使うようになっている(精選版 日本国語大辞典)。

「与太」の語源には、

「よたろう(与太郎)」の略(精選版日本国語大辞典)、

と、

「よたんぼう(酔坊)」の略(大言海)、

とがあり、

よたを飛ばすとは、つまらぬことをやり散らすの意、

とする(仝上)。しかし、「よたんぼう」は、

酔うた坊の訛(江戸語大辞典)、
擬人語、酔倒れに、坊を添えたる語(大言海)、

とあり、

よたんぼうの懦弱(たわい)なし(安永十年(1781)「傾城異見之規矩」)、

と、

酔っぱらい、

の意であり(仝上)、あるいは、酔っぱらいの「よたをとばす」ことが、もともと「よた」の始原なのかもしれないが、「よた」の使われ方の中には、「酔っ払い」の含意は消えている。

飴売与太郎 市村羽左衛門.jpg

(「飴売与太郎 市村羽左衛門」(歌川国明) https://ja.ukiyo-e.org/image/ritsumei/arcUP0098より)

与太郎、

というと、落語などで出てくる、

愚か者、

の代名詞だが、

操り・浄瑠璃社会の隠語、

ともあり(広辞苑・江戸語大辞典)、

うそ、でたらめ、
うそつき、

の意とし、

おまへもえぐい与太郎云ひじゃ(天明四年(1784)「二日酔巵觶」)、

の用例の原注に、

「与太郎とはうそつきの事」(大阪下りの芸妓の言)、

とあり(江戸語大辞典)、

与太郎あがく、

という言い回しが、

操り・浄瑠璃社会の隠語として、

嘘を言う、

意で、

おめーが昨夜(よんべ)癪をおこして大さわぎをしたと与太郎あがいたらの、きもをつぶしたよ(文化九年(1812)四十八癖)、

などと使われている。

与太者、

というと、今日では、

愚か者、
役に立たない者、
なまけもの、

の意味よりは、

よたもん、

と言ったりして、

手の付けられない不良の徒、
素行不良の若者、
やくざもの、

という意味が強い(広辞苑・精選版日本国語大辞典)。この意味で使い出したのは、比較的新しく、「よた」に「与太者」の意味が付き加わり出した時期から見ると、明治前後と思われ(改正増補和英語林集成(1886))、大正頃は多く、

よたもん、

といわれ、昭和にはいっては、

よた公(こう)、

ともいわれた、とある(精選版日本国語大辞典・日本語源大辞典)。

「與」 漢字.gif

(「與」 https://kakijun.jp/page/yo13200.htmlより)

漢字「與(与)」(ヨ)は、

会意兼形声。与は牙(ガ)の原字と同形で、かみあった姿を示す。與はさらに四本の手を添えて、二人が両手で一緒に物を持ち上げるさまを示す。「二人の両手+音符与」で、かみあわす、力を合わせるなどの意を含む、

とある(漢字源)。

会意形声。「与」+音符「舁」、「与」はものがかみ合っている姿を意味し「牙」の原字に共通。「舁」は四方から手を差し伸べものを担ぐ様、

とあるのが上記説明を補足してくれるhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%88%87

「與」 金文 .png

(「與」 金文・西周 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%88%87より)

別に、

旧字は、会意形声。舁(よ)(持ち上げる。は変わった形)と、(ヨ)(くみあう。は変わった形)とから成る。力を合わせて仲間になる、ひいて、ともにする、転じて「あたえる」意を表す。借りて、助字に用いる。常用漢字は與の略字として用いられていたのの変形による(角川新字源)、

会意兼形声文字です(牙+口+舁)。「かみ合う歯」の象形と「口」の象形と「持ち上げる手」の象形と「ひきあげる手」の象形から、手や口うらを合わせて互いに助け合う事を意味し、そこから、「くみする(仲間になる)」、「あたえる」を意味する「与」という漢字が成り立ちましたhttps://okjiten.jp/kanji1356.html

等々の解釈もある。

「與」 成り立ち.gif

(「與」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji1356.htmlより)

参考文献;
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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