2021年09月24日

四万年の古層


藤尾慎一郎『日本の先史時代―旧石器・縄文・弥生・古墳時代を読みなおす』読む。

日本の先史時代-旧石器・縄文・弥生・古墳時代を読みなおす.jpg


「先史時代」とは、

文字資料が全くない時代、

を指す。本書は、

旧石器時代から縄文時代、弥生時代、古墳時代、

までを、

先史時代、

として扱っている。本書のキーワードは、

移行期、

という考え方にある。ひとくくりに、

弥生時代、

といっても、日本で最初に水田稲作を始めたのは、

「佐賀から福岡にかけての玄界灘沿岸地域の人々」

であるが、

「水田稲作が北海道と沖縄を除く九州・四国・本州全体で始まるまでに、700年近い歳月がかかっている」

とされる。しかも、東北部のように、いったん始めた水田耕作を、「気候変動によって」やめてしまい、

「南下してきた続縄文文化圏にはいる」

地域さえある。こうした700年(室町時代から現代までの時間に相当する)の、

「どこで縄文時代と弥生時代の線引きを行うのか」

が難しい。つまり、

「新しい時代のはじまりを出現・成立におくにせよ、普及・定着におくにせよ、時代を特徴づけるもっとも重要な指標がある程度広まって定着するまでに、一定の時間を要する」

のである。この期間を、

移行期(あるいは過渡期)、

と呼ぶ。この期間は、

「やがて終わることになる時代の要素と、現れ始めた次の時代の要素の両方が見られることが多く、かつどちらかの要素も圧倒的ではないという特徴がある。」

される。この期間を表現するのに、地域的な、

ぼかし、

つまり、

文化圏と文化圏の境の地域圏、

という、

地理的な中間様相、

を表現するもの(藤本強)と、時間的な、

エピ、

つまり、たとえば、「縄文的な要素も弥生的な要素も併せ持った時期」を、

エピ縄文、

というような、

過渡的様相、

を表現するもの(林謙作)とがある。本書は、日本列島の変遷を、

北の文化、
中の文化、
南の文化、

と三つの文化圏にわける考え方(藤本強)の、

中の文化、

を中心に扱っている。それでも、前述のように700年という時間差がある。日本列島は、

旧石器時代後期、

から始まり、列島に人が現れたのは、

3万7000年前、

そこから、

2万4000年前から1万8000年前の間、

は最寒冷期、

「大地は凍てつき、海水面は現在より120メートル余りも下がっていた。そのため、当時の日本列島は現在の姿とはかなり大きく異なっており、古北海道半島、古本州島、古琉球島という大きく三つの地域的単位からなっていた」

とされる。さらに、土器の出現するのが1万6000年前、

「この1万6000年前から、ほとんどの考古学者が縄文時代と認める1万1700年前までを、旧石器時代から縄文時代にかけての移行期」

とされる。これだけで、歴史時代の倍を超える。

「縄文時代のはじまりは、九州南部で『縄文化』が始まった1万5000年前~1万4500年前、隆線文土器が出現した段階にすべきというのが筆者の考えである。(中略)縄文化の波は、2000年あまりかけて東進・北上する。この時期こそ移行期」

に当たる。本州・四国・九州における縄文から弥生への移行期は、

「九州北部で灌漑式水田稲作が始まる前十世紀後半に起こる。」

とされるが、中部地域では、500年あまりも、

アワ・キビの栽培の段階が続く、

のである。だから、これと、「九州北部における水田耕作開始後の500年」と「同じ文化段階とみなすことが本当に可能なのか」という疑問が出てくるのは当然である。それに対して、

「弥生文化は、農耕が単に文化要素の一つに留まることなく、いくつかの文化要素が農耕文化的色彩を帯びて互いに緊密に連鎖的に影響し合いながら、全体として農耕文化を形成しているという『農耕文化複合』の概念で理解すべき」

との説もある(設楽博己)。著者は、

「移行期の期間は西日本が前十世紀後半から前七世紀までの約300年、伊勢湾沿岸地域は前六世紀頃までの約400年、そしてもっとも長いのが中部・関東南部地方の約500年である。」

とし、この期間は、

縄文晩期文化、

とみなす。そして、

「二世紀中ごろ……を起点、……三世紀中ごろ……を終点として、弥生時代から古墳時代への移行期」

とみなす、とする。そこで現われてくるのが、

「100メートル以下の墳丘墓の登場と墳頂祭祀のはじまり」

である。古墳時代は、

三世紀中ごろ、

から始まる。

それにしても、昔習った縄文時代、弥生時代とは比べ物にならない、多様で変化に富んだ、長期間の、しかも地域差の大きい時代様相に驚かされる。

そう考えると、歴史時代を括っている(奈良時代、平安時代といった)「時代」区分に比べて、

紀元前三万年から四、五世紀の古墳時代まで、

という長大な時間を、中国文献などがあるので、歴史時代に入る古墳時代を別とすれば、

旧石器時代、
縄文時代、
弥生時代、

という数千年、数万年を一つの時代に括るのは無理があるのではないか、という気がしてならない。

参考文献;
藤尾慎一郎『日本の先史時代―旧石器・縄文・弥生・古墳時代を読みなおす』(中公新書)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95


posted by Toshi at 04:27| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください