「め」は、「をとこ」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/483673592.html?1633030409)で触れたように、
牝、
雌、
女、
妻、
等々と当て、
雄、
牡、
男、
夫、
等々と当てる、
「を」の対、
である(岩波古語辞典)。「め」は、
女神、
女鹿、
雌蕊、
手弱女(たおやめ)、
等々と、
多く複合語として使う。動植物の雌の意。人間にも、男と一対をなす女の意で使うが、多くは女を見下げたり卑下したりする気持ちでいう。また、妻を指す場合もあるが平安時代には受領以下の人の妻をいうことが多く、天皇・貴族の正妻を指すことはほとんどない。軽侮の意を表す接尾語メも、これの転用、
とある(仝上)。接尾語「め」は、
奴、
と当てる。
やつ奴、
とか
畜生奴、
あるいは、
私奴、
と、謙遜の意を表したりする。
「を」は、
上代では動植物・神・人を問わず広く使われたが、平安時代以後は複合語の中に用いられ、「をのこ(健児・従者)「をのわらは(男の童)」「しずのを(賤の男)」「あらを(荒男)」など、卑しめられ、低く扱われる男性を指すことが多くなり、男性一般を表すには「をとこ」がこれに取って代わった、
とある(岩波古語辞典)が、「め」も、
古くは女性一般を意味していたが、平安時代以降、「をんな」と次第に交代し「め」は待遇度が低下して、女性の蔑称として用いられることとなった、
とある(日本語源大辞典)。
「め」は、
メ(愛)ずべき意か(本朝辞源=宇田甘冥・国語の語根とその分類=大島正健・大言海・日本語源広辞典)、
とある。しかし、「を」は、それと対になる説がない。
ヲ(尾)と同義(言元梯)、
オホ(大)、また、ヲモ(重)の反(名語記)、
等々だが、倭名抄に、
尾、乎(を)、鳥獣尻長毛也、
とある(岩波古語辞典)。単なる連想だが、「め」の語源説に、
ミ(陰)の義(言元梯)、
がある。「を」と「め」は対だと思うので、
ヲ(尾)と同義(言元梯)、
ミ(陰)の義(言元梯)、
なら、意味は通じる気がするのだが、語呂合わせのような気がしないでもない。対になる「を」が見当たらないが、「め」は、「め」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/453951631.html)で触れたように、「目」と「芽」と「見」とがつながる。「め」(女)も、「目」、「芽」、「見」とつながるような気がする。
「女」(漢音ジョ、呉音ニョ、慣用ニョウ)は、
象形、なよなよしたからだつきの女性を描いたもの、
とある(漢字源)が、
象形。手を前に組み合わせてひざまずく人の形にかたどり、「おんな」の意を表す、
とあり(角川新字源)、
象形文字です。「両手をしなやかに重ね、ひざまずく女性」の象形から、「おんな」を意味する「女」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji32.html)。甲骨文字から見ると、後者のように感じる。
(「女」 甲骨文字・殷 )https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%A5%B3より
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95