2021年10月18日

ひこ


「ひこ」は、

彦、

と当てる(広辞苑)が、

比古、
日子、
毘古、

等々とも当てhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E3%81%B2%E3%81%93

姫(ひめ)、

の対である(岩波古語辞典)。

名は天邇岐志国邇岐志(あめにぎしくににぎし)天津彦(あまつひこ)彦番能邇邇芸命(ひこほのににぎのみこと)そ。此の子を降すべし(古事記)、

と、

男子の美称、

だが、

此の速秋津彦(はやきつひこ)・速秋津姫の二柱の神、河海に因りて持ち分けて生める神の名は(古事記)、

と、

男子、

をも指す(岩波古語辞典)。「ひこ」は、魏書・東夷伝の、

始めて一海を渡る千余里、対馬国に至る。其の大官を卑狗(ひこ)と曰ひ、副を卑奴母離(ひなもり)と曰ふ、

とある「卑狗」は、彦と推定されている(仝上)。

「彦」 漢字.gif

(「彦」 https://kakijun.jp/page/0959200.htmlより)

「ひこ」は、

日子の義、日は美称。ヒメも同じ。相対す。中国最古の字書『爾雅』(漢初)、「美女為媛、美士為彦」。男子を美(ほ)めて呼ぶ語(大言海)、
ヒコ(日子)の義、ヒは美称(東雅・類聚名物考・俚言集覧・和訓栞・柴門和語類集・日本語原学=林甕臣)、
ヒは日・太陽。ムスヒ(産霊)・ヒモロキ(神籬)のヒと同じ。コは男子の意。太陽の子、あるいは太陽の神秘的な力をうけた子の意。尊称として男神の名に冠せられ、また男の名前の下につけて使われた。後に、一般的に男の尊称。なお「彦」の字は美男の意(岩波古語辞典)、

と、

日子、

とする説が多い。

ヒイデタル-コ(子)の意(日本釈名)、
ヒ(日)の子孫の義(燕石雑記・本朝辞源=宇田甘冥)、
ヒは神聖なの意、コは男の意(日本国家の起源=大野晋)、
ヒコ(靈子)の義(名言通)、
ホコ(陽子)の義(言元梯)、

等々も同趣旨とみられる。さらに、

ヒコネ・ヒコナの略。コナはクナで、朝鮮語で人の意のkanと同源(日鮮同祖論=金沢庄三郎)、

の他に、

ヒは、ヒコ(孫)・ヒヒコ(曾孫)と同語源で、それ故に尊く、美称ともなる(続上代特殊仮名音義=森重敏)、

というのがある。たしかに、「ひこ」は、

孫、

と当てて、和名類聚抄(平安中期)にある、

子之子為孫、無万古(むまこ)、一云、比古、

とある(岩波古語辞典)。しかし、同語源というのはどうだろうか。

ヒは隔てるとともに継承の意を表す(続上代特殊仮名音義=森重敏)、

という意味から「同源」としているようだが、

「こ」は男子を表す。「ひ」は後代の「御」に相当する、敬意を表す接頭辞、

との説もありhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E3%81%B2%E3%81%93

その意味では、

神の尊称、

孫の美称、

では意味が違い過ぎる気がする。

「ひこ」(孫)は、

ヒは物を隔つる義、曽孫を更にヒヒコと云ふもこれなり(大言海)、

他には載らないが、大言海は、「ひ」を、

隔、
重、

と当て、

重(へ)と通ず、

とし、

物を隔つるもの、又、コトの重なること、

とし、

ヒオホヂ(曾祖父)、
ヒオホバ(曽祖母)、
ヒヒコ(曾孫)、

を例示している。他にも、

ヒコ(隔子)の義(箋注和名抄・俗語考・日本語源=賀茂百樹)、

ともあり、

コ(子)にヒを冠したものと考えられ、類例にヒヒコ(曾孫)などがあり、ヒは一代隔てた親族を表すと思われる、

とある(日本語源大辞典)。ただ、

このヒは、ヒコ(彦)・ヒト(人)・ヒメ(姫)などとの関連も考えられる、

ともある(仝上)。もしそうだとすると、

ヒは隔てるとともに継承の意を表す(続上代特殊仮名音義=森重敏)、

の意味から、

ヒコ(彦)→ヒコ(孫)、

へと「ヒ」の意味が分岐したことになる気がする。

「彥」(ゲン)は、

会意兼形声。厂(ガン)は、厂型にくっきりとけじめのついたさま。彥「文(模様)+彡(模様)+音符厂」で、くっきりと浮き出た男の顔、

とあり(漢字源)、「美男子」の意である。そこから転じて、才徳の優れた青年の意を表すhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%BD%A6。別に、

会意兼形声文字です(文+厂+彡)。「人の胸を開いて、そこに入れ墨の模様を書く」象形(「模様」の意味)と「削り取られた崖」の象形と「長く流れる豊かでつややかな髪」の象形(「模様・飾り」の意味)から、崖から得た鉱物性顔料の意味を表し、それが転じて(派生して・新しい意味が分かれ出て)、それを用いる「美青年」、「才徳のすぐれた男子」、「男子の美称」を意味する「彦」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji1730.html

「彦」 成り立ち.gif

(「彦」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji1730.htmlより)

なお「子」http://ppnetwork.seesaa.net/article/465595147.htmlについては触れた。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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