2021年10月21日

ひこばえ


「ひこばえ」は、

蘖、

と当てる。

「孫(ひこ)生え」の意、

とある(広辞苑)。

切り株や木の根元から出る若芽、

をいう(仝上)。新撰字鏡(898~901頃)に、

荑、死木更生也、比古波江、

とある(精選版日本国語大辞典)。

余蘖・余孽(よげつ)、

ともいう。これは、春の季語である。

ひこばえ.jpg
(ひこばえ デジタル大辞泉より)

太い幹に対して、孫(ひこ)に見立てて、

ひこばえ(孫生え)、

というらしいhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%98%96。訛って、

ひこばゆ、
ひこばう、

等々ともいう(精選版日本国語大辞典)。「ひこ」に、

孫、

を当てることは、「ひこ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/483945574.html?1634499550で触れたが、和名類聚抄に、

子之子為孫、無万古(むまこ)、一云、比古、

とある。これは、

ヒは物を隔つる義、曽孫を更にヒヒコと云ふもこれなり(大言海)、

とし、

他には載らないが、大言海は、「ひ」を、

隔、
重、

と当て、

重(へ)と通ず、

とし、

物を隔つるもの、又、コトの重なること、

とし、

ヒオホヂ(曾祖父)、
ヒオホバ(曽祖母)、
ヒヒコ(曾孫)、

を例示している。

なお、「ひこばえ」は、樹木の切株の新芽を言うが、刈り取った稲の株から生えるのを、

穭(ひつじ)、

という(広辞苑)。「ひつじ」は、訛って、

ひづち
ひつぢ、
ひつち、
ひずち、

等々とも言うが、

稲孫、

と当て(精選版日本国語大辞典)、類聚名義抄(11~12世紀)に、

穭、ヲロカオヒ、俗に云、ヒツチ、

とあるように、室町時代までは、

ひつち、

といった(岩波古語辞典)。これは、

刈れる田におふるひつちの穂にいでぬは世を今更に秋はてぬとか(古今集)、

と、秋である。「をろかおひ」は、

疎生、
穭、

と当て、

刈りあとの株から生えたひこばえ、再生稲、ひつじ、

とある(広辞苑)。

イネの稲孫.jpg


「ひづち」の由来は、

刈れる後の乾土(ヒツチ)より生ふれば名とするか(大言海)、
秣、ヒツチ、稲の再生して実なるを云、秋田をかり、水をおとして後、干土(ヒツチ)より出て、みのるものなればヒツチと云(日本釈名)、

とある(大言海)。「ひづち」は、さらに、

稲の二番生(ばえ)、
ままばえ、
再熟稲(さいじゅくとう)、
おろかおひ(おい)、

等々ともいう(仝上)とあるので、

ただ新芽が出るだけではなく、実のなる、

のを指しているようだ。で、学術的には、

再生イネ、

といい、一般には、

二番穂、

とも呼ばれ、

穭稲(ひつじいね)、
穭生(ひつじばえ)、

等々ともいい、稲刈りのあと穭が茂った田を、

穭田(ひつじだ)、

というhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A8%B2%E5%AD%ABとある。

「蘖」 漢字.gif


「蘖(櫱)」(漢音ゲツ、呉音ゲチ)は、

会意兼形声。草冠の下の字(ゲツ)は、途中で切る、刈り取るの意を含む。蘖はそれを音符として、草と木をそえたもの、

とあり(漢字源)、「切株」「ひこばえ」の意である。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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