「苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)」は、
租税などをきびしく取り立てる、
意であり(広辞苑)、
苛酷(むご)く収斂(とりた)て、厳しく責め徴(はた)る、
意となる(大言海)が、少し広げて、
むごい取り立て、
の意でも使う(精選版日本国語大辞典)。
苛求、
苛斂、
誅求、
とも言う。
「苛」はむごい、また、責め立てる意。「斂」はおさめる、集める意。「誅」は責める意、
とある(新明解四字熟語辞典)。
左傳(戦国時代)・襄公三十一年に、
誅求無厭、
とあり、旧唐書(945年)・穆宗紀に、
苛斂剥下、人皆咎之、
とあり、新五代史(1053年)・袁象先傳に、
誅斂其民、積貨千万、
とある(大言海・広辞苑)。
苛税、
は、
厳しい取り立て、
だが、
苛求、
というと、
厳しく求める、
意となる(字源)。
ただ、漢和辞書には、
苛斂誅求、
は見当たらず、
「苛斂誅求」と二つ重ねる例は、日本では二〇世紀初めから現れています、
と(四字熟語を知る辞典)、新しい用例のようである。
「苛斂誅求」の類義語に、
頭会箕斂(とうかいきれん)、
がある。「頭会」は、
人数を数える、
意、「箕斂」は、
農具の箕ですくうこと、
で、
人数を数えて、箕ですくうように手当たり次第にかき集める、
という意味になる(https://yoji.jitenon.jp/yojij/4807.html)。
また、過酷な税金という意味では、
苛捐酷税(かえんこくぜい)、
という言葉がある(四字熟語を知る辞典)。
「苛」(漢音カ、呉音ガ)は、
会意兼形声。可は「¬印+口」からなり、¬型に曲折してきつい摩擦をおこす、のどをかすらせるなどの意。苛は「艸+音符可」で、のどをひりひりさせる植物。転じてきつい摩擦や刺激を与える行為のこと、
とあり(漢字源)、「からし」の意で、「ひりひりする」「きつい」などの意があり、「苛刻」「苛政」「苛責(呵責)」などと使われる。別に、
形声。艸と、音符可(カ)とから成る。小さい草の意を表す。転じて、せめる、むごい意に用いる、
とも(角川新字源)、
会意形声。「艸」+音符「可」、「可」は直角に曲げ摩擦を起させるの意、摩擦を起しひりひりするからい草が原義、
とも(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%8B%9B)、
会意兼形声文字です(艸+可)。「並び生えた草」の象形と「口と口の奥の象形」(口の奥から大きな声を出すさまから「良い」の意味だが、ここでは、「呵(カ)」に通じ(同じ読みを持つ「呵」と同じ意味を持つようになって)、「大声で責める」の意味)から、「大声で責める」、「厳しくする」を意味する「苛」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji2098.html)。
(「苛」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji2098.htmlより)
「斂」(レン)は、
会意兼形声。僉(セン ケン)は、多くの物を壺に寄せ集めたさまを象形文字。のちに「集めるしるし+二つの口+二人の人」の会意文字で示し、寄せ集めることを示す。のち、「みな」の意の副詞に転用された。斂は「攴(動詞の記号)+音符僉」で、引き絞ってあつめること、
とあり(漢字源)、「収斂」というように使う。
(「斂」 金文・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%96%82より)
「誅」(チュウ)は、
会意兼形声。「言+音符朱(ばっさりと木の株を切る)」で、相手の罪を言明してばっさりと切り殺すこと、
とある(漢字源)。「罪不容誅」(罪誅を容されず)、「誅伐」「筆誅」等々、死刑や、滅ぼす、責めるという意である。
別に、
会意形声、「言」+音符「朱」。「朱」はまさかりで木を伐ることを象った指事文字で、「言」を合わせて罪を「せめる」こと、罪をせめて「ころす」こと、
とある(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%AA%85)。この方が、意味がクリアな気がする。
「求」(漢音キュウ、呉音グ)は、
象形。求の原字は、頭や手足のついた動物の毛皮を描いたもの。毛皮はからだに引き締めるようにしてまといつけるので、離れたり散ったりしないように、ぐいと引き締めること。裘(キュウ 毛皮)はその原義を残した言葉、
とある(漢字源。)「もとめる」「散らないように引き締める」意で、「求心」「追求」「探求」等々と使う。別に、
象形。かわごろもを腰で締める様子、又は丸めて運ぶこと。「裘」の原字。皮衣をぎゅっとまとめる。「まとめる」ことから、自分の下に引き寄せるなどの意が生じた、
とある(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%B1%82)のが、よく意図がわかる。
別に、
象形文字です。「裂いた毛皮」の象形から「皮衣(レザージャケット)」の意味を表しましたが、借りて(同じ読みの部分に当て字として使って)、「もとめる」を意味する「求」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji711.html)。
(「求」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%B1%82より)
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
簡野道明『字源』(角川書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95