2021年10月30日

あごえ


「あごえ」は、

けずめ(蹴爪)、

の古名である。ただ、

あごえ(岩波古語辞典・広辞苑)、
あこえ(大言海)、

と、訓みに清濁の差がある。

大(おほ)きなる雄鶏を以て、呼びて己が鶏と為て、鈴、金の距(アコエ)を着けて、競ひて闘は令む(雄略紀)、

と、

距、

と当てる(広辞苑)。奈良時代末の成立の『八十巻華厳経音義』(新訳華厳経音義私記)には、

所拒、安後延(あごえ)、

とある(岩波古語辞典)が、平安後期の漢和辞書『字鏡』(じきょう)には、

距、足角也、阿古江、

和名類聚抄(平安中期)には、

距、鶏雉脛、有岐(また)也、阿古江、

類聚名義抄(11~12世紀)には、

距、アコエ、コユ、

とある(大言海)。

アは足、コエは蹴るの意のコユの名詞形、

とあり(岩波古語辞典・大言海)、

足掻(あしかき)、あがく、

同趣の転訛とみられる(大言海)。「あ」は、

足、

で、

足(あ)の音せず行かむ駒かもが葛飾(かつしか)の真間(まま)の継橋(つぎはし)やまず通はむ(万葉集)、

と使われるが、

足占(あうら)、足結(あゆい)など、多く下に他の語を伴って複合語をつくる、

とある。

足掻く、

などもそれだろう。「こゆ」は、

蹴、

と当て、

越ゆと同根、足の先を上げるのが原義、

とある(大言海)、「越ゆ」は、

コユ(蹴)と同根、目的物との間にある障害物をまたいで、一気に通り過ぎる意、

ともある(岩波古語辞典)が、類聚名義抄(11~12世紀)には、

蹴、化(け)ル、クユ、コユ、

とあり(仝上)、

蹴(く)ゆ、蹴(け)るに同じ、

とある(大言海)。「くゆ(蹴)」は、

けるの古語、

とあり、

くう(蹴)の転(移(うつ)る、ゆつる)、又、転じて、コユとなる(黄金(こがね)、くがね。いづく、いずこ)、

とある(仝上)。「くう(蹴)」は、

クユル、コユルと転じ、口語調に、クヱル、クエルとなり、また約まりて、ケルとなる(大言海)、
クヱル(蹴)の語は、クヱ[k (uw)e]の縮約でける(蹴る)という下一段動詞になった(日本語の語源)、

とある(仝上)。古形、

くゆ、

が、

け(蹴)、

に転じたようだが、

ケ(蹴)の古形コユとクユとが平安時代に混交したものか、

とある(岩波古語辞典)。つまり、

(くう→)くゆ、こゆ→くゆる、こゆる→くゑる、くえる→ける、

といった転訛をしたことになるが、

帯刀どもして蹴させやましと思ひしかと(大鏡)、
殿上人、鞠けさせて御覧ずる(栄花物語)、

などと、

古形くゆ(蹴)の転(岩波古語辞典)、
古音くゑの約(大言海)、

である、

け(蹴)、

で使われる状態があり、「くゆ」からの転訛のどこかで、

く(ゆ)→け、

の転訛があり、「ける(蹴)」へと変化ししやすかったことになる。

「けづめ」は、

蹴爪、
距、

と当てるが、

キジやにわとりなどの脚のやや上部に後ろ向きに生えた鋭い突起、

であり、

ウシ・ウマなどの脚の後方にある小さい趾(あしゆび)で、地にふれないもの、

をも指す(広辞苑)。鳥の場合、

鳥類の趾では、第5趾が完全に退化しており、基本は4本の趾を持つ。第1趾が後方を向く形が多く、これは木の枝を掴む際に好都合な形状をしている、

とありhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%BE_%28%E9%B3%A5%E9%A1%9E%29、第1趾指す。

「距」 漢字.gif


「距」(漢音キョ、呉音ゴ)は、

会意兼形声。巨(キョ)は、I型の定木にとってのついた姿を描いた象形文字で、上下の幅がIの間隔だけあいていること。距は「足+音符巨」で、他の四本の指との間がへだたったけづめ。転じて、両端の間がひろくあいていること、

とある(漢字源)。「距爪(キョソウ)」と、距の意であり、「距離」と隔ての意である。

「距」 成り立ち.gif

(「距」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji1143.htmlより)

別に、

形声文字です(足+巨)。「人の胴体の象形と立ち止まる足の象形」(「足」の意味)と「とってのあるさしがね」の象形(「さしがね、大きい」の意味だが、ここでは、「去(キョ)」に通じ(同じ読みを持つ「去」と同じ意味を持つようになって)、「しりぞける」の意味)から、「へだてる」、「距離を置く」を意味する「距」という漢字が成り立ちました、

とする解釈もあるhttps://okjiten.jp/kanji1143.html

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:あごえ
posted by Toshi at 04:36| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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