加之、以吹毛之咎、損土民等(しかのみならず、吹毛の咎を以て、土民らを損ねる)、
とある(貞応元年(1222)の関東御教書)、「吹毛(すいもう)の咎(とが)」とは、
をりふしにつけては、吹毛の咎を争うて、讒を構ふること休む時なし(太平記)、
というように、
取るに足らない欠点、
を咎めだてる意だが、「吹毛」とは、
毛を吹いて疵を求める、
とか、
毛を吹いて過怠の疵を求む、
などという諺の、
毛を吹いて隠れた疵を求める、
つまり、
好んで人の欠点を指摘する、
あるいは、
他人の弱点を暴いて、かえって自分の欠点をさらけ出す、
意から来ていて(故事ことわざの辞典)、
吹毛求疵(すいもうきゅうし)、
吹毛之求(すいもうのもとめ)、
洗垢索瘢(せんこうさくはん)、
披毛求瑕(ひもうきゅうか)、
等々という四文字熟語ともなっている(新明解四字熟語辞典)。出典は、
不吹毛而求小疵、不洗垢而察難知(韓非子)、
とある(故事ことわざの辞典)。
「吹毛(すいもう)」とは、だから、
毛を吹いて隠れた傷をもとめるような、あらさがし、
の意である(広辞苑)。
吹毛の難、
も、
翁が心の中に思ふ事をありのままに申せば、さだめて吹毛の難もおほく侍らん(「筑波問答(1357‐72頃)」)、
と、
取るに足らない欠点を探し出し、非難する、
意となる(仝上)。
ただ、「吹毛」は、文字通り、
毛を吹く、
意であり、
きわめてたやすいことのたとえ、
として、
わけもないこと、
の意でも使う(精選版日本国語大辞典)。そして、
吹きかけた小さな毛をも切る、
意から、
吹毛の剣(けん)、
という言い方をし、
吹毛の剣を提示し、虚空を載断す(太平記)、
と、
鋭利な剣、
の意でも使う。なお、
ほっす(払子)の異名、
としても、「吹毛」を使うらしい(文明本節用集)
「吹」(スイ)は、
会意。「口+欠(人の体をかがめた形)」。人が体を曲げて口から息を押し出すこと、
とある(漢字源)。別に、
「口」と「欠(あくび)」から構成され、口から息を吐くことを表す(説文)、
とも(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%90%B9)、
口と、欠(けん)(大きく口を開けたさま)とから成り、大きく息をはく意を表す、
ともある(角川新字源)。
(「吹」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%90%B9より)
「毛」(慣用モ、漢音ボウ、呉音モウ)は、
象形。細かいけを描いたもので、細く小さい意を含む、
とある(漢字源)。
別に、
象形文字です。「けの生えている」象形から「け」を意味する「毛」という漢字が成り立ちました、
ともある(角川新字源・https://okjiten.jp/kanji228.html)。
(「毛」 金文・西周 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%AF%9Bより)
参考文献;
尚学図書編『故事ことわざの辞典』(小学館)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95