2021年11月07日

吹毛の咎


加之、以吹毛之咎、損土民等(しかのみならず、吹毛の咎を以て、土民らを損ねる)、

とある(貞応元年(1222)の関東御教書)、「吹毛(すいもう)の咎(とが)」とは、

をりふしにつけては、吹毛の咎を争うて、讒を構ふること休む時なし(太平記)、

というように、

取るに足らない欠点、

を咎めだてる意だが、「吹毛」とは、

毛を吹いて疵を求める、

とか、

毛を吹いて過怠の疵を求む、

などという諺の、

毛を吹いて隠れた疵を求める、

つまり、

好んで人の欠点を指摘する、

あるいは、

他人の弱点を暴いて、かえって自分の欠点をさらけ出す、

意から来ていて(故事ことわざの辞典)、

吹毛求疵(すいもうきゅうし)、
吹毛之求(すいもうのもとめ)、
洗垢索瘢(せんこうさくはん)、
披毛求瑕(ひもうきゅうか)、

等々という四文字熟語ともなっている(新明解四字熟語辞典)。出典は、

不吹毛而求小疵、不洗垢而察難知(韓非子)、

とある(故事ことわざの辞典)。

「吹毛(すいもう)」とは、だから、

毛を吹いて隠れた傷をもとめるような、あらさがし、

の意である(広辞苑)。

吹毛の難、

も、

翁が心の中に思ふ事をありのままに申せば、さだめて吹毛の難もおほく侍らん(「筑波問答(1357‐72頃)」)、

と、

取るに足らない欠点を探し出し、非難する、

意となる(仝上)。

ただ、「吹毛」は、文字通り、

毛を吹く、

意であり、

きわめてたやすいことのたとえ、

として、

わけもないこと、

の意でも使う(精選版日本国語大辞典)。そして、

吹きかけた小さな毛をも切る、

意から、

吹毛の剣(けん)、

という言い方をし、

吹毛の剣を提示し、虚空を載断す(太平記)、

と、

鋭利な剣、

の意でも使う。なお、

ほっす(払子)の異名、

としても、「吹毛」を使うらしい(文明本節用集)

「吹」 漢字.gif

(「吹」 https://kakijun.jp/page/0749200.htmlより)

「吹」(スイ)は、

会意。「口+欠(人の体をかがめた形)」。人が体を曲げて口から息を押し出すこと、

とある(漢字源)。別に、

「口」と「欠(あくび)」から構成され、口から息を吐くことを表す(説文)、

ともhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%90%B9

口と、欠(けん)(大きく口を開けたさま)とから成り、大きく息をはく意を表す、

ともある(角川新字源)。

「吹」 甲骨文字.png

(「吹」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%90%B9より)

「毛」(慣用モ、漢音ボウ、呉音モウ)は、

象形。細かいけを描いたもので、細く小さい意を含む、

とある(漢字源)。

「毛」 漢字.gif

(「毛」 https://kakijun.jp/page/0465200.htmlより)

別に、

象形文字です。「けの生えている」象形から「け」を意味する「毛」という漢字が成り立ちました、

ともある(角川新字源・https://okjiten.jp/kanji228.html

「毛」 金文.png

(「毛」 金文・西周 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%AF%9Bより)

参考文献;
尚学図書編『故事ことわざの辞典』(小学館)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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