「堅石白馬」(けんせきはくば)は、
堅白同異(けんぱくどうい)、
堅白異同(けんぱくいどう)、
ともいい、
ただ、如来の権実(ごんじつ 方便と真実の教え)徒らに堅石白馬(ケンセキハクバ)の論となり、祖師の心印、空しく叫騒怒張の中に落つべし(太平記)、
と、
堅と石、白と馬とはそれぞれ別の概念であり、ゆえに堅石は石ではなく、白馬は馬ではない、
とする、
詭弁の論法、
をいう(兵藤裕己「太平記」注)。出典は、『史記』孟軻伝に、
公孫龍、為堅白同異之辨、
とあり(大言海)、『史記』孟子荀卿伝に、公孫龍の堅白論が載る。
堅白石三、可乎、曰、不可。二可乎、曰可。謂目視石、但見白、不知其堅、則謂之白石、手触石則知其堅而不知其白、則謂之堅石、是堅白終不可合為一也(堅白石は三とは、可なるか、曰く不可なり。二とは可なるか、曰く可なり。謂う目は石を視るに、但白きを見て、其の堅きことを知らず、則ち之を白石と謂う、手石に触るれば則ち其の堅きを知りて其の白きを知らず、則ち之を堅石と謂う。是堅白終に合して一と為るべからざる)、
と(故事ことわざの辞典)。
つまり、
堅く白い石があるとすると、目で見た時はその白いことはわかるが、堅いことはわからない。手に触れた時はその堅いことはわかるが色の白いことはわからない。故に堅石と白石とは同一のものではない(広辞苑)、
とは、昨今では、
ご飯論法、
といった詭弁があった。「ご飯論法」とは、
「朝ご飯は食べたか」という質問を受けた際、「ご飯」を故意に狭い意味にとらえ、(パンを食べたにもかかわらず)「ご飯(白米)は食べていない」と答えるように、質問側の意図をあえて曲解し、論点をずらし回答をはぐらかす手法である、
というものだが(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%94%E9%A3%AF%E8%AB%96%E6%B3%95)、要は、言葉を変えて、問題をすり替える。
似たものに、
自分の都合のいいように無理に理窟をこじつける、
意の、
牽強付会、
があるが、これに似たものに、
断章取義(だんしょうしゅぎ)、
がある。
文章の一節を取り出し、文章全体の本意と関係なく、その一節だけの意味で用いること。ひいて、自分の都合のよい引用をする、
意である。似ているようで違うのに、
郢書燕説(えいしょえんせつ)、
がある。
楚の都郢からきた手紙に対して、燕の国の人がとった解釈、
という意であるが、由来は、『韓非子』の、
郢の学者が、ある夜、燕の国の宰相に手紙を書いたが、灯火が暗いので、従者に「燭(しょく)を挙げよ」と命じ、従者は誤って「挙燭」というこのことばをそのまま、手紙に書き込んでしまった。これを読んだ宰相は、「挙燭」の語を「明(めい)を尊べ」の意(賢人を登用せよ)と誤って解し、王に進言して賢者を登用し、大いに治績をあげた、と伝える、
とあるのによる(故事ことわざの辞典)。
燕相受書而説之曰、
挙燭者尚明也。
尚明也者、挙賢而任之。
燕相白王。
王大説、国以治。
挙燭、
を、
尚明(明を尊ぶ)、
と解釈したもののようである。
韓非子は、
治則治矣、非書意也、
今世学者、多似此類、
と嘆いている(https://ameblo.jp/yk1952yk/entry-11346657378.html)。
「堅」(ケン)は、
会意兼形声。臤(ケン)は、臣下のように、からだを緊張させてこわばる動作を示す。堅はそれを音符とし、土を加えた字で、かたく締まって、こわしたり、形を変えたりできないこと、
とある(漢字源)が、別に、
土と、臤(ケン かたい)とから成り、土がかたい、ひいて、「かたい」意を表す。「臤」の後にできた字、
ともあり(角川新字源)、さらに、
会意兼形声文字です(臤+土)。「しっかり見開いた目の象形(「家来」の意味)と右手の象形」(神のしもべとする人の瞳を傷つけて視力を失わせ、体が「かたくなる」の意味)と「土地の神を祭る為に柱状に固めた土」の象形(「土」の意味)から、かたい土を意味し、そこから、「かたい」を意味する「堅」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji1243.html)。
(「堅」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji1243.htmlより)
参考文献;
兵藤裕己校注『太平記(全六冊)』(岩波文庫)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
尚学図書編『故事ことわざの辞典』(小学館)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95