「はたる」は、
徴る、
債る、
と当て、
請求する、
強く求める、
意だが、
責めたてる、
という含意が強く、
科之以千挫句置戸、遂促徴(セメハタル)矣(神代紀)
檀越(だにをち)や然もな言ひそ里長(さとをさ)が課役(えだち)徴(はた)らば汝(いまし)も泣かむ(万葉集)、
安永その宮の封戸(ふこ)をはたらむがために上野(かみつけ)の国に行(ゆ)きにけり(今昔物語)、
等々と、税などを、
取り立てる、
徴収する、
との意で使う。類聚名義抄(11~12世紀)には、
徴、ハタル、モトム、モヨホス、セム、
とあり、色葉字類抄(1177~81)には、
徴、ハタル、税、
とある(岩波古語辞典・大言海)。
「はたる」の語源は、
朝鮮語pat(徴)と同源、
としか見つからない(岩波古語辞典)。ただ、大宝律令で完成する租・庸・調の税制度そのものが、唐の制度を真似たものだから、朝鮮半島経由で、この言葉が伝わってもおかしくはないが、これ以外に言及した物がないので、何とも言いようがない。
「徴(澂)」(チョウ・チ)は、
会意。「微の略体+王」で、隠れたところで微賤(ビセン 地位・身分が低くいやしいこと)なさまをしている人材を王がみつけて取り上げることを示す、
とある(漢字源)。「徴召」等々と云い、「隠れている人材を召出す」意である。「求める」意だが、
求、乞也索也と註す、なき物を、有るやうにほしがり求め、又、さがしもとむる義にて、意広し、求友、求遺書の類、
索、さがし求むるむなり、通鑑「粱主臥浄居殿、口苦索蜜不得、遂殂」、
需・須、音義通ず。まつとも訓む、無くてはならぬと、まち求むなり。赤壁賦「以待子不時之需」、
要、まちかまえてぜひにと求むるなり。孟子「修其天爵、以要人爵」、
徴、めすとも訓む。己の方へひきつけ求める義、
と(字源)、「求める」意味の中では、「徴」は、どちらかというと、「君主または官符の召出し」の意である。その意味で、「徴税」の意につながる。
同じく、
微+王、
としているものもある(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%BE%B4)が、別に、
旧字は、会意。微(び)(は省略形。かすか)と、𡈼(てい つきでる。「壬」(ニン ふくれる)とは別字)とから成り、かすかにものが現れる意を表す。ひいて、めしだす意に用いる。常用漢字は省略形による、
とある(角川新字源)。どちらとは決めかねるが、「王」と「𡈼」では違い過ぎる気がする。さらに、
形声文字です。「十字路の左半分」の象形(「道を行く」の意味)と「植物が芽を出して発芽した」象形(「芽生え」の意味だが、ここでは、「登」に通じ(「登」と同じ意味を持つようになって)、「登用する」の意味)と「すねのまっすぐ伸びた人が地上にすくっと立つ」象形(「すぐれた人」の意味)と「ボクッという音を表す擬声語と右手の象形」(「手でうつ」の意味)から、「すぐれた人材を呼び出す」を意味する「徴」という漢字が成り立ちました。また、「取り上げるに値する証拠」の意味も表すようになりました。
との解釈もある(https://okjiten.jp/kanji1248.html)。
(「徴」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji1248.htmlより)
「債」(漢音サイ、呉音セ)は、
会意兼形声。「人+音符責(血でつぐなうべき貸し借り)」で。不整合に積み重なってきて、人を責めつける関係、つまり貸し借りの責任をいう、
とある(漢字源)。「清算していない貸借関係」の意で、「かり」「おいめ」の意である(字源)。「債券」「債鬼」「債権」「債務」等々と使う。
別に、
会意形声。人と、責(サク)→(サイ せめる、せめ)とから成り、おいめの意を表す。「責」の後にできた字、
とある(角川新字源)のが、意味が分かりやすい。別に、
会意形声。「人」+音符「責」、「責」は「貝」+音符「朿」の会意形声文字。「朿」は先のとがったとげや針で「刺」の原字。財貨の支払い・返済に関して、針などで責めるの意、
とも(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%82%B5)、
会意兼形声文字です(人+責)。「横から見た人」の象形(「人」の意味)と「とげの象形と子安貝(貨幣)の象形」(「金品を責め求める」の意味)から、借金で責められている人のさまを表し、そこから、「借り」、「負い目」を意味する「債」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji1535.html)。「責」は、
会意兼形声。朿(シ)は、先のとがったとげや針を描いた象形文字で、刺(シ さす)の原字。責は「貝(財貨)+音符朿」で、貸借について、トゲで刺すようにせめさいなむこと。債の原字、
とある(漢字源)。
(「債」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji1535.htmlより)
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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