「三会」は、
さんゑ、
と訓むが、連声して、
さんね、
とも訓ます(広辞苑)。
仏が、成道(道すなわち悟りを完成する意、悟りを開いて仏と成る意の成仏と同義)の後、衆生済度のために行う三度の大法会、
の意で、
竜華(りゅうげ)三会、
が知られる(仝上)。「竜華三会」は、
釈迦の入滅後、彌勒菩薩(弥勒菩薩)が五六億七千万年後に兜率天(兜率天)から下生(げしょう )して(人間界に下って)、龍華樹(りゅうげじゅ)の下で悟りをひらき、大衆のために三度、法を説くという説法の会座、
をいい、
龍華会、
弥勒三会、
ともいい(仝上・精選版日本国語大辞典)、
慈尊出生の暁を待つ(太平記)、
と、弥勒菩薩の異称、
慈尊、
を採って、
慈尊三会(じそんさんえ)、
とも言い(精選版日本国語大辞典)、
はや、三会の暁になりぬるやらん。いでさらば、八相成道(はっそうじょうどう この世に下生して、悟りを得て仏となり、釈迦がこの世に下生して経験した八つの姿を八相という)して、説法利生(衆生を救うこと)せんと思ひて(太平記)、
と、
三会の暁、
竜華三会の暁、
華三会の時、
竜華会の朝、
竜華下生の暁、
などとも呼ぶ。「暁」とは、
釈迦寂滅後の闇黒を破って弥勒が世に現われるからいう、
とある(岩波古語辞典)。
阿弥陀信仰が盛んになる前は、この当来仏信仰が広く信じられていた、
とあり(http://www.wikidharma.org/index.php/%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AD)、
釈迦が滅した56億7千万年(57億6千万年の説あり)の未来に姿をあらわす為に、現在は、兜卒天で修行していると信じられている。このため、中国・朝鮮半島・日本において、弥勒菩薩の兜率天に往生しようと願う信仰が流行した、
とある(http://www.wikidharma.org/index.php/%E3%81%BF%E3%82%8D%E3%81%8F)。
この「三会」に因んで、
南京(奈良)で行なわれた三大法会。興福寺の維摩会(ゆいまえ)、薬師寺の最勝会、宮中大極殿の御斎会(ごさいえ)の三つをいう(また、興福寺の維摩会と法華会に薬師寺最勝会を加えていう)、
南都三会(奈良の三会)、
さらに、天台宗における三つの大きな法会、
円宗寺の法華会と最勝会、法勝寺の大乗会の三つ、
を、
北京(京都)の三会、
と呼んだりする(広辞苑・精選版日本国語大辞典)。
「三」(サン)は、
指事。三本の横線で三を示す。また、参加の參(サン)と通じていて、いくつも混じること。また杉(サン)、衫(サン)などの音符彡(サン)の原形で、いくつも並んで模様を成すの意も含む、
とある(漢字源)。また、
一をみっつ積み上げて、数詞の「みつ」、ひいて、多い意を表す、
ともある(角川新字源)。
(「三」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E4%B8%89より)
「會(会)」(漢音カイ、呉音エ・ケ)は、
会意。「△印(あわせる)+會(増の略体 ふえる)」で、多くの人が寄り集まって話をすること、
とある(漢字源)が、
会意。曾(こしき)にふたをかぶせるさまにより、「あう」、ひいて「あつまる」意を表す、
とも(角川新字源)、
象形文字です。「米などを蒸す為の土器(こしき)に蓋(ふた)をした」象形から土器と蓋(ふた)が、うまく「あう」を意味する「会」という漢字が成り立ちました(https://okjiten.jp/kanji257.html)、
ともあり、「會」の字源としては、
象形説、ふたのある鍋を象り、いろいろなものを集め煮炊きする様を言う(白川)、
会意説、「亼」(集める)+「曾」(「増」の元字)多くの人が寄り集まることを意味する(藤堂)、
があることになる(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E4%BC%9A)。
(「會」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E4%BC%9Aより)
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95