2021年12月14日

屈強


「屈強(くっきょう)」は、

強情で、人に屈しないこと、

であるが、

倔強、

とも当てる。

きわめて力が強いこと、
頑丈なさま、

の意である(デジタル大辞泉)。漢書・匈奴伝に、

楊信、為人剛直屈強、

とあり、

剛直の貌、
従順ならざる貌、

とあり(字源)、

檜曰、此老倔強猶昔(宋史)、

と、

倔強、

とも、

孟知祥倔彊於蜀(五代史)、

と、

倔彊、

とも、

迺欲以新造未集之越屈彊於此(史記)、

と、

屈彊、

とも当て、

崛彊、

とも同じとある(字源)。原意は、ただ、

強い、
頑丈、

というよりは、

頑強、
強情、

の含意が強い気がする。「くっきょう」は、

究竟、

とも当て、

六千余騎こそこもれけり、もとより究竟の城郭なり(太平記)、

と、

きわめて力の強いこと、
堅固、

の意で使い、

この場合は、

屈強、

とも当てる。しかし、本来、「究竟」は、

くきょう、

と訓ませ、

くっきょう、

は、

その急呼(促音化)、

とある(広辞苑・大言海)。「究竟(くきょう)」は、

クは呉音、

とある(仝上)。これも漢語のようであり、「究竟」は、漢音では、

キュウキョウ、

と訓ませ、

流覧徧照、殫變極態、上下究竟(後漢書・馬融伝)、

とあり、

つまるところ、

の意で、

畢竟、
究極、
窮竟、

と同義である(字源)。室町時代の意義分類体の辞書『下學集』にも、確かに、

究竟(クキャウ)、必竟之義也、

とあり、「必竟」は、

畢竟(ひっきょう)、

の意で、

梵語atyantaの訳。「畢」も「竟」も終わる意、

とあり(精選版日本国語大辞典)、

つまるところ、

の意だが、

究竟は理即にひとし、大欲は無欲に似たり(徒然草)、

と、

物の究極に達したところ、

の意でも使われ、日葡辞書(1603~04)には、

クッキャウノジャウズ、

と載り、

極めて優れていること、

の意で、

金武と云ふ放免あり、究竟の大力(源平盛衰記)、

とも使われる。憶測だが、仏語で、

一切の法を悟りつくした境地、
天台宗でいう六即の最高位、

の意で、

究竟即、

といい、その略として、

究竟、

を使ったため、その転化として、

主従三騎究竟の逸物どもにて(平治物語)、

と、

卓越していること、

の意で使われ、音が、

クキョウ→クッキョウ、

と転訛し、音が重なる、

倔強、
屈強、

の、

きわめて力が強いこと、

の意と重なったのではあるまいか。

「退屈」http://ppnetwork.seesaa.net/article/484531850.html?1637784119で触れたように、「屈」(漢音クツ、呉音クチ)は、

会意。「尸(しり)+出」で、からだをまげて尻を後ろにつき出すことを示す。尻をだせばからだ全体はくぼんで曲がることから、かがんで小さくなる、の意ともなる。出を音符と考える説もあるが、従い難い、

とある(漢字源)。しかし、

形声。意符尾(しっぽ。尸は省略形)と、音符出(シユツ)→(クツ)とから成る。短いしっぽ、転じて、くじく意を表す、

とか(角川新字源)、

会意文字です(尸(尾)+出)。「獣のしりが変形したもの」と「毛がはえている」象形と「くぼみの象形が変形したもの」から、くぼみに尾を入れるさまを表し、そこから、「かがむ」、「かがめる」を意味する「屈」という漢字が成り立ちました、

とする解釈もあるhttps://okjiten.jp/kanji1192.html

「倔」 漢字.gif


「倔」(漢音クツ、呉音ゴチ)は、

会意兼形声。屈は、伸の反対で、曲がって低くかがむの意を含む。倔は「人+音符屈」で、かがんでいるが底力のあること、

とある(漢字源)。「ずんぐりして芯の強いさま」の意で、「倔強」と使う。

「究」 漢字.gif


「究」(漢音キュウ、呉音グ)は、

会意兼形声。九は、手が奥に届いて曲がったさま。十進法の序数のうち、最後の行き詰まりの数を示すのに用いる。究は「宀(あな)+音符九」で、穴の奥底の行き詰まるところまで探ることを示す、

とあり(仝上)、「究奥義」と、「きわめる」意である。

「究」 説文解字.png

(「究」 説文解字・漢 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%A9%B6より)

別に、

会意兼形声文字です(穴+九)。「穴居生活の住居」の象形と「屈曲して尽きる」象形(「尽きる」、「きわまる」の意味)から穴を「つきる・きわめる」を意味する「究」という漢字が成り立ちました、

との解釈もあるhttps://okjiten.jp/kanji472.html

「彊」 漢字.gif


「彊」(漢音キョウ、呉音コウ、ゴウ、キョウ)は、

会意兼形声。右側の字(キョウ)は、田の間にくっきりと一線で境界を付けることを示し、かたく張ってけじめの明らかな意を含む。彊はそれを音符とし、弓を加えた字で、もと弓が堅く張ったこと。転じて、広く丈夫で堅い意に用いる、

とある(漢字源)。「強弓」の意(字源)とあり、丈夫で力がこもっている、意とある(漢字源)。「強」と同義である。

「强」 漢字.gif


「強(强)」(漢音キョウ、呉音ゴウ)は、

会意兼形声。彊(キョウ)はがっちりとかたく丈夫な弓、〇印はまるい虫の姿。強は「〇印の下に虫+音符彊の略体」で、もとがっちりしたからをかぶった甲虫のこと。強は彊に通じて、かたく丈夫な意に用いる、

とある(漢字源)。中国最古の字書『説文解字』(後漢・許慎)には、

強、蚚也、从虫弘聲……

とあり、「蚚」は、

コクゾウムシという、固い殻をかぶった昆虫の一種を表す漢字だ、とされています。つまり、「強」とは本来、コクゾウムシを表す漢字であって、その殻が固いことから、「つよい」という意味へと変化してきた、

とありhttps://kanjibunka.com/kanji-faq/mean/q0435/

会意兼形声文字です。「弓」の象形と「小さく取り囲む文字と頭が大きくてグロテスクなまむし」の象形(「硬い殻を持つコクゾウムシ、つよい、かたい」の意味)から、「つよい」を意味する「強」という漢字が成り立ちました、

とあるhttps://okjiten.jp/kanji205.htmlのは、その流れである。

しかし、白川静『字統』(平凡社)によれば、

「強」に含まれる「虫」はおそらく蚕(かいこ)のことで、この漢字は本来、蚕から取った糸を張った弓のことを表していた、その弓の強さから転じて「つよい」という意味になった

とあるhttps://kanjibunka.com/kanji-faq/mean/q0435/。だから、「強」については、

会意。「弘」+「虫」で、ある種類の虫の名が、「彊」(強い弓)を音が共通であるため音を仮借した(説文解字他)、

または、

会意。「弘」は弓の弦をはずした様で、ひいては弓の弦を意味し、蚕からとった強い弦を意味する(白川)、

と、上記(漢字源)の、

会意形声説:。「弘」は「彊」(キョウ)の略体で、「虫」をつけ甲虫の硬い頭部等を意味した(藤堂)、

と諸説がわかれることになるhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%BC%B7#%E5%AD%97%E6%BA%90

「強(强)」 成り立ち.gif

(「強(强)」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji205.htmlより)

「竟」(漢音キョウ、呉音ケイ)は、

会意。「音+人」で、音楽の終り、楽章の最後を示す、

とある(漢字源)。

「竟」   漢字.gif


不肯竟學(あへて学を竟(お)へず)、

とある(史記)ように、「竟日」(きょうじつ 終日)と、「最後の最後までとどく」「しまいまでやりとげる」意である。

「竟」 甲骨文字.png

(「竟」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%AB%9Fより)


参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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