2021年12月18日
鷸蚌之争
「鷸蚌之争」(いっぽうのあらそい)は、
鷸蚌相挿む、
とも言い(日本大百科全書)、
鷸蚌相挟んで、烏その弊(つい)えに乗る(太平記)、
名越尾張守高家(鎌倉幕府の総大将)、戦場に於て命を墜(お)としし後、(尊氏は)始めて義卒(官軍)に与して、丹州に軍(いくさ)す。天誅命を革(あらた)むるの日、兀(たちまち)鷸蚌の弊えに乗じて、快く狼狽が行を為す(仝上)、
と、
鷸蚌の弊(つい)え、
とも言う。
漁夫の利、
と同義で、
鷸(しぎ)と蚌(はまぐり)とが争いに夢中になっている間に両方とも漁師に取られたという故事から、二人が利を争っている間に、第三者にやすやすと横取りされて、共倒れになるのを戒めた語、
とある(広辞苑)。
出典は『戦国策』の、
趙且伐燕、蘇代為燕謂惠王曰、今日臣來過易水、蚌方出暴、而鷸喙其肉、蚌合而箝其喙、鷸曰今日不雨、明日不雨、卽有死蚌、蚌亦謂曰、今日不出、明日不出、卽有死鷸、両者不肯相捨、漁者得而幷擒之、今趙且伐燕、燕趙久相支以敝大衆、臣恐強秦之爲漁父也、燕王曰、善、乃止、
である(字源)。
趙且に燕を伐たんとす。蘇代、燕の為に惠王に謂ひて曰はく、今者臣来たりて易水を過ぐ。蚌方に出でて曝す。蚌合して其の喙を箝む。鷸曰く今日雨ふらず、明日雨ふらずんば、即ち死蚌有らんと。蚌も亦鷸に謂ひて曰はく、今日出でず、明日出でずんば、即ち死鷸有らん。両者、相舎つるを肯ぜず。漁者得て之を并せ擒(とら)ふ。今趙且に燕を伐たんとす。燕と趙久しく相支へ、以て大衆を敝れしめば、臣強秦の漁父と為らんことを恐るるなり。故に王の之を熟計せんことを願ふなり、
と(https://tactical-media.net/%E9%B7%B8%E8%9A%8C%E3%81%AE%E4%BA%89%E3%81%84/)、その諫言に従い、出兵をやめた。
漁夫之利、
と表記される、
漁父の利、
も、同じ出典から来た。
中国語では、
鷸蚌相争、
という(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%B7%B8%E8%9A%8C%E3%81%AE%E4%BA%89%E3%81%84)、とある。
「鷸」(漢音イツ、呉音イチ)は、
会意兼形声。矞(イツ)は、素早く避けるとの意を含む。鷸はそれを音符とし、鳥を加えた字、
とある(漢字源)。「鷸蚌」と使う場合、「しぎ」の意だが、「鷸冠」と、「かわせみ」(「翡翠」ともいう)の意である。なお、「しぎ」に当てる「鴫」は、国字である。
「蚌」(慣用ボウ、漢音ホウ、呉音ボウ)は、
会意兼形声。丰(フウ、ボウ、ホン)は、三角形にあわさる意を含む。蚌はそれを音符とし、虫を添えた字で、二枚の殻の頂点があわさり、横から見て三角形をなす貝、
とあり(漢字源)、「蚌貝」というと、黒い二枚貝で、湖沼などの泥の中に棲む、からすがい、どぶがいを指し、「蚌蛤(ボウコウ)」というと、「蛤(コウ)」とも当てる、ハマグリ、を指す。
参考文献;
簡野道明『字源』(角川書店)
尚学図書編『故事ことわざの辞典』(小学館)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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