上将(静尊(せいそん)法親王)は鳩嶺(男山)に軍(いくさ)し、下臣(足利高氏)は篠村に陣す。共に瑞籬(みずがき)の影に在り、同じく擁護(おうご)の懐を出づ。函蓋(かんがい)相応せり(太平記)、
あるいは、
霊仏の威光、上人の陰徳、函蓋(かんかい)ともに相応して、奇特なりける事どもなり(太平記)、
と、
函蓋(かんがい)ともに相応す、
函蓋(かんがい)相応す、
は、
函蓋相応ず、
函蓋相応、
函蓋、
などともいい、
箱と蓋、
の意だが、
二者が相応ずるのに喩えて言う、
語で、
物事がよく合致する、
のにいう(広辞苑)とある。仏教で、
「機」と「法」とが相応する、
意であり、
境智冥合(きょうちみょうごう)すること、
あるいは、
仏の説いた法が衆生の機根にあっていること、
など、
二物が能く相和するたとえ、
として用いられる。「境智冥合」とは、
境と智が融合した一体の境界をいいます。境とは所観の対象であり、主観に対する客観世界をいい、智とは境を観察する能観の智慧、すなわち認識する心の作用としての主観的世界をいいます、
とある(http://monnbutuji.la.coocan.jp/yougo/4/461a.html)。「機根」を見極めて法を説ける境地ということであろうか。「機根」は、「根機」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/484995810.html)で触れたように、
根機、
とも、
機、
ともいい、
一般の人々に潜在的に存在し、仏教にふれて活動しはじめる一種の潜在的能力のこと、
の意であり(ブリタニカ国際大百科事典)、仏教においては、
弟子や衆生のこの機根を見極めて説法することが肝要で、非常に大事である、
とされ(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A9%9F%E6%A0%B9)、各種経典において、
利根(りこん) - 素直に仏の教えを受け入れ理解する人、
鈍根(どんこん) - 素直に仏の教えを受け入れず理解しにくい人、
などとも説かれている(仝上)。
阿弥陀仏は、すべての人を「逆謗(ぎゃくほう)」(五逆の罪を犯したもの これを「真実の機」)とみて、それを助けようと本願を建てられています。……「逆謗」とは絶対助からないものということです。それなのに私たちは、何とかしたら何とかなれると思っています。だから、本願と合わないのです。それが、金輪際助からない逆謗であった、と知らされた時、本願と相応します。蓋と身がピッタリあいます。ところが私たちは、何とかしたら何とかなれると自惚れているから、願に相応せず、いつまでたっても流転を重ねるのです。「相応」とは、蓋と身がピタッとあったことです。本願でいうなら、逆謗の機と、それを助ける本願の法がピタッと一致した時、
とある(https://xn--vuqrjl75e.com/44kyoki.html)のが、仏教でいう、
函蓋相応ず、
ということらしい。大智度論には、
不増不減是名相應譬如函蓋大小相稱雖般若波羅蜜滅諸觀法而智慧力故名爲無所不能無所不觀能如是知不墮二邊是爲與、
とある。
不増不減是名相應譬如函蓋、
である。
「函」(漢音カン、呉音ゴン)は、
象形。矢をはこの中に入れた姿を描いたもの、
とあり(漢字源)、ひいて「いれる」、また、「はこ」の意に用いる(角川新字源)。
(「函」甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%87%BDより)
「蓋」(慣用ガイ、漢音呉音カイ、コウ、ゴウ)は、
会意兼形声。盍(コウ)は「去+皿」の会意文字で、皿にふたをかぶせたさま、かぶせること。蓋は「艸+音符盍」で、むしろや草ぶきの屋根をかぶせること、
とあり(漢字源)、草のふた、ひいて「おおう」意を表す。「盍」の後にできた字。借りて、助字に用いる(角川新字源)、とある。別に、
会意兼形声文字です(艸+盍)。「並び生えた草」の象形と「覆いの象形と食物を盛る皿の象形」(「覆う」の意味)から、「草を編んで作った覆い」、「覆う」、「かぶせる」、「ふた」、「覆い」を意味する「蓋」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji2099.html)。
(「蓋」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji2099.htmlより)
参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
参考文献;
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95