2022年03月10日

童女


「童女」は、

どうじょ、

と訓ませると、

女児、
幼女、

の意味だが、

大甡(おおにえ)の祭(大嘗會)を行はるる程に、悠紀(ゆうき)・主基(すき)に風俗の歌を唱へて帝徳を称じ、童女(いむこ)の者ども、稲舂歌(いなつきうた)を歌ひて神饌を奉る(太平記)、

と、

いむこ、
あるいは、
いんご、

と訓ますと、

清浄な童女、

と注記(兵藤裕己校注『太平記』)されるが、

斎子、
忌子、

とも当て、

斎戒して神の祭に奉仕する未婚の少女、

の意であり、

大嘗祭、
賀茂の齋院に奉仕する、

とある(広辞苑)。上記の引用との関係でいうと、

斎子八女(いむこやめ)、

というと、

大嘗会のいなのみの翁、いんこや女とかや。色々のものの装束の衣、色々のそめ草、花、くれなゐなど参らせたり(「中務内侍(1292頃)」)、

と、

大嘗祭の時、稲舂(いねつき)歌を詠う八人の童女、

の意で、

いむこやおとめ、

とも訓む(広辞苑)。「いむこ」は、

いみこの音便、

である(大言海)。色葉字類抄(1177~81)には、

忌子、イムコ、大嘗會供奉人名也、

とあり、齋院司式には、

給兩社禰宜祝及斎子等禄、

とある(仝上)。「斎子」を、

いつきこ、

とも訓ませ、「いむこ」と同様、

神の祭に奉仕する清浄な童女。特に即位や大嘗会(だいじょうえ)の時に奉仕する女子の司(つかさ)。また、賀茂別雷神社に奉仕する童女、

の意でもある。また「斎子」を、

いわいこ、

と訓ませても、

錦綾の中に裹(つつ)める斎児(いはひこ)も妹に及(し)かめや(万葉集)、

と、

大事にかしずき育てる子、

の意味もあるが、

けがれをきよめ、仮に神にささげる子、

の意味となり、

いつきこ、

と訓ませると、平安末期『色葉字類抄』に、

松尾、……本朝文集云、大宝元秦都理始建立神殿、立阿礼居斉子供奉、

とあり、やはり、

神に奉仕する少女、

を指し、特に、松尾神社でいい、

斎女(いつきめ)、

ともいう(精選版日本国語大辞典)。

「いはふ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/482573356.html、「いむ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/463067059.htmlで触れたように、

忌む、
齋む、

と当てる「いむ」は、

齋(イ)を活用、

した語であり、「齋」(い)は、

神聖であること、

の意であり、

ユユシなどのユの母音交替形、

である。「いむ」も、本来、

凶穢(けがれ)を浄め、慎む。神に事ふるに云ふ、

の、

齋(い)む、

が先で、それ故、

禁忌(タブー)、

の意から、

忌む、

の、

穢れを避け、嫌う、

意になった(大言海)。

神聖なもの・死・穢れたものなど、古代人にとって、はげしい威力をもつ触れてはならないもの、

となった(岩波古語辞典)のである。だからこそ、

汚さぬように潔斎して、これを護り奉仕する、

必要があるのである。

「童」 漢字.gif


「おおわらわ」http://ppnetwork.seesaa.net/article/484158438.htmlで触れたように、「童」(慣用ドウ、漢音トウ、呉音スウ)は、

会意兼形声。東(トウ 心棒を突き抜けた袋、太陽が突き抜けてくる方角)はつきぬく意を含む。「里」の部分は、「東+土」。重や動の左側の部分と同じで、土(地面)つきぬくように↓型に動作や重みがること。童は「辛(鋭い刃物)+目+音符東+土」で、刃物で目を突きぬいて盲人にした男のこと、

とあり(漢字源)、「刃物々目を突きぬいて盲人にした奴隷」の意とあり、僕と同類で、「童僕」(男の奴隷や召使)と使うが、「童子」というように「わらべ」の意もある。別に、

形声。意符辛(入れ墨の針。立は省略形)と、音符重(チヨウ)→(トウ)(里は変わった形)とから成る。目の上(ひたい)に入れ墨をされた男子の罪人の意を表す。借りて「わらべ」の意に用いる、

ともあり(角川新字源)、

会意兼形声文字です(辛+目+重)。「入れ墨をする為の針」の象形と「人の目」の象形と「重い袋」の象形から、目の上に入れ墨をされ重い袋を背負わされた「どれい」を意味する「童」という漢字が成り立ちました。転じて(派生して・新しい意味が分かれ出て)、「未成年者(児童)」の意味も表すようになりました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji530.html

「斎」 漢字.gif


「齋(斎)」(とき)http://ppnetwork.seesaa.net/article/460543513.htmlで触れたが、「齋」(漢音セイ、呉音セ)は、

会意兼形声。「示+音符齊(きちんとそろえる)の略体」。祭のために身心をきちんと整えること、

とある(漢字源)。別に、

会意兼形声文字です(斉+示)。「穀物の穂が伸びて生え揃っている」象形(「整える」の意味)と「神にいけにえを捧げる台」の象形(「祖先神」の意味)から、「心身を清め整えて神につかえる」、「物忌みする(飲食や行いをつつしんでけがれを去り、心身を清める)」を意味する「斎」という
漢字が成り立ちました、

とあるhttps://okjiten.jp/kanji1829.html

「忌」 漢字.gif


「忌」(漢音キ、呉音ゴ)は、

会意兼形声。己(キ)は、はっと目立って注意を引く目印の形で「起」(はっと立つ)の原字。忌は「心+音符己」で、心中にはっと抵抗が起きて、素直に受け入れないこと、

とあり(漢字源)、「忌嫌」(きけん)というように、「嫌」「厭」と類義である。そこから「忌憚」というように「はばかる」意になる。別に、

形声。心と、音符己(キ)とから成る。にくむ、うらむ意を表す(角川新字源)、

会意兼形声文字です(己+心)。「三本の横の平行線を持つ糸すじを整える糸巻き」の象形(「糸すじを整える」の意味)と「心臓」の象形から、心を整える事を意味し、「かしこまる」、「いむ」を意味する「忌」という漢字が成り立ちましたhttps://okjiten.jp/kanji1499.html

とする解釈もある。

「忌」 成り立ち.gif

(「忌」 成り立ち https://okjiten.jp/kanji1499.htmlより)

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:36| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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