申すに及ばぬ処なれども、竹園(ちくえん)摂家の外(ほか)、未だ准后の宣旨を下されたる例なし(太平記)、
に、
竹園、
を、
ちくえん、
と訓ませるのは、漢語の音読みで、
孝王、竇太后少子也、愛之、賞賜不可勝道、於是、孝王築東苑、方三百余里、卽免園也、多植竹、中有修竹園(史記・梁孝王世家)、
とあり(字源)、
修竹園、
と名づけたといい、その註に、
正義曰、……俗人言梁孝王竹園也、
とあり(大言海)、文字通り、
竹の生えている園、
の意だが、この故事により、
親王、皇子の異称、
皇族、
を意味する。
和語では、
たけのその、
と訓ませ、
つたへきて世々にかはらぬ竹のその身にうきふしを残さずもがな(「新千載集(1359)」)、
と、文字通り、
竹の生えている園、
竹藪。
の意でも使うが、
朝日かげさし栄えゆく竹の園(たけのその)千代に八千代になほぞ重ねん(夫木抄)、
と
竹の園、
あるいは、
竹の園生の末葉まで、人間の種ならぬぞ、やんごとなき(徒然草)、
と、
竹の園生(たけのそのふ)、
とも、
竹生(たかふ)、
ともいい(大言海)、室町末期の国語辞書『匠材集(しょうざいしゅう)』(慶長二年(1597)成立)に、
竹の園、親王の名なり、竹園、
とあるように、
天子の子、
親王、
の雅語として使う(岩波古語辞典・大言海)。
「竹生」も、
并せて竹村(タカフ)の地(ところ)を奉献りつ(書紀・安閑紀)、
と、文字通り、
竹の生えた所、
の意で、
竹やぶ、
竹林、
を指す(広辞苑・精選版日本国語大辞典)。
「竹」(漢音・呉音チク、唐音シツ)は、
象形。たけの枝の二本を描いたもの。周囲を囲むの意を含む、
とある(漢字源)が、
象形。たけの葉が垂れ下がっているものを象る、
の方が正確のようである(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%AB%B9)。
(「竹」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%AB%B9より)
「園」(漢音エン、呉音オン)は、
会意兼形声。袁(エン)は、ゆったりとからだを囲む衣。園は「囗(かこし)+音符袁」、
とある(漢字源)。別に、
形声。囗と、音符袁(ヱン)とから成る。果樹・野菜などを植える「その」の意を表す、
とも(角川新字源)、
形声文字です。「周辺を取り巻く線」(「囲(かこ)い」の意味)と「足跡・玉・衣服」の象形(衣服の中に玉を入れ、旅立ちの安全を祈るさまから、「遠ざかる」の意味だが、ここでは、「圜(えん)」に通じ(同じ読みを持つ「圜」と同じ意味を持つようになって)、「巡る」の意味)から、囲いを巡らせた「その」を意味する「園」という漢字が成り立ちました、
とも(https://okjiten.jp/kanji270.html)ある。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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