2022年04月02日

づたづた


尊(みこと)、剣を抜いて、大蛇を寸々に切り給ふ(太平記)、



寸々は

づたづた(ずたずた)、

と訓ませ、

細かく乱雑に切り裂かれたさま、
寸断、
きれぎれ、

の意(広辞苑)で、「づたづた」には、「寸々」以外にも、

寸々  36.8%
寸断寸断 21.1%
寸断々々 21.1%
寸断 15.8%
寸裂 5.3%、

と、さまざま漢字を当てるようだhttps://furigana.info/r/%E3%81%9A%E3%81%9F%E3%81%9A%E3%81%9F

「づたづた」は、また、

武乙(ぶいつ 殷の帝、紂王の曾祖父)、河渭(かい 渭水)に猟(かり)し給ひける時、俄に雷(いかずち)落ち懸かり、御身を分々(つだつだ)に引き裂いてぞ捨てたりける(太平記)、

と、

切れ切れになるさま、
ずたずた、

の意で、

つだつだ、

ともいうが、「づたづた」は、

つだつだの転、

で、

づだづだ、

ともいう(岩波古語辞典)とあり、類聚名義抄(11~12世紀)に、

寸、つたつた、つだつだ、きだきだ、

とあり(仝上・大言海)、

日葡辞書(1603~04)には、

ヅダヅダニナル

とある(仝上)ので、

つたつた→つだつだ→づだづだ→づたづた、

といった転訛なのかもしれない。さらに、

悲膓寸々断、何日下生還(「経国集(827)」)、

と、「寸々」を、

づんづん(ずんずん)、

とも訓ませ、

物を細かく切るさま、
きれぎれ、
ずたずた、
ばらばら、

の意で使う。もっとも、「ずんずん」は、

雪がずんずん積もる、

と、

速くはかどる意や、

頭がづんづん痛む、

と、

づきづき、

の意でも使い、これは別由来かもしれないが、「づんづん」には、

一寸ごとに、

の意味もあるようなので(精選版日本国語大辞典)、

空間的なずたずた、

が、

時間的なずたずた、

に転じて、

少しずつ、

となり、

はかどる、

意になったと考えれば、必ずしも別語源とは限らないかもしれない。

「づたづた」の語源説には、

ズタ(破れ 擬態語)の繰り返し(日本語源広辞典)、
つたつたの転じた語スタスタの転(大言海)、
スタスタ(寸断寸断)の義(言元梯)、

などがあるが、類聚名義抄(11~12世紀)に、

段、つたつた、つたきる、

とあり、

細かく切れ切れに、

の意で、

つたつた、

という擬態語があった、と見るのが妥当な気がする。それが、

つたつた→つだつだ→づたづた→づだづだ、

と転訛した。

「寸」 漢字.gif

(「寸」 https://kakijun.jp/page/0324200.htmlより)

「寸」(漢音ソン、呉音ソン)は、

会意。寸は「手のかたち+一印」で、手の指一本の幅のこと。一尺は手尺の一幅で、22.5センチ。指十本の幅がちょうど一尺にあたる。また漢字を組み立てる時には、手、手をちょっとおく、手をつけるなどの意味をあらわす、

とあり(漢字源)、

象形文字。手を当てて物の長短を測る様を象る。手で測れるほど長くないという短さから「みじかい」という意味になった。「尊」の略体。のち仮借して{寸 /*tshuuns/}に用いる、

ともhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%AF%B8あるが、別に、

指事。手の象形文字(=又。て)の下部に一点を加えて、手首の脈搏(みやくはく)をはかる意を表す。また、手のひらの付け根から手首の脈までの間を基準にして、長さの単位の一寸とする、

とも(角川新字源)あり、

指事文字です。「右手の手首に親指をあて、脈をはかる事を示す文字」から、脈を「はかる」を意味する「寸」という漢字が成り立ちました。また、親指ほどの長さ、「一尺の十分の一の単位」も表すようになりました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji950.htmlのは、別の解釈である。

「寸」 金文・西周.png

(「寸」 金文・西周 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%AF%B8より)

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

【関連する記事】
posted by Toshi at 04:26| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください