2022年04月06日

斗藪


諸国の斗藪畢(おわ)りて、禅門、鎌倉に帰り給ひければ(太平記)、
僧を一人御倶(とも)にて、山川斗藪のために立ち出でさせ給ふ(仝上)、

と、

斗藪(とそう)、

とあるのは、

角(かく)て抖擻(トソウ)修業の後再(ふたたび)高雄の辺に居住して(源平盛衰記)、

と、

抖擻、
抖藪、

等々とも当て、

とすう、

とも訓ませ(精選版日本国語大辞典)、

頭陀(づだ)、

の漢訳語であり、

修治(しゅうじ)、
棄除(きじょ)、

とも表記する、

身心を修錬して衣食住に対する欲望をはらいのけること、また、その修行。これに十二種を数える、

意(精選版日本国語大辞典)とあり、つまり、

僧の、旅行して、行く行く食を乞ひ、露宿などして、修行する、

ことだが(大言海)、禅宗では、

行脚(あんぎゃ)、

といい、時宗で、

遊行(ゆぎょう)、

というのもこれに当たる(仝上)、とある。冒頭引用にある「山林斗藪(抖擻)」は、

山林斗藪の苦行、樹下石上の生臥、これみな一機一縁の方便、権者権門の難行なり(「改邪鈔(1337年頃)」)、

と、

山野に寝て、不自由に堪えながら、仏道修行に励む、

意になる(精選版日本国語大辞典)。

「頭陀(ずだ・づだ)」は、

梵語ドゥータ(dhūta)、

の音訳。

頭陀者、漢言抖擻煩悩、離諸滞着(四分律行事鈔)、

と(抖擻はふるい落とす意)、

払い除くの意、

で、

頭陀此應訛也、正言杜多、譯云洮汰、言大灑也、舊云抖擻、一義也(玄應音義)、



杜多、

とも訳す(大言海)。「頭陀」は、

頭陀支(ずだし)、
頭陀行(ずだぎょう)、

とも呼ばれ、

衣食住に対する欲求などの煩悩を取り除く、

意味でhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jeb1947/1980/129/1980_129_L88/_pdf/-char/ja

世尊爾時以此因縁集比丘僧、為諸比丘随順説法、無数方便讃歎頭陀端嚴少欲知足楽出離者(四分律)、

と、仏陀も頭陀行をすることを賞賛していた、とある(仝上)。上記、「十二頭陀」(じゅうにずだ)とは、

仏道修行者が守るべき衣食住に関する一二の基本的規律、

で、

衲衣(納衣 のうえ 人が捨てたぼろを縫って作った袈裟)・但三衣・常乞食・不作余食(次第乞食)・一坐食・一揣食・住阿蘭若処(あらんにゃ)・塚間坐・樹下坐・露地坐・随坐(または中後不飲漿)・常坐不臥、

の十二項目(顕戒論)、

ともされる(精選版日本国語大辞典)が、

十二または十三の実践項目、

とし、

糞掃衣(ふんぞうえ 捨てられた布片を綴りあわせて作られた衣を着用する)、
但三衣(たんざんえ 三衣一鉢(さんえいっぱつ)、大衣・上衣・中着衣の三衣のみを着用する)、
持毳衣(じぜいえ 毛織物で作った衣のみを保持する)、
常乞食(じょうこつじき 托鉢乞食のみによって食物を得る)、
次第(しだい)乞食(行乞時には貧富好悪を選別せず、順次に行乞する)、
一食法(一日一食のみ食する)、
節量食(食を少なく、過食をしない)、
時後不食(食事の後で再び食事・飲み物を摂ってはいけない)、
阿蘭若住(あらんにゃじゅう 人里離れたところを住所とする)、
樹下坐(じゅげざ 樹の下を住所とする)、
露地坐(ろじざ 常に屋外を住所とする)、
塚間住(ちょうけんじゅう 塚墓つまり墓所の中やその近くを住所とする)、
随得敷具(ずいとくしきぐ 与えられたいかなる臥坐具(がざぐ)・住所も厭わず享受する)、
常坐不臥(じょうざふが 常に坐して横臥しない)、

などを挙げているhttp://jodoshuzensho.jp/daijiten/index.php/%E9%A0%AD%E9%99%80。「頭陀支(ずだし)」は、

パーリ(上座部仏教)系では13支、
大乗系では12支、

を立てるとあり(日本大百科全書)、諸部派・大乗の文献で項目や配列に若干の相違があるようである(仝上)。

因みに、頭陀の修行者が常に携行する持ち物を、

頭陀十八物(ずだのじゅうはちもつ)、

といい、持ち物を入れるために首に掛ける袋を、

頭陀袋(ずだぶくろ)、

という(仝上)。これが転じて、死装束の一つとして、

首にかけて、死出の旅路の用具を入れる袋、

つまり、

僧侶の姿になぞらえて浄衣(経帷子きょうかたびら)を着せた遺体に、六文銭などを入れて首に掛ける。三衣袋(さんねぶくろ)と称して、血脈を入れることがある、

を頭陀袋と呼ぶ(仝上・広辞苑)。

「抖」 漢字.gif


「抖」(漢音トウ、呉音ツ)は、

形声、手+斗、

で、

ふるえる、

意であり、

「擻」 漢字.gif


「擻」(ソウ)も、身震いする意である。

「藪」 漢字.gif

(「藪」 https://kakijun.jp/page/yabu200.htmlより)

「藪」(漢音ソウ、呉音ス)は、

会意兼形声。「艸+音符數(ス たくさん、つらなる)、

で、「やぶ」の意で、物事の集まるところ、となる。「抖藪」で、それを振り払う意となる。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:30| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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