2022年05月04日

兵革


今、兵革(ひょうがく)の後、世未だ安からず、国弊(つい)え、民苦しみて(太平記)、

とある。

兵革、

は、

ひょうかく、
へいがく、
へいかく、

などと訓ませ、

「兵」は槍・刀などの武器、「革」は甲冑(かっちゅう)などの武具の意、

で、

人数きたり、兵革(ひょうかく)を帯して大蛇を退治す(奇異雑談集)、

と、

いくさの道具の総称、

の意(高田衛編・校注『江戸怪談集』)であるが、それをメタファに、冒頭の、

兵革(ひょうがく)の後、

のように、

兵乱、

の意(兵藤裕己校注『太平記』)や、

天子念、則兵革災害不入国裏(続日本紀)、

のように、

たたかい、戦争、干戈、

の意で使う(広辞苑・精選版日本国語大辞典)。

「兵革(へいかく)」は、

兵革非不堅利也(兵革堅利ならざるに非ず)
とか
威天下不以兵革之利(天下を威(おど)すに兵革の利をもってせず)、

と(孟子)、漢語であり、ここでは、

武器・甲冑、

の意で使う(小林勝人訳注『孟子』)が、転じて、

いくさ、

の意でも使い、

城郭不完、兵甲不多、非国之災也(城郭完(まった)からず、兵甲多からざるは、国の災いに非ざるなり)、

と使う(仝上)、

兵甲(へいこう)、

と同義で、「兵甲」は、

兵は矛戟、甲は甲冑、

の意で、

戦争、

の意にも、

兵士、
戦力、

の意でも使う(字源)。

「兵」 漢字.gif

(「兵」 https://kakijun.jp/page/0725200.htmlより)

「兵」(漢音ヘイ、呉音ヒョウ)は、

会意文字。上部は斤(おの→武器)の形、その下部に両手を添えたもので、武器を手に持つさまを示す。並べ合わせて敵に向かう兵隊の意。中国最古の字書『説文解字』(後漢・許慎)に、「力を并(あわ)すすがた」とある、

とある(漢字源)。つまり、

「斤(おの)」+「廾(キョウ 両手をそろえた様)」、

で、

斧(=武器)を両手で(かかげ)持つ様、

ということになる(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%85%B5・角川新字源)。別に、

「兵」 甲骨文字・殷.png

(「兵」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%85%B5より)

会意文字です(斤+廾)。「曲がった柄の先に刃をつけた手斧」の象形と「両手」の象形から、両手で持つ手斧を意味し、そこから、「武器・兵士・軍隊」を意味する「兵」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji635.html

「革」 漢字.gif


「革」(漢音カク、呉音キャク)は、

象形。動物の全身の皮をぴんとはったさまを描いたもの。上部は頭、下部はしっぽと両足である。張り詰める意を含む、

とある(漢字源)。

上部「廿」は頭、下部「十」は尾と両足、

ということhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%9D%A9で、

克(コク はりきってたえる)、亟(キョク はりつめる)、改(カイ だれたものを伸ばして、起こし直す)などと同系とある(漢字源)。別に、

象形。角(つの)と尾がついたままの動物の皮の形にかたどり、毛を取り去ったかわの意を表す。借りて「あらためる」意に用いる、

とも(角川新字源)ある。

「革」 小篆・説文解字・漢.png

(「革」 小篆・説文解字・漢 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%9D%A9より)

参考文献;
小林勝人訳注『孟子』(岩波文庫)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:兵革
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