2022年07月04日

てづつ


「てづつ」は、

手筒、

と当て、

片手であつかえる鉄砲、短銃(広辞苑・大辞林)、
片手に持って撃つ小銃、ピストルの大形のもの(大辞泉)、

等々とあり、

短筒(たんづつ)、

という言い方もあり、

銃身の短い火縄銃、

を指す(デジタル大辞泉・https://www.seiyudo.com/2252.htm)。

短筒.jpg


銃身が短い火縄銃というと、馬上からの射撃に用いる、

馬上筒(騎兵銃)、

があるが、短筒は、それよりもさらに銃身が短く、片手で扱うことができる、まさに、

火縄銃版の拳銃、

であり(仝上)、馬上筒と同じく、騎兵銃として用いられたが、

火縄に常に火を点す必要上、懐に隠すのは困難であり、後世の拳銃のような護身用、携帯用としての使用は困難であった、

ともあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%81%AB%E7%B8%84%E9%8A%83

「手筒」を、

てづつ(てずつ)、

と訓ませて、

てづつといふ文字をだに書きわたし侍らず、いとてづつにあさましく侍り(「紫式部日記(1010頃)」)、
さほどにてつつにていかにして下の句をば思ひ寄りけるにかとおぼえ侍なり(「無名抄(1211頃)」)、
針道ちがひ着にくしと、手づつのうき名は取るまいとよ(「浄瑠璃・薩摩歌(1711頃)」)、

と、

拙劣なこと、
たなこと、た、そのさま、
不器用、
不細工、
不調法、

の意で使う(岩波古語辞典・明解古語辞典)。近代でも、

とうていこの人の作とは思われぬ手筒な歌でありました(柳田國男「女性と民間伝承(大正十五年)」)、

と、同じ意味で使っていた。昨今は、ほぼ使われず死後である。この言葉は、

日本はゆゆしくてづつなる国かな(「今鏡(1170)」)、

と、少し広げて、

不便なこと、
融通がきかないこと、また、そのさま、

の意でも使う(精選版日本国語大辞典)。

この由来は、

手の約(つづ)しき意、

とある(大言海)。「つづし」は、

約し、

と当て、

いづつし、

ともいい、

夜目のいすすき、伊豆都志伎事なく(伊は発語、豆都は清濁転倒、眠の足らぬことなくの意)(大殿祭祝詞)、

と、

些か不足なり、
今少し足らず、

の意、とある(大言海)。「いづつし」は、

つづし(約)、

ともいい、

イは発語、ツツシは約(つづ)しなり、発語の下に、連声(れんじゃう)にて、清濁転倒するなり、てづつ、くちづつと云ふ語も、手約(てづつ)、口約(くちづつ)なり。屈む(くぐむ)、さくぐむ。被る(かぶる)、かがふるの、サも、カも、発語なれば、此の語の如し、ほぞ(臍)、とぼそ(戸臍、樞)、偶違(すみちがひ)、すぢかひ(筋違)も同例なり、

とあり(仝上)、

取葺ける萱(かや)の噪(そそき)無く、御床(みゆか)つひの響(さやぎ)(無く)、夜女(よめ 夜目)の伊須須伎(いすすき)伊豆都志伎(いづつしき)事無く、平(たいら)けく、安(やすら)けく護り奉(まつ)る神の御名を白(まを)さく(睡眠(ねむり)の寝つかれぬことなく、足らはぬことなく、平安に熟睡しまふ意なり)、

と(「大殿祭祝詞(おほとのほがひののりと 御殿(みあらか)の造れる賀詞(ほがひごと))」)、

足らはぬ、

の意(ハ行四段活用の動詞「足らふ」の未然形である「足らは」に、打消の助動詞「ず」の連体形が付いた形)、

つまり、

足らない、

意となる。しかし、「いつし」を、

いついつし(稜威)の約、

とし、上の同じ例の、

夜女のいづつしきことなく、

の、

いづつし、

を、

夜目にも恐ろしいものが見えるような恐怖を言うらしい、

とする(岩波古語辞典)異説もあるが、大言海説に従うなら、

手筒(てづつ)、

は、

浄衣(じょうえ)は狩衣よりつづしくすべし(「装束寸法口伝抄(1362~68)」)、

の、「つづし」の用例から見ても、

手約(てづつ)、

の当て字ということになる。平安時代には、口下手の意で、

口づつ、

という語もあり(精選版日本国語大辞典)、上記のように、これも、

口約(くちづつ)、

の意と思われる(大言海)。鎌倉時代になると、

手づつ、

は、

手の意が失せて、

拙劣、

の意だけとなり、

口てづつ、

という語を生み、江戸時代になると、「手づつ」を訛って、

手づち、

といい、その連想から、

槌の子

ともいった(精選版日本国語大辞典)、とある。ただ、

槌の子、

は、

大方は針手の利かぬ槌の子は、遣手になって果つるも多し(浮世草子「禁短気」)、

と、

裁縫が下手なこと、

の意に限定していたようである(岩波古語辞典)。これは、

木槌、

の意の、

槌の子、

には、

年越の夜は独寝をせぬものなど言ひて、好ける田舎の下女(げす)ばらは槌のこを(俳句「山の井」)、

と、

近世、年越しの夜に独身の女は槌の子を抱いて寝る風習があった、

ことに起因していると思われる(仝上)。

「手」  漢字.gif

(「手」 https://kakijun.jp/page/0453200.htmlより)


「手」 金文・西周.png

(「手」 金文・西周 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%89%8Bより)

「手」(漢音シュウ、呉音シュ・ス)は、

象形。五本の指ある手首を描いたもの、

で(漢字源)、また、手に取る意を表す(角川新字源)。「手写」「手植」というように「手」ないし「てずから」の意だが、「下手(手ヲ下ス)」「着手」のように仕事の意、「名手」「能手」というように「技芸や細工のうまい人」の意、「技手」「画手」と、「技芸や仕事を習得した人」の意でも使う。
しかし、わが国では、独自に、
「指し手」「舞手」と、字の書き方、筆跡、駒の指し方、舞の手さばき、武道の術、琴、笛、鼓などの奏法、
「奥の手」と、方法・手段、
「行く手」「搦め手」「上手(かみて)」「下手(しもて)」と、方向、
「手の者」と、部下、配下、
「二手(ふたて)」と、組、隊、
「深手」「浅手」と、傷、
「手を切る」と、付き合いや関係、
「酒手」と、代金、
「山手」「野手」「河手」と、利用税、
「織手」「話し手」「嫁のもらい手」と、その動作をする人、転じて、名手、上手などの意でも、
「厚手」「薄手」「古手」と、品種、品質、
「手箱」「手槍(てやり)」「手文庫」「手帳」と、持ち運び、取扱いに適する小型のもの、
「手織」「手料理」「手描(てがき)」「手打ち」と、手作り、自作、

等々様々な意味に使い分けている(仝上)。

「筒」 漢字.gif


「筒」(漢音トウ、呉音ズウ)は、

会意兼形声。「竹+音符同(つつぬけ)」、

とあり(漢字源)、別に、

会意形声。「竹」+音符「同」。「同」は、上部「凡」(盤、四角い板)+「口(穴)」で穴のあいた板。竹の茎の部分を言う、

ともhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%AD%92

会意兼形声文字です(竹+同)。「竹」の象形と「上下2つの同じ直径のつつ」の象形から、「内部になにもない竹のつつ」を意味する「筒」という漢字が成り立ちました、

ともhttps://okjiten.jp/kanji1765.htmlある。「筒」は、「竹の管」「円柱状で中が空洞になっている」意だが、我が国では、「筒」で、

大筒、短筒のように、銃身、砲身の意から、小銃、大砲の意、

で使う。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:てづつ 手筒
posted by Toshi at 03:18| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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