2022年07月21日

名簿


「名簿」は、

めいぼ、

と訓むと、

会員名簿、

のように、

該当した人々の姓名・住所などを記した帳簿、

の意であり(広辞苑)、

汝父納名簿於我、以獲克敵(日本外史)、

と、

名を書き連ねた帳簿(精選版日本国語大辞典)、
人の名前を書き載せたる帳面(字源)、

などの意である。これは漢語である。しかし、

みょうぶ、

と訓ませる(呉音)と、

名符、

とも当て、

罪軽応免、具注名簿、伏聴天裁……但名簿雖編本貫、正身不得入京(「続日本紀」宝亀元年(770)七月癸未)、

と、

古代・中世に、官途に就いたり、弟子として入門したり、家人(けにん)として従属したりする際主従関係が成立する時、服従・奉仕のあかしとして従者から主人へ奉呈される官位・姓名・年月日を記した書き付け(名札)、

の意で(精選版日本国語大辞典・デジタル大辞泉)、

官位の請願・秘伝の授受などに際しても下位者から上位者へ差し出された、

とある(仝上)。また、

平安時代、貴族社会の風習として、貴人にはじめて会う際の礼として提出したり、弟子として師事する場合に提出したりした。また地方豪族の子弟らが京に上り、縁故をもとめて権門勢家に姓名を記して提出、主従関係を結ぶ慣習があった、

とあり、

平将門が藤原忠平に名簿を呈した(将門記)、

とか、

平忠常が源頼信に名簿を入れて降伏した(今昔物語集)、

とか、武士の間でもその風が行われている(世界大百科事典)とある。なお、武家の中では、所謂、代々主従関係を結んでいる譜代の家人(けにん)を中心とした直属の家人の他に、

名簿(みようぶ)を提出するのみのもの、
や、
一度だけの対面の儀式(見参の礼)で家人となったもの、

もあり、

家礼(けらい)、

と呼ばれて主人の命令に必ずしも従わなくてよい、服従の度合の弱い家人がある(仝上)、とされる。

「名簿」は、

名付(なづ)き、
名書(なぶみ)、
二字(にじ)、
名札(なふだ)、

などともいい、これを、

名簿を捧ぐ、
二字を奉る、

などといい(大言海)、

名刺、

と同じ(字源)ともある。

名刺、

は、

古者削竹木以書姓名、故曰刺、後以紙書、謂之名紙(畱青日札)、

と、

名帖、
名片、

と同じとある(字源)。また、

いかでかく仕(つかまつ)らではさぶらはんとて、名簿(みやうぶ)を書きてとらせたりければ、講師は、思かけぬなりといへば、けふよりのちは仕まつらんずればまゐらせ候なりとて(宇治拾遺物語)、

と、

あるのについて、

名簿を人に贈るのはその人に敬意を表する意である、

ともある(中島悦次校注『宇治拾遺物語』)。因みに、

二字、

というのは、

人名は普通漢字二字で書かれる、

ところから、

実名、
または、
名告り(名乗りは当て字)、

の意味がある(岩波古語辞典)から、「名簿」と同義にいう。

「名」 漢字.gif

(「名」 https://kakijun.jp/page/0651200.htmlより)


「名」 甲骨文字・殷.png

(「名」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%90%8Dより)

「名」(漢音メイ、呉音ミョウ)は、

会意文字。「夕(三日月)+口」で、薄暗い闇の中で自分の存在を声で告げることを示す。よくわからないものを分からせる意を含む、

とある(漢字源)が、この、

会意。夕暮れ(「夕」)に呼ぶ「口」事から、

の藤堂(明保)説以外に、

神器(「口」)に肉(「夕」)を供え名付けの儀式を表わす、

とする白川(静)説があるhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%90%8D。しかし、みる限り、

会意。口と、夕(ゆうぐれ)とから成り、夕方の暗やみで、人に自分の名をなのることにより、「な」の意を表す(角川新字源)、

会意文字です(夕+口)。「月」の象形(「夜明け」の意味)と「口」の象形から、夜明けに雄の鳥が鳴く事を意味し、それが転じて(派生して、新しい意味が分かれ出て)、「な・なのる」を意味する「名」という漢字が成り立ちましたhttps://okjiten.jp/kanji182.html

と、「夕+口」説が大勢であった。

「簿」 漢字.gif

(「簿」 https://kakijun.jp/page/1917200.htmlより)

「簿」 説文解字・漢.png

(「簿」 説文解字・漢・小篆 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%B0%BFより)

「簿」(慣用ボ、漢音ホ・ハク、呉音ブ・バク)は、

会意兼形声。甫(ホ・フ)は、平らな苗床をあらわす会意文字。溥(ホ)は水が平らにひろがること。簿は「竹+音符溥」で、薄い竹札や帳面。竹冠は、昔、竹に文面を書いていたために添えたもの、

とある(漢字源・角川新字源)。別に、

形声。竹と、音符溥(ホ)とから成る。帳簿の意を表す。会意兼形声文字です(竹+溥)。「竹」の象形と「流れる水の象形と糸巻きを手で巻きつける象形」(「水があまねくに広がる」の意味)から、「竹を薄く削って作った冊子(ノート)」を意味する「簿」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji1764.html

「符」 漢字.gif


「符」(漢音フ、呉音ブ)は、

会意兼形声。付は「人+寸(手)」の会意文字で、手が相手のからだにぴたりとくっつくことをあらわす。符は「竹+音符付」で、両片がぴたりとくっつく竹の割符、

とある(漢字源)。「神府」「護身符」のように「ふだ」の意もある。別に、

会意兼形声文字です(竹+付)。「竹」の象形と「横から見た人の象形と右手の手首に親指をあて脈をはかる象形」(「つける」の意味)から、両方を付け合わせて証拠とする竹製の「わりふ」を意味する「符」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji1703.html

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:16| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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