2022年08月09日

円居


某(なにがし)の沙門、ただかりそめに座を立ちて帰らず。円居の僧不審して、寺へ戻りしかと人やりて見するに居ず(宿直草)、

にある、

円居、

は、

まどい、

と訓ませるが、

同席の、

の意とある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。

団居、

とも当て(広辞苑)、

連聲(レンジヤウ)に。まどゐ、

とあり(大言海)、

近世初期ごろまで「まとい」、

と清音であった(日本国語大辞典)。

円(マト)居(ヰ)の意、

とある(大辞林・岩波古語辞典)が、

纏居(まとゐる)にて、纏わり居(を)る意、

ともある(大言海)。

思ふどちまどゐせる夜は唐錦たたまく惜しき物にぞありける(古今集)、

と、

輪になって座ること、
くるまざ、
団欒、

の意であり、また、

この院にかかるまどゐあるべしと聞き伝へて(源氏物語)、

と、

(楽しみの)会合、
ひと所に集まり会すること、特に、親しい者同士の楽しい集まり、

の意でも使う(精選版日本国語大辞典・岩波古語辞典)。これを動詞化して、

まどゐる、

は、

円居る、
団居る、

と当て、

氏人のまどゐる今日は春日野の松にも藤の花ぞ咲くらし(宇津保物語)、
春ながら年はくれつつよろづ世を君とまどゐば物も思はじ(仝上)、

などと、

集まり居る、
車座になる、
団欒する、
親密な者同士が集まり居る、

などの意で使う(精選版日本国語大辞典・大言海・日本国語大辞典)。これも、

まとゐる、

と清音で、

連聲(レンジヤウ)に、まどゐる、

とある(大言海)。

円居、
団居、

は和製漢語で、漢語で、

まどゐ、

の意は、

大盆盛酒、圓坐相酌(晉書・阮籍(げんせき)傳)、

と、

圓坐(エンザ)、

と表記し、

車座に坐す、

意である(字源)。

「圓」 漢字.gif

(「圓」 https://kakijun.jp/page/en13200.htmlより)


「円」 漢字.gif

(「円」 https://kakijun.jp/page/0422200.htmlより)

「圓」(エン)の字は、「まる(円・丸)」http://ppnetwork.seesaa.net/article/461823271.htmlで触れたように、

会意兼形声。員(イン・ウン)は、「○印+鼎(かなえ)」の会意文字で、まるい形の容器を示す。圓は「囗(囲い)+音符員」で、まるいかこい、

とあり(漢字源)、「まる」の意であり、そこから欠けたところがない全き様の意で使う。我が国では、金銭の単位の他、「一円」と、その地域一帯の意で使う。別に、

会意兼形声文字です(囗+員)。「丸い口の象形と古代中国製の器(鼎-かなえ)の象形」(「口の丸い鼎」の意味)と「周
意味)から、「まるい」を意味する「円」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji194.html

「円」は、「圓」の略体。明治初期は、中の「員」を「|」で表したものを手書きしていた。時代が下るにつれ、下の横棒が上に上がっていき、新字体採用時の終戦直後頃には字体の中ほどまで上がっていた、

とあるhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%86%86

「居」  漢字.gif

(「居」 https://kakijun.jp/page/0871200.htmlより)


「居」 金文・春秋時代.png

(「居」 金文・春秋時代 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%B1%85より)

「居」(漢音キョ、呉音コ)は、

会意兼形声。「尸(しり)+音符古(=固。固定させる、すえる)」で、台上にしりを乗せて、腰を落ち着けること。踞(キョ しりをおろして構える)の原字、

とある(漢字源)。

「團」  漢字.gif


「団」 漢字.gif

(「団」 https://kakijun.jp/page/0655200.htmlより)

「團(団)」(漢音タン、呉音ダン、唐音トン)は、

会意兼形声。專(セン=専)の原字は、円形の石をひもでつるした紡錘の重りを描いた象形文字で、甎(セン)や磚
(セン 円形の石や瓦)の原字。團は「囗(かこむ)+音符專」で、円形に囲んだ物の意を示す、

とある(漢字源)が、丸めたもの、ひいて「かたまり」の意を表す(角川新字源)ともある。別に、

会意兼形声文字です(囗+寸(專))。「周辺を取り巻く線」(「めぐる」の意味)と「糸巻きと右手の象形」(「糸を糸巻きに巻きつける」の意味)から、まるくなるようにころがす、すなわち、「まるい」、「集まり」を意味する「団」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji866.html

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:36| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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