才(ざえ)も徳(とこ)も尊(たと)うして、また美僧なり。芝が眉宇(びう)も色を失う(宿直草)、
とある、
芝が眉宇、
は、
唐の房琯(ぼうかん)が紫芝の眉を誉めた故事により、立派な眉をもつ顔。眉宇は眉だけでなく、仏者の尊顔の意がある、
とある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。
「眉宇」は、
決意を眉宇に漂わせる、
というように、
眉のあたり、
を意味し(広辞苑・字源)、また、
聲名赫赫(かくかく)として、窮塞(きうさい)に在り、
眉宇堂堂として、眞に丈夫(梅尭臣・劉謀閣副に贈る)、
と、
眉つき、
の意でも使う(字通)。
「宇」は軒(のき)。眉(まゆ)を目の軒と見たてていう語、
とあり(広辞苑・精選版日本国語大辞典)、
太子曰、僕病未能也、然陽気見於眉宇之閒(枚乗)、
と、
眉端、額をいふ、眉の面における家に宇(のき)のある如し、故にいふ(字源)、
宇は簷(のき)、眉の顔面にあるは、家に簷あるが如ければ云ふ(大言海)、
などとある。
芝が眉宇、
は、多く、
芝眉(しび)、
あるいは、
芝宇、
ともいい、さらに、
紫眉、
紫宇、
ともいう(字源)。
宇は眉宇、
の意とあり(仝上)、
人の顔色をたたへ称す、
とある(仝上)。つまり、
遠く手諭を承け、芝眉に對するが如し。復(ま)た渥儀を荷ふ。安(いづく)んぞ敢て濫(みだ)りに拜せん。唯だ心に良友の至愛を銘するのみ(顔氏家蔵尺牘)、
と、
貴人の相。尊称に用いる、
のである(字通)。この由来は、
元徳秀、字紫芝、質厚少縁飾、房琯毎見徳秀、歎息曰、見紫芝眉宇、使人名利之心都盡(唐書・卓行傳)、
とある(字源)。
(「眉」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%9C%89より)
「眉」(漢音ビ、呉音ミ)は、
象形。目の上の眉があるさまを描いたもので、細くて美しいまゆ毛のこと、
とある(漢字源)。
まゆ毛を美しくかざりたてたさまにかたどる(角川新字源)、
ともある。
「宇」(ウ)は、
会意兼形声。于は大きく曲がるさまを示す。宇は「宀(やね)+音符于(ウ)」で、大きくて丸い屋根のこと、
とある(漢字源)が、
形声。宀と音符于(ウ)とから成る。屋根のひさし、家の四方のすみ、ひいて、上からおおう所の意を表す、
とも(角川新字源)、
会意兼形声文字です(宀+于)。「屋根・家屋」の象形と「弓の反りを正す為の道具」の象形(「弓なりに曲がってまたがる」の意味)から、家屋の外で、またぐように覆う部分「軒(のき)」を意味する「宇」という漢字が成り立ちました、
とも(https://okjiten.jp/kanji992.html)ある。「宇」は、「屋根」よりは「軒」の意ではないか。
(「之」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E4%B9%8Bより)
「芝」(シ)は、
会意兼形声。「艸+音符之(シ すくすくのびる)」。之は、象形。足の先が線から出て進みゆくさまを描いたもの。進みゆく足の動作を意味する。先(跣(セン)の原字。足先)の字の上部は、この字の変型である。「これ」という言葉に当てたのは音を利用した当て字。是(シ これ)、斯(シ これ)なども当て字で之(シ)に近いが、其・之、彼・此が相対して使われる、
とある(漢字源)。別に、
会意兼形声文字です(艸+之)。「並び生えた草」の象形と「立ち止まる足の象形と出発線を表す線」(出発線から一歩踏み出していく事を示し、「ゆく」の意味)から、地面などから、足を突き出したように生える、「しば」、「霊芝(れいし)」を意味する「芝」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji1204.html)。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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