2022年10月03日

三千世界


「三界」http://ppnetwork.seesaa.net/article/491997710.html?1664651664)で触れたように、

はやく屋の内を浄め、精進を潔斎にせよ。三明六通を得て、芥毛頭のこさず三界一覧にするなり(「義殘後覚(ぎざんこうかく)」)、

の、

三界、

は、

三千世界に同じ、全ての世界、

とある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。しかし、「三界」の、

界と訳されるサンスクリットdhātuはもともと層(stratum)を意味する、

とあり(世界大百科事典)、仏教の世界観で、

全世界、

を示しているには違いないが、「三界」は、

心の状態を層、

として表現しているのに対して、「三千世界」は、それを、

空間的な広がり、

として表現していて、微妙に違う気がする。

須弥山の概念図.jpg

(「須弥山の一小世界」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%88%E5%BC%A5%E5%B1%B1より)

「三千世界」は、『釋氏要覧』(宋代)に、

須弥山有八山、遶外有大鐵圍山、周廻圍繞、幷、一日月、晝夜回轉、照四天下、名一國土、積一千國土、名小千世界、積千箇小界、名中千世界、積一千中千世界、名大千世界、以三積千、故三千大千世界、

とあるように、

三千大千世界、

の意であり、

三千界、
三千、
一大三千大千世界、
一大三千界、

という言い方もする(精選版日本国語大辞典)。

われわれの住む所は須弥山(しゅみせん)を中心とし、その周りに四大州があり、さらにその周りに九山八海があるとされ、これを一つの、

小世界、

という。小世界は、下は風輪から、上は色(しき)界の初禅天(しょぜんてん 六欲天の上にある四禅天のひとつ)まで、左右の大きさは鉄囲山(てっちせん)の囲む範囲である。「小世界」の大きさは、

直径が太陽系程の大きさの円盤が3枚重なった上に、高さ約132万Kmの山が乗っています、

とあるhttp://tobifudo.jp/newmon/betusekai/uchu.html。この層は、

三輪(さんりん)、

と呼ばれ、

虚空(空中)に「風輪(ふうりん)」という丸い筒状の層が浮かんでいて、その上に「水輪(すいりん)」の筒、またその上に同じ太さの「金輪(こんりん)」という筒が乗っている。そして「金輪」の上は海で満たされており、その中心に7つの山脈を伴う須弥山がそびえ立ち、須弥山の東西南北には島(洲)が浮かんでいて、南の方角にある瞻部洲(せんぶしゅう)が我々の住む島、

http://www.tendai.or.jp/houwashuu/kiji.php?nid=90、三つの円盤状の層からなっている。いちばん下には、

円盤状つまり輪形の周囲の長さが「無数」(というのは10の59乗に相当する単位)ヨージャナ(由旬(ゆじゅん 1ヨージャナは一説に約7キロメートル)で、厚さが160万ヨージャナの風輪が虚空(こくう)に浮かんでいる、

その上に、

同じ形の直径120万3450ヨージャナで、厚さ80万ヨージャナの水輪、

その上に、

同形の直径は水輪と同じであるが、厚さが32万ヨージャナの金でできている大地、

があり、その金輪の上に、

九山、八海、須弥四洲、

があるということになる(日本大百科全書)。

「須弥山」をとりまいて、

七つの金の山と鉄囲山(てっちさん)があり、その間に八つの海がある。これを九山八海という。

周囲の鉄囲山(てっちせん)にたたえた海水に須弥山に向かって東には半月形の毘提訶洲(びだいかしゅう、あるいは勝身洲)、南に三角形の贍部洲(南洲あるいは閻浮提)、西に満月形の牛貨洲(ごけしゅう)、北に方座形の倶盧洲(くるしゅう)、

がありhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%88%E5%BC%A5%E5%B1%B1、「贍部洲(せんぶしゅう)」は、インド亜大陸を示している、とされる(以上、「金輪際」http://ppnetwork.seesaa.net/article/482019842.htmlで触れた)。

この一小世界を1000集めたのが一つの、

小千世界、

であり、この小千世界を1000集めたのが一つの、

中千世界、

であり、この中千世界を1000集めたのが一つの、

大千世界、

である。この大千世界は、小・中・大の3種の千世界からできているので、

三千世界、

とよばれ、

1000の3乗(1000×1000×1000)、

すなわち、

10億の世界、

を意味する(日本大百科全書)、とある。この世界全体の中心に存在するのか、

大毘廬舍那如来(だいびるしゃなにょらい)、

つまり、

大仏、

でありhttp://tobifudo.jp/newmon/betusekai/uchu.html、この三千世界は、

一仏の教化の及ぶ範囲、

とされた(新明解四字熟語辞典)。ゆえに、1つの三千大千世界を、

1仏国土(buddhakṣetra)、

ともよぶhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%8D%83%E5%A4%A7%E5%8D%83%E4%B8%96%E7%95%8C。我々が住んでいる世界を包括している仏国土、

三千大千世界、

は、

娑婆(サハー、sahā)、

である。阿弥陀如来が教化している極楽(sukhāvatī)という名前の仏国土は、サハー世界の外側、西の方角にあるため西方極楽浄土と呼ばれる(仝上)、とある。

三千大千世界.jpg

(三千大千世界 http://tobifudo.jp/newmon/betusekai/uchu2.htmlより)

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:25| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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