2022年10月14日

村雨


ひとつ神鳴とどろきて稲妻ひかり、村雨おびただしくして眼(まなこ)も眩むばかりなりけるが(善悪報ばなし)、

にある、

村雨、

は、

叢雨、
群雨、

とも当て、

群になって降る雨、
群がって降る雨、

の意で、

激しくなったり弱くなったりして降る雨(日本国語大辞典)、
ひとしきり強く降ってやむ雨、強くなったり弱くなったりを繰り返して降る雨(大辞林)、
一しきり強く降って来る雨(広辞苑)、

などとあり、

にわか雨、
驟雨(しゅうう)、
白雨、
繁雨(しばあめ)、
過雨(かう)、
通り雨、

等々ともいう(広辞苑・大言海)。万葉集にも、

庭草(にはくさ)に村雨降りてこほろぎの鳴く声(こゑ)聞けば秋づきにけり、

とあるように古くから使われる。

不等雨(むらさめ)、

とも書かれるように、

降り方が激しかったり、弱くなったりする雨、

をいうようである。

庄野 白雨(歌川広重『東海道五十三次』).jpg

(「庄野 白雨」(歌川広重『東海道五十三次』) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%91%E9%9B%A8より)

ひとしきり強く降ってはやみ、また降り出す雨、

ともある(雨のことば辞典)。和名類聚抄(平安中期)には、

暴雨、白雨、無良左女、

類聚名義抄(11~12世紀)には、

白雨、むらさめ、

とある。

人しれずもの思ふ夏の村雨は身よりふりぬるものにぞ有りける(古今集)、

と、夏のイメージが強く、地方によっては夕立の意味とするところもあり、

秋に俄に降り出す雨(類語大辞典)、

としたりするが、「村雨」の名は、むしろ降り方なのではないか。語源を見ると、

「群がって降る雨」の意(広辞苑・日本国語大辞典)、
ムラサメ(群雨)の義(箋注和名抄・言元梯・大言海)、
ムラムラに降って、降らぬところもあるところから(日本釈名・東雅・大言海)、

とあり、

ざっと群がって降る、

意と、

不等雨、

と当てたように、

激しくなったり弱くなったりして降る、

意の両義がある。

「村消え」http://ppnetwork.seesaa.net/article/485321558.htmlで触れたように、

村消ゆ、

は、

斑消ゆ、
叢消ゆ、
群消ゆ、

とも当て(広辞苑・大言海・岩波古語辞典)、

(雪などが)あちこちとまばらに消えている、
一方は消え、一方は残る、

意である(広辞苑・岩波古語辞典)。

同じ使い方は、「すそご」http://ppnetwork.seesaa.net/article/484482055.htmlで触れた、縅(おどし)や染色に、

同じ色で、所々に濃い所と薄い所のあるもの、

を、

村濃(むらご)、

というが、これも、

斑濃、
叢濃、

とも当て、

むら(斑)、

の意、

ここかしこに叢(むら)をなすこと(大言海)、

つまり、

色の濃淡、物の厚薄などがあって、不揃い、

の意である(広辞苑)。「村」自体が、

群(ムレ)と同根、

とされるところからも、

ひとつところに集まる、

意があるが、それとともに、

斑、

の字も当てるところから、

まだら、

の含意もある。「村雨」に、両義があるのも当然かもしれない。なお、

パラパラと降ってすぐにやむにわか雨、

は、

小村雨、

という(雨のことば辞典言葉)とある。また、「雨」を、

ハルサメ(春雨)・コサメ(小雨)・ムラサメ(叢雨)・キリサメ(霧雨)・ヒサメ(氷雨)、

等々、サメと訓むについては、

アメ(雨)に[s]が添加されてサメという、

とある。同様の音韻変化は、

あまねし(遍し)→サマネシ(万葉集)、
ミイネ(御稲)→ミシネ(神楽歌)、

がある(日本語の語源)とする。

なお、「白雨」http://ppnetwork.seesaa.net/article/482287636.htmlについては触れた。

「村」 漢字.gif


「村」(ソン)は、「村消え」http://ppnetwork.seesaa.net/article/485321558.htmlで触れたように、

会意兼形声。寸は、手の指をしばしおし当てること。村は「木+音符寸」で、人々がしばし腰を落ち着けた木のある所をあらわす、

とある(漢字源)が、

会意兼形声文字です(木+寸)。「大地を覆う木」の象形(「木」の意味)と「右手の手首に親指をあて、脈を測(はか)る事を示す文字」(脈を「測る」の意味だが、ここでは、「人」の意味)から、木材・人が多く集まる「むら」を意味する「村」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji173.html

「雨」 漢字.gif

(「雨」 https://kakijun.jp/page/ame200.htmlより)

「雨」(ウ)は、「雨乞い」http://ppnetwork.seesaa.net/article/482692535.htmlで触れたように、

象形。天から雨の降るさまを描いたもので、上から地表を覆って降る雨、

とある(漢字源)。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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