是は三元下降の日といふて、一年に三度天帝あまくだりて、人間の善業悪業を記する日也。正月十五日を上元(じょうげん)といふ。此の夜を元宵(げんしょう)とも元夕(げんせき)ともいふなり。七月十五日を中元といふ。十月十五日を下元といふなり(奇異雑談集)、
とある、
上元の夜、
は、「元宵」「元夕」の他に、
灯節(とうせつ)、
三元三看、
ともいう(高田衛編・校注『江戸怪談集』・字源)。「灯節」(とうせつ)は、
元宵節(げんしょうせつ)、
ともいい、
十三より以て十七に至る、
とある(字通)。
上元の夕に燈を張り夜を照らす、
のを、
燈夕(とうせき)、
という(字源)とある。「元宵節」は、
元月(正月)の最初の宵(夜)であること、
からと命名された(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%83%E5%AE%B5%E7%AF%80)とある。
上元、
中元、
下元、
を、
三元、
というが、「元」というのは、
暦の見方の1つ、
で、
各年月日時を干支で表した干支暦において、六十干支が一周した期間を一元として、上元・中元・下元と繰り返される。合わせて三元となるが、上元はその最初の期間のこと、
をいう(占い用語集)とある。で、「三元」は、本来、
歳・日・時の始め(元は始の意)である正月1日、
を指したが、六朝末期には道教の祭日である、
上元・中元・下元、
を意味し、それぞれ正月・7月・10月の15日を指すようになった(世界大百科事典)。三元は、
天官・地官・水官のいわゆる三官(本来、天曹(てんそう)すなわち天上の役所を意味したが、しだいにいっさいの衆生とすべての諸神を支配する天上最高の神となる)、
つまり、
三元大帝、
を意味し、それぞれの日にすべての人間の善悪・功過を調査し、それに基づいて応報したという(仝上)。「上元」は、
天官(人に福を賜う神)の誕生日、
とみなし、北魏以来、祭日となる。この夜(元宵)に灯籠を飾る(張灯)ようになったのは、ほぼ隋代以後と考えられ、灯節、元宵節とも呼ばれる。張灯の期間は、唐代では前後3日間、宋以後は一般に5日間となり、清末・民国以後、急速に衰えた、とある(仝上)。
「中元」は、道教では、
善悪を判別し人間の罪を許す神(地宮)を祭る贖罪(しょくざい)の日、
とみなし、道士が経典を読んで亡者を済度した。また仏教では、盂蘭盆経(うらぼんきよう)等に見える目連(もくれん)尊者の孝行譚(たん)により、六朝後期以来、寺院では盛大な、
盂蘭盆会(うらぼんえ)、
が開かれ、迷える亡者を済度した。このため後世、
鬼節(鬼は亡霊の意)、
とも呼ばれ、六朝の終りには、中元はすでに道教・仏教共通の祭日となり、家々では墓参に出かけ、各寺院では、供養を受けに訪れる諸霊の乗る法船を作り、夜それを焼いた(仝上)、とある。日本ではこれが、
お盆、
の行事となり、さらに、目上の人やお世話になった人等に贈り物をする、
お中元、
が派生した(仝上・https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%85%83)。
「下元」は、古代中国では、
先祖の霊を祀る行事、
だったが、後に、
物忌みを行い経典を読み、災厄を逃れるよう祈る日、
となった(仝上)。
日本では、
下元、
は取入れられなかったが、上元は、中元とともに定着し、
小正月、
女正月、
の名称もあり、
左義長(さぎちょう)、
ドンド焼き、
等々種々の民間行事が行われ、特に、この日は、
小正月、
に当たり、
小豆粥、
を食べると、一年中の災難が避けられるという「あずき粥」の習俗は全国的な広がりをもった(ブリタニカ国際大百科事典)。なお、「あずき粥」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/473475996.html)、「小豆」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/477537850.html)については触れた。
「下元」は、日本では取りいれられなかったが、
この前後の日に、収獲を感謝する、
十日夜(とおかんや)、
亥の子、
などが行われ、日本に伝わった、
下元、
が各地の収獲祭と結び付いた(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%85%83)と考えられている。
なお、「亥の子」については「亥の子餅」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/481713055.html)で触れた。
(「元」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%85%83より)
「元」(漢音ゲン、呉音ゴン、慣用ガン)は、
象形。兀(人体)の上に丸い●印を描いたもので、人間のまるい頭のこと。頭は上部の端にあるので、転じて、先端、始めの意となる(漢字源)。別に、
指事。儿と、二(頭部を示す)とから成り、人の頭、ひいて、おさ、「もと」などの意を表す、
とも(角川新字源)、
象形文字です。「かんむりをつけた人の象形」で「かしら・もと」を意味する「元」という漢字が成り立ちました、
とも(https://okjiten.jp/kanji355.html)ある。
参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95