2022年11月02日

折節


感に堪へずして、唐綾の染付なる二衣を纏頭にしてき。折節に付けては興がりておぼえき(梁塵秘抄口伝集)、

にある、

折節(おりふし)、

は、

ちょうどそのときに、その場合に、

とか、

ときどき、おりにふれて、

という意味で使われるが、ここでは、

時節、時機、場合、その時、

の意とあり(馬場光子全訳注『梁塵秘抄口伝集』)、「折節につく」で、

時機にかなっている、

意で、

「興がる」は、興趣をそそられているさまを原義とし、いかにも他と違うのを積極的にほめたたえる気持ちを込める、

とあり(仝上)、

折に合って、興趣深く思われた、

と訳すが、その場、その時に叶った、

時宜を正確に読み取り機転を利かせて帝王(後白河上皇)の歓心をかった、

ということなのだろう(仝上)。

「折節(セツセツ)」は、

節を折る、

で、

以秦之強、折節而下與國、臣恐其害於東周(戦国策)、

と、

己の主持する意を屈(ま)ぐる、

意で使う(字源)が、和語では、

折れ目の節、

と、名詞として、

時の流れの変わり目の意(岩波古語辞典)、
ヲリもフシも、時限を示す語(大言海)、

の意で、

また言ひ出で給はむ折ふし、ふとかきそがむ(落窪物語)、
いと嬉しう思ひ給へられぬべきをりふしに侍りながら(源氏物語)、

と、

何かが行なわれる、また何かの状態にある時点、ちょうどその時節、場合、機会、

などと使い(精選版日本国語大辞典)、それが転じて、

この折にある人々折節につけて、からうた(漢詩)ども、時に似つかはしき、言ふ(土佐日記)、
をりふしのいらへ心得てうちしなど(源氏物語)

などと、

その場合その場合、その時々、

と(岩波古語辞典)、切れ目の時が少し繋がり、さらに、

折節のうつりかはるこそものごとに哀れなれ(徒然草)、

と、広く、

時節、季節、

の意で使う(岩波古語辞典)。また、副詞として、

心中に我を念ぜよ、とぞおしへ給ひける。折ふし相応かさねてめし有て、祈り奉るほど(九冊本宝物集)、

と、

この時機において、ちょうどその時、折から、

の意から、転じて、

私も折ふしは、文のおとづれをも致したう御ざったれども(虎寛本狂言「鈍太郎」)、

と、

時々、時折、ときたま、

の意で使う(精選版日本国語大辞典)。

折節、

の「折」のもつ、

「切れ目」のその時、

が、広く、

季節、

に転じたり、それが、点々と広がり、

ときどき、

の意に転じ、広く、

時節、

にまでなった、と見ることができる。

「折節」を、

内々御遊興の御酒宴などが、折節(ヲリセツ)始まるでござりませうね(歌舞伎「早苗鳥伊達聞書(実録先代萩)」)、

と、

おりせつ、

と訓ませる場合もある(精選版日本国語大辞典)ようだが、意味は同じである。

折節無(な)し、

というと、

をりふしなき事、思ひたつよし申す(たまきはる)、

と、

都合が悪い、

意になる(仝上)。

「折」 漢字.gif


「折」(漢音セツ、呉音セチ)は、「壺折」http://ppnetwork.seesaa.net/article/492978987.htmlでふれたように、

会意。「木を二つに切ったさま+斤(おの)」で、ざくんと中断すること、

とある(漢字源)。別に、

斤と、木が切れたさまを示す象形、

で、扌は誤り伝わった形とある(角川新字源)。また、

会意文字です(扌+斤)。「ばらばらになった草・木」の象形と「曲がった柄の先に刃をつけた手斧」の象形から、草・木をばらばらに「おる」を意味する「折」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji670.html

「節」 漢字.gif



「節」 漢字.gif


「節」(漢音セツ、呉音セチ)は、

会意。即(ソク)は「ごちそう+膝を折ってひざまずいた人」の会意文字。ここでは「卩」の部分(膝を折ること)に重点がある。節は「竹+膝を折った人」で、膝を節(ふし)として足が区切れるように、一段ずつ区切れる竹の節、

とある(漢字源)。別に、

形声。「竹」+音符「即」(旧字体:卽)、卽の「卩」(膝を折り曲げた姿)をとった会意。同系字、切、膝など、

ともhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%AF%80


会意兼形声文字です(竹+即(卽))。「竹」の象形と「食べ物の象形とひざまずく人の象形」(人が食事の座につく意味から、「つく」の意味)から、竹についている「ふし(茎にある区切り)・区切り」を意味する
「節」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji554.html

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
簡野道明『字源』(角川書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:07| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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