2022年11月23日

馬口労(ばくろう)


馬口労(ばくろう)を業(わざ)として、世を渡りけり(片仮名・因果物語)、

にある、

馬口労、

は、

博労、
馬喰、

あるいは、

伯楽、

とも当て(岩波古語辞典・デジタル大辞泉)、

馬の売買をする人、

の意であり(高田衛編・校注『江戸怪談集』)、文明本節用集には、

博労、バクラウ、馬商人、

とあるが、必ずしも馬だけではなく、

牛や馬のことに詳しく、またその売買の仲介などを業とする者、また、馬や牛の病気を治したり、調教をしたりする者、転じて、牛馬の売買をすること、また広く物と物とを交易すること、

ともあり(日本語源大辞典)、「ばくろう」は、

伯楽の転、

とある(岩波古語辞典)。「伯楽」(ばくろう)は、

古代中国の馬の鑑定の達人とも、また馬を守護する星の名ともされ、転じて村々を回って農家から牛馬を買い集め、各地の牛馬市などでこれを売りさばく者をさして呼んだ。また、獣医の普及以前、馬の血取りや治療、あるいは牛の治療などを業とした者にも伯楽の字があてられたが、この場合は「はくらく」と呼ばれた。両者とも馬相鑑定の技術にすぐれていることが必要で、もともと両者は兼ね行われたらしく、その分化はきわめて曖昧である、

とある(ブリタニカ国際大百科事典)。日本では、史料上は鎌倉中期から登場し、『北条九代記』の中に、弘安三年(1280)
11月の鎌倉の火災について、

柳厨子より博労坐に至る、

と記されているのが初見で(世界大百科事典)、

牛馬の仲買人の称、

として、

当時から座を形成し、

大馬喰・子方馬喰(地馬喰)・牛追い(牛回し)・旅馬喰、

の4種に分けられ、縄張りを定めて自己の営業区域とし、域内の家畜の売買、交換、斡旋(あっせん)を行う、

とある(マイペディア)。京都では『庭訓往来』に、

室町伯楽、

とあるように五条室町の馬市が有名であり、この馬市で活躍する伯楽は、室町座を形成し、石清水八幡宮駒形神人の支配を受けていた(世界大百科事典)。現在は、家畜商と呼ばれ家畜商法に基づき免許を要する(仝上)とある。

天王寺の牛市.jpg

(天王寺の牛市(『日本山海名物図絵』) https://intojapanwaraku.com/culture/126004/より)

「ばくらう(ばくろう)」の由来は、

伯楽の転、

ということになるが、

唐の韓愈の書いた「雑説」に、「世に伯楽ありて、然る後に千里の馬あり」の文があり、ハクラク(伯楽)は馬の鑑定人の名であった。
わが国では、牛馬を売買する商人のことを伯楽といった。〈長五郎宗政、伯楽の事を奉行すべき旨、仰せ付けらる〉(東鑑)。東北地方では「獣医」のことをハクラクといっている。
語尾の「ク」のウ音便でハクラウ・バクラウ(馬喰・博労)に転音した。〈身どもは牛の善悪を存ぜぬ。ここに身どもの存じたバクラウがござる〉(狂言・横座)。さらに転音して、バクロウ・バクロ・ハゲクラといい、牛馬の売買・周旋人のことをいう、

とある(日本語の語源)。「鉏雨亭随筆(嘉永五年(1852))」にも

俗謂互市馬曰博労、初余不詳其義、偶閲韻書、伯楽一作博労、乃知互市之際、能相馬者、或称之曰博労、後訛為互市之義、

とある。

「博」 漢字.gif

(「博」 https://kakijun.jp/page/1213200.htmlより)

「博」(漢音呉音ハク、慣用バク)は、

会意兼形声。甫は圃の原字で、平らで、広い苗床。それに寸を加えた字(フ・ハク)は、平らに広げること。博はそれを音符とし、十(集める)を添えた字で、多くのものが平らにひろがること。また拍(ハク うつ)や搏(ハク うつ)に当て、ずぼしにぴたりとうちあてる意をあらわす、

とある(漢字源)。別に、

形声文字です(十+尃)。「針」の象形(「針」の意味だが、借りて(同じ読みの部分に当て字として使って)、「多い」の意味)と「田んぼの象形と苗の象形と手の象形」(「田の苗を広く植える」の意味)から「ひろい」を意味する「博」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji684.html

「勞」 漢字.gif


「勞(労)」(ロウ)は、

会意文字。勞の上部は、火を周囲に激しく燃やすこと。勞はそれに力を加えた字で、火を燃やし尽すように、力を出し尽すこと。激しくエネルギーを消耗する仕事や、その疲れの意、

とある(漢字源)。別に、

会意。力と、熒(けい)(𤇾は省略形。家が燃える意)とから成る。消火に力をつくすことから、ひいて「つかれる」、転じて「ねぎらう」意を表す、

とも(角川新字源)、

会意文字です(熒の省略形+力)。「たいまつを組み合わせたかがり火」の象形と「力強い腕」の象形から、かがり火が燃焼するように力を燃焼させて「疲れる」、また、その疲れを「ねぎらう」を意味する「労」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji719.html

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:49| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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