2022年12月02日

頓(とみ)に


その人々には頓に知らせじ。有様にぞしたがはん(源氏物語)、

とある、副詞、

頓(とみ)に、

は、

早急に、
さっさと、

の意で、

風波とににやむべくもあらず(土佐日記)、

とある、

トニニの転、

で、

多くの場合、下に打消しを伴って使われる。その打ち消された行動は、実は、即座に為し遂げられることが予想・期待される、

とある(岩波古語辞典)が、さらに、

とみにはるけきわたりにて(足が遠のいて)、白雲ばかりありしかば(蜻蛉日記)、

と、

打消しの意を含む語を修飾して、

ばったり、とんと、

の意でも使う(仝上)。「とにに」は、

トニは頓の字音tonに母音iを添えて、toniとしたもの、

で(仝上)、

にわかに、
急に、

の意である。

とみに、
とにに、

が、「頓」の字音からきているためか、

この故に名利とんに捨てがたし(「雑談集(鎌倉後期)」)、
頓(トン)に成就(じゃうじゅ)ある様に(太平記)、

などと、

とんに、

とも訛る。室町時代の文明年間以降に成立した『文明本節用集』では、

頓而、トンニ、

とある。「とみに」の語源について、

とし(疾)の語幹に接尾語みがついたもの、

とする説(大言海)もあるが、上記の土佐日記の、

とにに、

などの形から、

頓の字音の変化したもの、

と見ていいようである(日本語源大辞典)。

とにに→とみに→とんに、

といった転訛であろうか。

さるに、十二月(しはす)ばかりに、とみのこととて御ふみあり(伊勢物語)、

と使う、

とみ(頓)、

も同じで、

頓の字音tonに母音iを添えてトニとしたものの転、

である(岩波古語辞典)。

ニの音とミの音の交替例は、ニラ→ミラ(韮)、ニホドリ→ミホドリ(鳰鳥)、

などがある(仝上)。

時間的に間がおけないさま、
また、
間をおかないさま、
急、
にわか、
さっそく、

の意で、

「とみの」の形で連体修飾語として、また、「とみに」の形で副詞的に用いることが多く、現代ではもっぱら「とみに」の形で用いられる、

とある(精選版日本国語大辞典)。

「頓」 漢字.gif



「頓」 説文解字・漢.png

(「頓」 説文解字・漢 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%A0%93より)

「頓」(トン)は、

会意兼形声。屯(トン チュン)は、草の芽が出ようとして、ずっしりと地中に根をはるさま。頓は「頁(あたま)+音符屯」で、ずしんと重く頭を地につけること、

とあり(漢字源)、頭を下げる敬礼を意味する漢語(角川新字源)とある。別に、

会意兼形声文字です(屯+頁)。「幼児が髪を束ね飾った」象形(「集まる、集める」の意味)と「人の頭部を強調した」象形(「かしら、頭」の意味)から、頭を下げてきた勢いが地面で一時中断されて、力が集中する事から、「ぬかずく(頭を下げて地につける)」を意味する「頓」という漢字が成り立ちました、

とあるhttps://okjiten.jp/kanji2197.html

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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