2022年12月18日

求聞持法


智遁といふ出家、浅間が嶽(たけ)に来たりて、求聞持(ぐもんじ)の法を行ひ度(たき)よし望みけるに(百物語評判)、

にある、

求聞持の法、

とは、

仏教密教修法の一つ、『虚空蔵求聞持法』に説く修法で、見聞したことすべてを記憶する術、求聞持法、

のこと(高田衛編・校注『江戸怪談集』)で、正確には、

仏教書、「虚空蔵菩薩能満所願最勝心陀羅尼求聞持法」、

の略称で、

虚空蔵菩薩を本尊として修する行法、

という(広辞苑・日本国語大辞典)。

虚空蔵菩薩.jpg

(絹本著色虚空蔵菩薩像(東京国立博物館蔵) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%99%9A%E7%A9%BA%E8%94%B5%E8%8F%A9%E8%96%A9より)

「虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)」は、

サンスクリット語アカーシャガルバĀkāśagarbhaの訳、

で、

宇宙のすべてのものを含み、虚空(大空)のように無量の福徳・智慧を具え、これをつねに衆生(しゅじょう)に与えて諸願を成就させる菩薩、

である(日本大百科全書)。

アーカーシャガルバ、

は、

「虚空の母胎」の意、

で、

広大な宇宙のような無限の智恵と慈悲を持った菩薩、

ということから、

智恵や知識、記憶といった面での利益をもたらす菩薩、

として信仰されhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%99%9A%E7%A9%BA%E8%94%B5%E8%8F%A9%E8%96%A9

明けの明星、

は虚空蔵菩薩の化身・象徴とされ、

明星天子、
大明星天王、

とも呼ばれる(仝上)。また、大日如来(にょらい)の福と智の二徳を本誓(ほんぜい 根本の誓願)とするため、同体とする菩薩が多い。たとえば、

金剛宝菩薩、
虚空庫菩薩(『理趣経』)、
金剛胎菩薩(『摂真実経』)、
地蔵菩薩、

がそれであり、だからこの菩薩の化身に、

明星(『虚空蔵神呪経(しんじゅきょう)』)、
日月星(『宿曜儀軌(しゅくようぎき)』)、

がある(日本大百科全書)とされる。

奈良時代に将来された求聞持(ぐもんじ)法以降、虚空蔵信仰が盛んとなり、曼荼羅(まんだら)にも描かれ、

胎蔵界(たいぞうかい)曼荼羅の虚空蔵院の中心仏、

その形像は、

菩薩形、

で、

右手に智慧を表す剣、左手に福徳を表す蓮華(れんげ)と如意宝珠(にょいほうじゅ)を持ち、頭上に五つの智慧を表す冠をかぶる、

とある(仝上)。この菩薩を本尊とする修法には、虚空蔵求聞持(ぐもんじ)法の他に、

虚空蔵菩薩法、

もある(世界大百科事典)らしい。

空海.jpg

(空海の肖像(真如様大師) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A9%BA%E6%B5%B7より)

求聞持法を行う人は、

山中など静かな場所で虚空蔵菩薩の絵を掲げ供養し、集中して息の続く限り虚空蔵菩薩の陀羅尼(だらに サンスクリット原文の言葉、ノウボウ アキャシャキャラバヤ オン アリキャマリボリソワカ)を唱える。疲れたらやめてよいが、毎日続けて行い、合計100万回を唱える。唱え終わったら、今度は日食・月食の日に再び陀羅尼を唱えながら蘇(そ 古代のチーズ)を作り、これを食べれば一度読んだ経典の内容を忘れない知恵を得る、

とあるhttps://edu.narahaku.go.jp/post_note/27/。この求聞持法を、

空海、

も「三教指帰」(さんごうしいき)に、

ここにひとりの沙門あり、余に虚空蔵求聞持を呈す。その経に説く、もし人、法によってこの真言一百万遍を誦すれば、すなわち一切の教法の文義、暗記することを得る、

と記しているように、若い頃に、

高知の室戸岬の洞窟、御厨人窟に籠もって虚空蔵求聞持法を修した、

とされ、

山岳修行の日々を過ごし、高知の室戸岬の崖上に座禅を組み、虚空蔵求聞持法を修行していた時に明けの明星である金星が口の中に飛び込んでくるという不思議な体験をした、

というhttps://yasurakaan.com/shingonshyu/kokuuzou-gumonji/。この、

明けの明星が口の中に飛び込んでくるという体験こそが虚空蔵求聞持法の真髄であり、明けの明星は虚空蔵菩薩の化身とされて、明星天子、大明星天王などと呼ばれることもありますので、この体験こそ虚空蔵菩薩と一体化した瞬間であり、轟音がして明星が飛来して、体が爆発して粉々に飛んでいくような物凄い体験なのです、

とある(仝上)。それによって空海は悟りを開き、

洞窟の中で空海が目にしていたのは空と海だけであったため、空海と名乗った、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A9%BA%E6%B5%B7

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:13| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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