絵かきは尾さきに如意宝珠を書けるも、これらの故実にてや侍らん(百物語評判)、
とある、
如意宝珠は、
種々の物を意にまかせて出すという、寶の珠。火焔状で書かれるのが普通、
と注記がある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)が、日本では一般的に、下部が球形、上部が山なりに湾曲して尖っている(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A6%82%E6%84%8F%E5%AE%9D%E7%8F%A0)、とある。
梵語cintmai(チンターマニ)の訳語、
で(精選版日本国語大辞典)、サンスクリット語で、
チンターとは「思考」、マニは「珠」、
を指し、
意のままに願いをかなえる宝、
と解釈できる(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A6%82%E6%84%8F%E5%AE%9D%E7%8F%A0)。
如意宝、
如意珠、
如意の珠、
摩尼(マニ)、
摩尼宝珠、
などともいう(広辞苑・大辞林・精選版日本国語大辞典)。
如意輪観音、
地蔵菩薩、
馬頭観音、
などの、
持物(じもつ)、
とされ、とくに真言宗などの密教で重んじられる(岩波古語辞典・日本大百科全書)。
摩尼宝珠瓔珞、如意珠瓔珞(法華経)、
諸佛入涅槃時、以方便力留砕身舎利、以福衆生、衆生福盡此舎利變為摩尼如意寶珠(往生論註)、
と(字源)、
一切の願いが自分の意の如くかなうという不思議な宝のたまの意で、民衆の願かけに対し、それを成就させてくれる仏の徳の象徴、
であり(広辞苑・精選版日本国語大辞典)、
意のままに、宝や衣服、飲食を出し、病気や苦悩をいやしてくれるまさに空想上の宝珠であり、また悪を除去し、濁った水を清らかにし、災禍を防ぐ功徳(くどく)があると信じられている(日本大百科全書)。
(左手に如意宝珠をもつ吉祥天立像(浄瑠璃寺) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A6%82%E6%84%8F%E5%AE%9D%E7%8F%A0よりり)
一説に、
竜王の脳の中にあり、これを手に入れると、多くの財宝が得られるだけでなく、毒にもおかされず、火にも焼かれない、
という(ブリタニカ国際大百科事典)。
如意宝珠の概念は、
天台智顗(智顗)の摩訶止観、
とともに日本に伝わったが、平安時代には神道にもとりこまれ、稲を持った豊穣の女神ウカノミタマが、富裕の神として如意宝珠を持った姿で描かれるようになった。この、
ウカノミタマとともに信仰されてきた如意宝珠の図柄、
は、「牛王」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/492844892.html)で触れたように、
熊野本宮大社の牛玉宝印、
や
伏見稲荷大社のご朱印、
として押印されている(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A6%82%E6%84%8F%E5%AE%9D%E7%8F%A0)。
(熊野那智大社の牛王宝印 日本大百科全書より)
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
簡野道明『字源』(角川書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95