2022年12月27日

つるべおろし


それは俗にいへるつるべおろしと云ふ、ひかり物なり(百物語評判)、

とある、

つるべおろし、

は、

垂直に上下する妖怪、

とある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)が、本文は続いて、

其の光り物は大木の精にて、即ち木生火(もくしょうか 五行相生説では木は火を生ずる)の理なり。さて昼も顕はれず、わきへも見えざる事は、火は暗きを得て色をまし、明らかなるにあひて光を失ふ。常の事なり。就中(なかんずく)、木の下の暗き所にあらはれ見ゆるなるべし。(中略)其の火のうちにて陰火(いんか)、陽火(ようや)のわかちあり、陽火は物を焼けども、陰火は物を焼くことなし。(中略)此のつるべおとしとかやも、陰火なり、

と解釈している(百物語評判)。

西岡の釣瓶おろし.jpg

(西岡の釣瓶おろし(『百物語評判』) 高田衛編・校注『江戸怪談集』より)

「つるべ」とは、

釣瓶、

と当て、言うまでもなく、

縄や竿の先につけて井戸の水をくみ上げる桶、

をいい、

つるべおけ、

ともいう(広辞苑・精選版日本国語大辞典)。後には、

滑車の先に桶を結び桶の重さを利用して水を汲み上げる、

スタイルとなるが、

豊玉姫の侍者玉の瓶(ツルヘ)を以て水を汲む(神代紀)、

とあるように古くから使われている。

鶴瓶桶.jpg

(釣瓶(桶) 広辞苑より)


つるべ.bmp

(つるべ 精選版日本国語大辞典より)


つるべ.jpg



瓶を使う井戸を、

釣瓶井戸、

といい、縄を付け滑車にかけて使う釣瓶を、

縄釣瓶、

といい、

二岐釣瓶 縄の両端に付けて上部の滑車で交互に上げ下げする釣瓶、
竿釣瓶 竹竿の片方に水かごを付けて上げ下げする釣瓶、
はね釣瓶 竹竿の片方に重石を付けて上げ下げする釣瓶、
投げ釣瓶 縄の一端に付け一方の端を持って水中に投げ込む釣瓶、

といった種類があるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%A3%E7%93%B6らしい。

「つるべ」の語源は、

吊瓶(つるへ)の義(大言海)、
ツル(蔓)へ(瓶)の意(岩波古語辞典)、

とされ、

連るぶ、

とし、

続けざま、

という意とするhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%A3%E7%93%B6ものもあるが、それは滑車を使うようになってのことではないか。

釣瓶落とし・釣瓶下し、
あるいは、
釣瓶おろし、

という言い回しは、釣瓶を井戸へ落とす感覚でわかるが、

釣瓶打ち・連るべ打ち、

というのは、滑車のそれで、手でくみ上げている感覚とは程遠い気がする。和名類聚抄(平安中期)には、

罐、楊氏漢語抄云、都留閇、汲水器也、

とある。

「つるべおろし」は、

釣瓶下ろし、

と当てるが、

釣瓶落とし(つるべおとし)、

ともいい、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』では、

釣瓶火(つるべび)、

としている(鳥山石燕『画図百鬼夜行全画集』)が、これは、上記『百物語評判』で、

西岡の釣瓶おろし、

として、

京都西院の火の玉の妖怪が描かれたもの、

が原典としているhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%A3%E7%93%B6%E7%81%ABとある。

釣瓶火(鳥山石燕『画図百鬼夜行』).jpg

(「釣瓶火」(鳥山石燕『画図百鬼夜行』) 鳥山石燕『画図百鬼夜行全画集』より)

木の精霊が青白い火の玉となってぶらさがったもの、

とする見方があるようである(仝上)が、

通行人が通ると木の上から降りてきて、食べてしまうという妖怪、

または、

大きな釣瓶を落として通行人を掬い、食べてしまう、

とも言われているhttps://mouryou.ifdef.jp/100wa-mi/tsurube-otoshi.htm

参考文献;
鳥山石燕『画図百鬼夜行全画集』(角川ソフィア文庫)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:35| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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