化生
いかさま化生(けしょう)の類ならんと、恐れてすすまず(新御伽婢子)、
化生、
は、
変化、幽霊の類、
と注記がある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。
化生、
は、
かせい、
と訓ませると、
汝天地の中に化生して(太平記)、
と、
形を変えて生まれること、
の意味で、
化身に同じ、
ともあり(広辞苑)、また、
変質形成、
の意で、
赤星病にかかったナシの葉での海綿組織から柵(サク)状組織への変化、
のように、
ある特定の器官に分化した生物の組織・細胞が再生や病理的変化に伴って著しく異なった形に変化する、
意で使う(大辞林)。また、
水面無風帆自前、徒弄化生求子戯(玩鴎先生詠物百首(1783)・泛偶)、
と、西域から中国に伝わった風俗の、
七夕の日に、女性が子を得るまじないとして水に浮かべる蝋作りの人形、
の意味もある(精選版日本国語大辞典)。
けしょう、
と訓ませると、
無而忽現、名化生(瑜加論)、
と、仏語の、
四生の一つ、
で、
湿生化生(ケシャウ)はいさ知らず体を受けて生るる者、人間も畜生も出世のかどは只一つ(浄瑠璃「釈迦如来誕生会(1714)」)、
と、
母胎や卵殻によらないで、忽然として生まれること、
をいい、
天界や地獄などの衆生の類、
を指す(精選版日本国語大辞典)。
「四生」(ししょう)は、「六道四生」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/486172596.html)で触れたように、生物をその生まれ方から、
胎生(たいしょう 梵: jarāyu-ja)母胎から生まれる人や獣など、
卵生(らんしょう 梵: aṇḍa-ja)卵から生まれる鳥類など、
湿生(しっしょう 梵: saṃsveda-ja)湿気から生まれる虫類など、
化生(けしょう upapādu-ka)他によって生まれるのでなく、みずからの業力によって忽然と生ずる、天・地獄・中有などの衆生、
の四種に分けた(岩波仏教語辞典)ひとつ。その意味から、
後時命終。悉生東方。宝威徳上王仏国。大蓮華中。結跏趺坐。忽然化生(「往生要集(984~85)」)、
と、
極楽浄土に往生する人の生まれ方の一つ、
として、
弥陀の浄土に直ちに往生すること、
の意、さらに、
其の柴の枝の皮の上に、忽然に彌勒菩薩の像を化生す(「異記(810~24)」)、
化身、
化人、
の意で、
仏・菩薩が衆生を救済するため、人の姿をかりて現れること、
の意として使うが、ついには、
まうふさが打ったる太刀もけしゃうのかねゐにて有間(幸若「つるき讚談(室町末‐近世初)」)、
と、
ばけること、
の意となり、
化生のもの、
へんげ、
妖怪、
の意で使われるに至る(精選版日本国語大辞典・広辞苑・大辞林)。で、
化生の者(もの)、
というと、
ばけもの、
へんげ、
妖怪、
の意の外に、それをメタファに、
美しく飾ったり、こびたりして男を迷わす女、
の意でも使う。
「化」(漢音カ、呉音ケ)は、
左は倒れた人、右は座った人、または、左は正常に立った人、右は妙なポーズに体位を変えた人、いずれも両者を合わせて、姿を変えることを示した会意文字、
とある(漢字源)が、別に、
会意。亻(人の立ち姿)+𠤎(体をかがめた姿、又は、死体)で、人の状態が変わることを意味する、
とか(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%8C%96)、
会意形声。人と、𠤎(クワ 人がひっくり返ったさま)とから成り、人が形を変える、ひいて「かわる」意を表す。のちに𠤎(か)が独立して、の古字とされた、
とか(角川新字源)、
指事文字です。「横から見た人の象形」と「横から見た人を点対称(反転)させた人の象形」から「人の変化・死にさま」、「かわる」を意味する「化」という漢字が成り立ちました、
とか(https://okjiten.jp/kanji386.html)とある。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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