2023年01月11日

新発意(しぼち)


此の後、新発意(しぼち)と喝食(かつしき)と、つれだちて縁に出でたるよる(新御伽婢子)、

の、

新発意、

とは、

出家したばかりの小坊主、

とある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。なお、「喝食」については「沙喝」で触れたように、禅宗用語で、正確には、

喝食行者(かつじきあんじゃ、かっしきあんじゃ)、

といい、「喝」とは、

称える、

意で、禅寺で規則にのっとり食事する際、

浄粥(じようしゆく)、
香飯香汁(きようはんきようじゆ)、
香菜(きようさい)、
香湯(こうとう)、
浄水、

等々と食物の種類や、

再進(再請 さいしん お替わり、食べ始めてから五分~十分くらいしたところで再び浄人が給仕にやって来る)、
出生(すいさん 「さん」は「生」の唐宋音。「出衆生食」の略。自分が受けた食事の中からご飯粒を七粒ほど(「生飯(さば)」)取り出し施食会(せじきえ)を修し、一切の衆生に施すこと)、
収生(しゆうさん 出生の生飯(さば)を集める)、
折水(せつすい 食べ終わった器にお湯を入れて器を洗い、それを回収する)、

等々と食事の進め方を唱えhttp://chokokuji.jiin.com/他)

食事の種別や進行を衆僧に知らせること、

また、

その役名、

をいい、本来は年齢とは無関係であるが、禅宗とともに中国から日本に伝わった際、

日本に以前からあった稚児の慣習が取り込まれて、幼少で禅寺に入り、まだ剃髪をせず額面の前髪を左右の肩前に垂らし、袴を着用した小童が務めるものとされた、

とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%96%9D%E9%A3%9F・精選版日本国語大辞典・日本大百科全書)。

「新発意」は、

「しんぼち」の撥音の無表記、

つまり、

シンボチのンを表記しない形、

である(広辞苑・デジタル大辞泉)が、

シンボツイの転、

とある(岩波古語辞典)ので、

シンボツイ→シンボチ→シボチ、

という転訛の流れの中で、

しんぽっち、
しんぼち、

とも訓ませhttp://jodoshuzensho.jp/daijiten/index.php/%E6%96%B0%E7%99%BA%E6%84%8F、あるいは、

しかも、もろもろの新発意(シンホツイ アラタニココロヲヲコス)の菩薩、ほとけの滅後におきて、もしこの語をきかば(「本仮名書き法華経(鎌倉中)」)、

と、

しんぼつい、

とも、

文政六年癸未四月真志屋五郎作新発意(シンボッチ)寿阿彌陀仏(森鴎外「寿阿彌の手紙(1916)」)、

と、

しんぼっち、

とも訓ませる(精選版日本国語大辞典)。

新たに発心(ほっしん)して仏門にはいった者、
仏門にはいってまもない者、

を指すので、必ずしも「小坊主」を指すわけではない。浄土真宗では、

得度した若い男子、

を新発意と呼ぶ。

「発意」(ほつい・はつい)は、漢語で、

卓然発意、忍苦受忍(浄住子)、

と、

心を起こす、

意で(字源)、和語では、

住民の発意による投票、

というように、

思いつくこと、
考え出すこと、
発案、

の意で、訛って、

ほっち、
ほち(ホッチの約)、

と、

発心(ほっしん)、

と同義で使う(広辞苑)。「発意」の意味を、仏門へ入る意に限定したのが、

新発意、

で、

初めて道心(菩提心ぼだいしん)を発おこして仏道に入ること、またその修行者、

を指すことになるhttp://jodoshuzensho.jp/daijiten/index.php/%E6%96%B0%E7%99%BA%E6%84%8F

菩提が新発意した場合、

新発意の菩薩は五十二位中十信の位にあるもので、仏道修学の日が浅いことから、

新学の菩薩、

といい、『維摩経』中には、

其の神通を得たる菩薩は、即ち自ら形を変じて四万二千由旬と為し、獅子座に坐す。諸の新発意の菩薩及び大弟子は皆昇ること能わず、

とあり、『大智度論』には

般若波羅蜜随喜の義は新学の菩薩の前に説くべからず。何を以ての故に。若し少福徳善根の者ありて、是れ畢竟空の法を聞かば、即ち空を著して是の念を作さん、

とあり、『安楽集』に、

新発意の菩薩は機解軟弱なり。発心すと雖いえども、多く浄土に生ぜんと願ず、

と、それぞれ新発意の菩薩の立場を示している(仝上)とある。

「発」 漢字.gif



「發」  漢字.gif


「発(發)」(漢音ハツ、呉音ホツ・ホチ)は、

会意兼形声。癶(ハツ)は、左足と右足とがひらいた形を描いた象形文字。それに殳印(動詞の記号)を加えた字(音ハツ)は、左右にひらく動作をあらわす。發はそれを音符とし、弓を加えた字で、弓をはじいて発射すること。ぱっと離れてひらく意を含む、

とある(漢字源)。

形声。意符弓(ゆみ)と、音符癹(ハツ)とから成る。弓を射る、転じて、「おこる」意を表す。教育用漢字は省略形による、

とも(角川新字源)、

会意兼形声文字です(弓+癶+殳)。「弓」の象形と「上向きの両足」の象形と「手に木のつえを持つ」象形から「弓を引きはなつ」を意味する「発」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji526.htmlが、ほぼ趣旨は同じである。

「意」 漢字.gif

(「意」 https://kakijun.jp/page/1343200.htmlより)


「意」 金文・西周.png

(「意」 金文・西周 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%84%8Fより)

「意」(イ)は、

会意文字。音とは、口の中に物を含むさま。意は「音(含む)+心」で、心中に考えをめぐらし、おもいを胸中にふくんで外に出さないことをしめす、

とある(漢字源)。別に、

会意。心と、音(おと、ことば)とから成り、ことばを耳にして、気持ちを心で察する意を表す。ひいて、知・情のもとになる意識の意に用いる、

とも(角川新字源)、

会意文字です(音+心)。「刃物と口の象形に線を一本加え、弦や管楽器の音を示す文字」(「音」の意味)と「心臓の象形」から言葉(音)で表せない「こころ・おもい」を意味する「意」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji435.html

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:49| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください