2023年01月25日

三尊


西の方より、三尊(さんぞん)、その外廿五の菩薩たち、笙、篳篥(ひちりき)、管弦にて、光を放って来迎ありければ(諸国百物語)、

の、

三尊、

は、

さんそん、

と訓ませると、

3人の尊ぶべきもの、

つまり、

君と父と師、

の意となる(広辞苑・大言海)。天治字鏡(平安中期も漢和辞書)には、

三尊者、父、師、君也、

和名類聚抄(平安中期)には、

師、徐廣雑記云、人有三尊、非父不生、非師不學、非君不仕、故曰三尊也、

とある。

さんぞん、

と訓ませると、

佛家にて、中尊(ちゅうそん 中央に立つ尊像。左右に脇士を従え、まん中に立っている仏像)の左右の二挟侍(きょうじ 脇侍)との称、

で、

阿弥陀如来と観音、勢至の二菩薩(阿弥陀三尊)、
釈迦如来と文殊、普賢の二菩薩(釈迦三尊)、
薬師如来と日光天、月光天(薬師三尊)、

との如き、とある(大言海・広辞苑)。因みに、上記の、

二十五菩薩、

とは、

仏遣二十五菩薩、常守護行人(「往生要集(984~85)」)、

と、

阿彌陀仏を念じて極楽往生を願う者を守護し、その臨終の時には迎えに来るという二五の菩薩、

をいい、すなわち、

観音・勢至・薬王・薬上・普賢・法自在・師子吼(ししく)・陀羅尼・虚空蔵・徳蔵・宝蔵・山海慧(さんかいえ)・金蔵・金剛蔵・光明王・華厳王・衆宝王・日照王・月光王(がっこうおう)・三昧王(ざんまいおう)・定(じょう)自在王・大自在王・白象王・大威徳王・無辺身、

の菩薩を指す(精選版日本国語大辞典・デジタル大辞泉)。

三尊像(おもな中尊と脇侍の組合せ).jpg

(三尊像(おもな中尊と脇侍の組合せ) 日本大百科全書より)

釈迦三尊(しゃかさんぞん)、

は、

釈迦如来像を中尊とし、その左右に両脇侍(きょうじ)像を配した造像・安置形式、

を称するが、両脇侍として配される尊像の種類は一定ではなく、

文殊菩薩と普賢菩薩、
梵天と帝釈天、
薬王菩薩と薬上菩薩、
金剛手菩薩と蓮華手菩薩、

などの例があるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%88%E8%BF%A6%E4%B8%89%E5%B0%8Aとあるが、日本では左脇侍(向かって右)に騎獅の文殊菩薩、右脇侍(向かって左)に乗象の普賢菩薩を配する例が多い(仝上)。法隆寺金堂に安置されている釈迦三尊像(国宝)の脇侍は寺伝では、

薬王菩薩、
薬上菩薩、

と称しており、興福寺の中金堂の本尊釈迦如来の脇侍像(鎌倉時代、重要文化財)も、

薬王菩薩、
薬上菩薩、

と呼ばれている(仝上)とある。

釈迦三尊像(国宝、法隆寺金堂).jpg

(釈迦三尊像(法隆寺金堂) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%88%E8%BF%A6%E4%B8%89%E5%B0%8Aより)

方広寺の釈迦三尊像は、釈迦如來を中心に、

向かって右に文殊菩薩(左脇侍)、左に普賢菩薩(右脇侍)、

が並ぶhttp://www.houkouji.or.jp/shakasanzonzou.html

釈迦三尊像(方広寺).jpg

(釈迦三尊像(方広寺) http://www.houkouji.or.jp/shakasanzonzou.htmlより)

阿弥陀三尊(あみださんぞん)、

は、『無量寿経』『観無量寿経』をもとに、

阿弥陀如来を中尊とし、その左右に左脇侍の観音菩薩と、右脇侍の勢至菩薩を配する仏像安置形式、

で、観音菩薩は、

阿弥陀如来の「慈悲」をあらわす化身、

勢至菩薩は、

「智慧」をあらわす化身、

とされるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%BF%E5%BC%A5%E9%99%80%E4%B8%89%E5%B0%8Aとある。

木造阿弥陀如来及両脇侍像.jpg

(木造阿弥陀如来及両脇侍像(浄土寺)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%BF%E5%BC%A5%E9%99%80%E4%B8%89%E5%B0%8Aより)

薬師三尊(やくしさんぞん)は、

薬師如来を中尊とし、日光菩薩を左脇侍、月光菩薩(がっこうぼさつ)を右脇侍とする三尊形式、

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%96%AC%E5%B8%AB%E4%B8%89%E5%B0%8A、薬師寺の金堂本尊像は、日本における薬師三尊像の古例であるとともに、最高傑作の一つとされる(仝上)。

薬師三尊 薬師寺旧金堂 .jpg

(薬師三尊(薬師寺旧金堂) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%96%AC%E5%B8%AB%E4%B8%89%E5%B0%8Aより)

この他に、

左右に矜羯羅童子(こんがらどうじ)と制吒迦童子(せいたかどうじ)を配した

不動三尊(ふどうさんぞん)、

中尊に弥勒如来(弥勒菩薩が釈尊寂滅後5億7千6百万年のちに悟りを開いた姿)、右脇侍(向かって左)大妙相(だいみょうそう)菩薩、左脇侍(向かって右)法苑林(ほうおんりん)菩薩を配した、

弥勒三尊、

等々がある。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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