西の方より、三尊(さんぞん)、その外廿五の菩薩たち、笙、篳篥(ひちりき)、管弦にて、光を放って来迎ありければ(諸国百物語)、
の、
三尊、
は、
さんそん、
と訓ませると、
3人の尊ぶべきもの、
つまり、
君と父と師、
の意となる(広辞苑・大言海)。天治字鏡(平安中期も漢和辞書)には、
三尊者、父、師、君也、
和名類聚抄(平安中期)には、
師、徐廣雑記云、人有三尊、非父不生、非師不學、非君不仕、故曰三尊也、
とある。
さんぞん、
と訓ませると、
佛家にて、中尊(ちゅうそん 中央に立つ尊像。左右に脇士を従え、まん中に立っている仏像)の左右の二挟侍(きょうじ 脇侍)との称、
で、
阿弥陀如来と観音、勢至の二菩薩(阿弥陀三尊)、
釈迦如来と文殊、普賢の二菩薩(釈迦三尊)、
薬師如来と日光天、月光天(薬師三尊)、
との如き、とある(大言海・広辞苑)。因みに、上記の、
二十五菩薩、
とは、
仏遣二十五菩薩、常守護行人(「往生要集(984~85)」)、
と、
阿彌陀仏を念じて極楽往生を願う者を守護し、その臨終の時には迎えに来るという二五の菩薩、
をいい、すなわち、
観音・勢至・薬王・薬上・普賢・法自在・師子吼(ししく)・陀羅尼・虚空蔵・徳蔵・宝蔵・山海慧(さんかいえ)・金蔵・金剛蔵・光明王・華厳王・衆宝王・日照王・月光王(がっこうおう)・三昧王(ざんまいおう)・定(じょう)自在王・大自在王・白象王・大威徳王・無辺身、
の菩薩を指す(精選版日本国語大辞典・デジタル大辞泉)。
(三尊像(おもな中尊と脇侍の組合せ) 日本大百科全書より)
釈迦三尊(しゃかさんぞん)、
は、
釈迦如来像を中尊とし、その左右に両脇侍(きょうじ)像を配した造像・安置形式、
を称するが、両脇侍として配される尊像の種類は一定ではなく、
文殊菩薩と普賢菩薩、
梵天と帝釈天、
薬王菩薩と薬上菩薩、
金剛手菩薩と蓮華手菩薩、
などの例がある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%88%E8%BF%A6%E4%B8%89%E5%B0%8A)とあるが、日本では左脇侍(向かって右)に騎獅の文殊菩薩、右脇侍(向かって左)に乗象の普賢菩薩を配する例が多い(仝上)。法隆寺金堂に安置されている釈迦三尊像(国宝)の脇侍は寺伝では、
薬王菩薩、
薬上菩薩、
と称しており、興福寺の中金堂の本尊釈迦如来の脇侍像(鎌倉時代、重要文化財)も、
薬王菩薩、
薬上菩薩、
と呼ばれている(仝上)とある。
(釈迦三尊像(法隆寺金堂) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%88%E8%BF%A6%E4%B8%89%E5%B0%8Aより)
方広寺の釈迦三尊像は、釈迦如來を中心に、
向かって右に文殊菩薩(左脇侍)、左に普賢菩薩(右脇侍)、
が並ぶ(http://www.houkouji.or.jp/shakasanzonzou.html)。
(釈迦三尊像(方広寺) http://www.houkouji.or.jp/shakasanzonzou.htmlより)
阿弥陀三尊(あみださんぞん)、
は、『無量寿経』『観無量寿経』をもとに、
阿弥陀如来を中尊とし、その左右に左脇侍の観音菩薩と、右脇侍の勢至菩薩を配する仏像安置形式、
で、観音菩薩は、
阿弥陀如来の「慈悲」をあらわす化身、
勢至菩薩は、
「智慧」をあらわす化身、
とされる(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%BF%E5%BC%A5%E9%99%80%E4%B8%89%E5%B0%8A)とある。
(木造阿弥陀如来及両脇侍像(浄土寺)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%BF%E5%BC%A5%E9%99%80%E4%B8%89%E5%B0%8Aより)
薬師三尊(やくしさんぞん)は、
薬師如来を中尊とし、日光菩薩を左脇侍、月光菩薩(がっこうぼさつ)を右脇侍とする三尊形式、
で(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%96%AC%E5%B8%AB%E4%B8%89%E5%B0%8A)、薬師寺の金堂本尊像は、日本における薬師三尊像の古例であるとともに、最高傑作の一つとされる(仝上)。
(薬師三尊(薬師寺旧金堂) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%96%AC%E5%B8%AB%E4%B8%89%E5%B0%8Aより)
この他に、
左右に矜羯羅童子(こんがらどうじ)と制吒迦童子(せいたかどうじ)を配した
不動三尊(ふどうさんぞん)、
中尊に弥勒如来(弥勒菩薩が釈尊寂滅後5億7千6百万年のちに悟りを開いた姿)、右脇侍(向かって左)大妙相(だいみょうそう)菩薩、左脇侍(向かって右)法苑林(ほうおんりん)菩薩を配した、
弥勒三尊、
等々がある。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95