2023年02月08日

みそみそ


数の蛇ども、集(たか)りかかって噛み殺し、みそみそとして、山のかたへ皆帰りて、別の事もなかりしと也(諸国百物語)、

の、

みそみそとして、

は、

落胆して、すごすごと、

とある(高田衛編・校注『江戸怪談集』)。

みそ.jpg


「みそみそ」は、

味噌のような状態になることによるか、

とあり(広辞苑)、

破れくずれたさま(広辞苑)、
細かくくずれるさま、ぐしゃぐしゃ(大辞泉・岩波古語辞典)、
破れ崩れたる状に云ふ語、メチャメチャ(大言海)、

等々と、

物が細かくくずれるさまを表わす語、

で(精選版日本国語大辞典)、上記引用のように、

「と」を伴って用いる、

こともある(仝上)。そうした擬態語から、

物尽きたりと云ふ事もなくて、みそみそとして、さて止みにけり(「愚管抄(1220)」)、

と、

ひっそり、ひそひそ(岩波古語辞典)、
勢いなどが弱まって静かになるさま、ひっそり(大辞泉)、

と、

物事の勢いなどが弱まって静かになるさまを表わす語、
弱弱しくくず折れるようなさまを表わす語、

との状態表現へシフトし、それをメタファにすれば、上記の引用のように、

すごすご、

というように、価値表現へとシフトしていくことはあり得ると思える。

なお、

みそみそ、

に、

味噌味噌、

と当て、「大上臈御名之事」(16C前)に、

あへもの、みそみそ、

とあり(精選版日本国語大辞典)、

和物(あえもの)をいう女房詞、

とある。これなら、

物が細かくくずれるさまを表わす語、

というのが、

和える、

つまり、

混ぜ合わせた状態、

から来た擬態語というのは意味が通じる気がする。

「みそみそ」が、

味噌、

から来たというが、

味噌」で触れたように、「味噌」自体が、

肉の肉醤、魚の魚醤、果実や草、海草の草醤、穀物の穀醤、

等々の、

醤(ひしお)、

のペースト状にしろ、奈良時代の文献にある、

未醤(みさう・みしょう)、

という、まだ豆の粒が残っている醤(ひしお)にしろ、

大豆を蒸してつき砕き、麹(こうじ)と塩を加えて発酵させた、

ペースト状にしろ、

みそみそ、

の、

物が細かくくずれるさまを表わす語、

という意味とはちょっと乖離があるような気がするのだが。

参考文献;
大野晋・佐竹昭広・前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 05:05| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください