2023年03月05日

脇士(きょうじ)


本堂の東側の脇士(きょうじ)の観音像の首が、理由もないのに切れて落ちた(霊異記)、

の、

脇士、

は、

仏の左右に侍る菩薩を脇士という、

とある(景戒(原田敏明・高橋貢訳)『日本霊異記』)。「三尊」で触れたように、

中央に立つ尊像を、

中尊(ちゅうそん)、

左右に従っているのを、

脇士、

というが、

挟み侍る、

意で(大言海)

夾、挟、俠、相通ず、

とある(仝上)。つまり、

仏の左右に侍して衆生(しゅじょう)教化を助けるもの、

の意(広辞苑)で、

脇侍、
夾侍、
挟侍、

とも当て、

脇士、
脇侍、

を、

わきじ、

とも訓ませ(大辞泉)、

脇立(わきだち)、

ともいう(広辞苑)。「脇侍」の、訓読みが、

わきだち、

で、

脇士、

は、

脇侍大士の意、

で、菩薩を、

大士、

という(仝上)とある。確かに、三尊は、

阿弥陀三尊は、阿弥陀如来と観音、勢至の二菩薩、
釈迦三尊は、釈迦如来と文殊、普賢の二菩薩(梵天と帝釈天、薬王菩薩と薬上菩薩、金剛手菩薩と蓮華手菩薩の例も)、
薬師三尊は、薬師如来と日光の二菩薩、
弥勒三尊は、弥勒如来と法苑林菩薩、大妙相菩薩の二菩薩、
盧舎那三尊は、盧舎那仏と如意輪観音、虚空蔵菩薩の二菩薩(薬師如来と千手観音菩薩)、

など脇士は菩薩が主流だが、菩薩とは限らず、

不動三尊は、中尊は不動明王と矜羯羅童子(こんがらどうじ)、制吒迦童子(せいたかどうじ)、
観音菩薩三尊は、観音菩薩(十一面観音、千手観音など)と毘沙門天、不動明王、

という場合もあるので、

中尊をはさんで左右に侍する菩薩または比丘などのこと(日本国語大辞典)、

というのが正確かもしれない。

釈迦三尊.jpg

(釈迦三尊像(法隆寺金堂 寺伝では脇侍は薬王菩薩・薬上菩薩と称している) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%88%E8%BF%A6%E4%B8%89%E5%B0%8Aより)

「脇士」については、観無量寿経では、

阿弥陀如来ではその左辺に観音菩薩、右辺に勢至菩薩を配すること、

陀羅尼集経では、

釈迦如来では目連は左に侍し、阿難は右に在りと説かれ、釈迦画像ではその下の左辺に文殊騎獅像、右辺に普賢騎象像を画作せよ、

と説いている(世界大百科事典)。ただ、たとえば、阿弥陀三尊は、

阿弥陀如来と観音、勢至の二菩薩、

だが、脇侍を、観音菩薩を文殊菩薩に置き換えることはない。

阿弥陀如来、観音菩薩、勢至菩薩は、死後無事に浄土へたどり着けるよう導く「あの世担当」であるのに対し、文殊菩薩は仏道に沿った生き方をするための智慧を授ける「この世担当」だから、

と、それぞれが持っている仏教的な役割から、置き換え不可の者もあるhttps://goto-man.com/faq/post-10487/

「脇士」の多くは、

二尊で、中尊と合わせて、

三尊像、

だが、仏像には、

四尊、
八尊、
十二尊、

それ以上数十尊に及ぶこともある(世界大百科事典)。四尊像というと、

多聞天、持国天、増長天、広目天、

の四天王像があるが、牛伏寺(松本市)四尊像は、鎌倉時代のもので、4体の姿を田の字型に配置し、

向かって右上が孔雀明王像、その下が愛染明王像、その左が不動明王像、その上が尊勝仏頂像、

とあるhttps://www.city.matsumoto.nagano.jp/soshiki/134/3823.html。五尊像は、

大日如来、阿閦如来(あしゅくにょらい)、宝生如来(ほうしょうにょらい)、阿弥陀如来(あみだにょらい)、不空成就如来(ふくうじょうじゅにょらい)、

の五智如来、

不動明王、降三世明王(こうざんぜみょうおう)、軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)、大威徳明王(だいいとくみょうおう)、金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)、

の五大明王がありhttps://goto-man.com/faq/post-10487/

獅子に乗った文殊菩薩の周囲に優填王、善財童子、大聖老人(最勝老人)、仏陀波利三蔵(中国語: 佛陀波利)の4侍者、

の文殊菩薩五尊、

があるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%87%E4%BE%8Dが、五尊懸仏(奈良国立博物館)では、

中尊が施無畏(せむい)・与願(よがん)の印を示す釈迦如来(しゃかにょらい)、以下右上から時計回りに十一面観音(じゅういちめんかんのん)、定印(じょういん)の阿弥陀如来(あみだにょらい)、僧形(そうぎょう)の地蔵菩薩(じぞうぼさつ)、胸前に経巻を持する文殊菩薩(もんじゅぼさつ)、

という組み合わせであるhttps://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/149157)。

八尊像は、

天、竜、夜叉(やしゃ)、乾闥婆(けんだつば)、阿修羅(あしゅら)、迦楼羅(かるら)、緊那羅(きんなら)、摩睺羅迦(まごらが)、

の八部衆(釈迦如来の眷属)がある(仝上)。十二尊像では、

宮毘羅(くびら)、伐折羅(ばさら)、迷企羅(めきら)、安底羅(あんてら)、安底羅(あんにら)、珊底羅(さんてら)、因達(陀)羅(いんだら)、波夷羅(はいら)、摩虎羅(まこら)、真達羅(しんだら)、招杜羅(しゃとら)、毘羯羅(びから)、

の十二神将(薬師如来の眷属)がある(仝上)。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:38| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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