2023年04月01日

味煎


何ぞ湯涌すぞと見れば、此の水と見ゆるは味煎(みせん)なりけり(今昔物語)、

とある、

味煎、

は、

甘味料、あまづら(植物)から取った汁をにつめる、

と注記がある(佐藤謙三校注『今昔物語集』)。

未煎、
蜜煎、

とも当て(大言海)、字鏡(平安後期頃)に、

未煎、ミセン(甘葛)、

とあり、

あまづらせん(甘葛煎)に同じ、

とあり(仝上)、

あてなるもの 薄色に白襲(しらがさね)の汗衫(かざみ)。かりのこ。削り氷にあまづら入れて、新しき鋺(かなまり)に入れたる。水晶の数珠。藤の花。梅の花に雪の降りかかりたる。いみじう美しき児(ちご)の、いちごなど食ひたる(枕草子)、

と、

あまづら、

とも言った(仝上)。

アマヅラ、

の、

ツラ、

は、

蔓なり、

とある。「つら」は、

連(つら)の義、

で、

今、つる(蔓)と云ふ、

とあり(仝上)、

甘蔓(あまづる)の意、

とある(岩波古語辞典)。

アマヅル.jpg


「甘葛煎」は、「甘茶」で触れたように、

アマヅル、
アマヅラ、

という、ブドウ科のつる性の植物から、

春若芽の出る前にそのツルを採って煎じ詰めて用いた(たべもの語源辞典)。

甘茶」には何種類かあるが、

甘葛煎、

も、

甘茶、

といった(大言海・たべもの語源辞典)。

「味煎」は、中世後期に砂糖の輸入がはじまり、近世になってその国内生産が増大するとともに、位置をゆずって消滅した(世界大百科事典)。

「甘葛」は、

アマチャヅル、

のこととする説があるが、「甘茶」で触れたように、

アマチャヅル、

は、

ウリ科、

の多年草で、これから、

甘茶、

をつくり、

ツルアマチャ、
アマカヅラ、

というが、別物である。

『甘葛考』(藤原清香).jpg

(甘葛 (『甘葛考』(藤原清香) 清香が甘葛の原料と考えた野生ブドウのスケッチ https://outreach.bluebacks.jp/project/home/20

また、今日、

アマヅル、

という、

男葡萄、

の名のある、

ブドウ科ブドウ属、学名Vitis saccharifera、

https://matsue-hana.com/hana/otokobudou.html、「アマヅラ」とも呼ばれた古くからある「アマヅル」とは別のようだが、

一般的にはブドウ科のツル性植物(ツタ(蔦)など)のことを指しているといわれる。一方で、アマチャヅルのことを指すという説もあり、どの植物かは明かではない、

とありhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9E%E3%83%85%E3%83%A9、どの植物を指すかはっきりしない(仝上)という。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:03| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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