2023年04月13日
覓(ま)ぐ
速須佐之男命(はやすさのをのみこと)、宮つくるべき所を出雲の国にまぎ給ひき(古事記)、
やしま國、妻麻岐(まぎ)かねて、遠遠し、越の國に(仝上)、
とある、
覓ぐ、
は、
求ぐ、
とも当て、
追いもとめる、
さがしもとめる、
意である(広辞苑)。
まぐ、
の語源については、
目(マ)の活用、香(か)ぐ、輪ぐと同趣(大言海)、
目で尋ねる意で、目來の義(日本語源=賀茂百樹)、
マ(枉)げて求める意(国語の語根とその分類=大島正健)、
モチ(持)タクの義(名言通)、
といった諸説があるが、意味から見て、
目(マ)の活用、
というのが妥当なのだろう。この、
覓ぐ、
と似た意味で、
娶(マイデ)其國婦而所生也(応神紀)、
と、
婚、
と当てる、
まぐ、
まく、
がある(大言海)。色葉字類抄(1177~81)に、
婚、メマグ、
類聚名義抄(11~12世紀)に、
娉、婚、メマグ、マグ、
字鏡集(鎌倉時代)に、
婚、娵、嫁、マグ、
とある。
女に遭合(あ)う、
婚す、
の意で、
くなぐ(婚ぐ)、
くなきがひす(婚合 クナギ(婚)アフ(合)の約)、
つままぎす、
つまどひす、
よばひす、
よばひ、
と同義(大言海)とあるので、
まぐはひす(目合ふ)、
のように、
目と目を見合わせて心を通じる、
という意もあるが、この場合も含め、
吾(あれ)、汝(いまし)にまぐはひせむと欲(おも)ふ(古事記)、
と、
性交、
の意である。この「まぐ」は、
メダク(女抱く)が、メグ[m(ed)a]の縮約で、マク(媾く)・マグ(媾ぐ)になった。……結婚・交接のことをマグアヒ(媾ぐ合ひ)という。〈この天の御柱を行きめぐりてみと(クミドの略。 夫婦の寝所)のマグアヒせむ〉(古事記)は結婚のことで、……〈さまざまに語らひ契りてマグアヒをなさんとすれば〉(古今著聞集)は男女の交接のことである、
とある(日本語の語源)ように、
覓ぐ、
と
婚ぐ、
は由来を異にするようである。
「覓」(漢音ベキ、呉音ミャク)は、
会意兼形声。覓の原字は、「目+音符脈の右側の字(細い)」。目を補足して、ものを見定めようとすること。覓は「見+爪」からなる俗字、
とあり(漢字源)、
遂教方士殷勤覓(ツヒニ方士ヲシテ殷勤ニ覓メシム)(白居易)、
と、
もとめる、
さがしもとめる、
意である。「覓ぐ」も、「目」と関わらせるのが妥当な所以である。「まぐ」に当てる、
覓、
と、
求、
の違いは、漢字では、
求は、乞也、索也と註す、なき物を、有るやうにほしがり求め、又はさがし求むる義にて、意広し、求友・求遺書の類、
覓は、さがし求むるなり、捜索の義、是猶欲登山者、渉舟航而覓路(晉書)、
とある(字源)。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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