2023年04月19日

たつき


食物より始めて馬鍬、辛鋤(からすき)、鎌、鍬、斧、たつきなど云ふ物に至るまで、家の具を船に取り入れて(今昔物語)、

にある、

たつき、

は、

大きい刃の広い斧、

とある(佐藤謙三校注『今昔物語集』)。因みに、「辛鋤」は、

牛にかけて耕すのに使う、

とあり(仝上)、「犂牛(りぎゅう)」で触れた、

唐鋤、

と当てる、

柄が曲がっていて刃が広く、日本ではウシ、ウマに引かせて耕す犂(すき)、

をいい、

牛鍬(うしぐわ)、

ともいい(精選版日本国語大辞典)、古墳時代後期に、中国から朝鮮半島を経て由来したものである。

たつき、

は、

鐇、

と当て、

たつぎ、

ともいう、

木を伐採するのに用いる刃はばの広い大きな手斧(おの)、

で(デジタル大辞泉)、

木材を竪に切るもの(横に切るを、ヨキという)、

とある(大言海)。

たつげ、
はびろ、

ともいう(大言海)。和名類聚抄(平安中期)に、

鐇、多都岐、廣刃斧也、

とある。

斧.jpg

(斧 デジタル大辞泉より)

「よき」は、

木こりは恐ろしや、荒けき姿に鎌を持ち、斧(よき)を提げ(梁塵秘抄)、

と、

斧、

と当て、

小形のおの、

つまり、

小斧(こおの)、

(岩波古語辞典)とある。和名類聚抄(平安中期)に、

斧、與岐、

字鏡(平安後期頃)に、

鉿、鋌也、與支、

とある。「たつき」は、

立削(タツゲ)の転にて、竪に我が方へ削る意かと云ふ、

とあり(大言海)、「よき」は、

横切(よこきり)の約、鐇(タツギ)に対す、

とある(仝上)。

鉞かつぎ熊に跨る金太郎.jpg

(鉞かつぎ熊に跨る金太郎(鳥居清長/清長) https://ch.kanagawa-museum.jp/dm/ukiyoe/kanagawa/meisyo/d_meisyo17.html

「たつき」の画像は、あまり見当たらないが、童謡の、

まさかりかついだ金太郎、熊に跨りお馬の稽古、

の、

まさかり、

は、

はびろ、

とも呼ばれたhttps://dic.pixiv.net/a/%E9%89%9Eとあり、ふるくは、

鐇(たつき)、

と呼び、兵器や刑具に用いられたhttps://www.hand-made-home.com/daikudougu/pageindices/index44.html#page=45、とある。なお、出土品から見たむ斧の分類は、https://www.hand-made-home.com/daikudougu/pageindices/index44.html#page=45に詳しい。それによると、

鉞型、

は、

肩を持つ刃幅広い斧で、伐採や木材を斫はつる場合などに用いる、

とあり、

与岐型、

は、

頭部より刃の方がやや幅広く、袋部の下から撫肩で広がっている。刃は蛤刃のように外に張り出した円弧を描いている。大型、中型、小型があり、伐木、薪割など、さまざまな用途に用いる万能的な斧、

とある。

なお、「方便」とあてる「たつき」については触れた。

「鐇」 漢字.gif

(「鐇」 https://kakijun.jp/page/E85F200.htmlより)

「鐇」(漢音ハン、呉音ボン)は、

木を削る、

ちょうな、

の意とある(漢字源)。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:04| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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